『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

新千里東町近隣センターの立ち飲みコーナー@いなごや酒店

千里ニュータウン新千里東町の近隣センターではコミュニティ・カフェ「ひがしまち街角広場」が開かれています。オープンは2001年9月30日。最初の半年間は豊中市の社会実験として補助を受けていましたが、社会実験終了後は住民の自主運営として、補助を受けず、住民ボランティアの手により運営が続けられてきました。空き店舗を活用したコミュニティ・カフェのパイオニア的存在だと言える場所です。

2017年10月、「ひがしまち街角広場」のすぐ隣の酒屋さん(いなごや酒店)に立ち飲みコーナーがオープンしました。立ち飲みコーナーのマスターはいなごや酒店の親戚の方で、子どもの頃新千里東町に住んでいたとのこと。
立ち飲みコーナーは日本酒のフォロワーを増やしたいというマスターの思い出開かれた場所。棚にはマスターが個人的に知っているところから仕入れた数々のお酒が並んでいます。
食事は販売されていませんが、酒屋(いなごや酒店)で購入することができます。持ち込みも自由です。

いなごや酒店の立ち飲みコーナー

  • 営業時間:18時00分〜22時00分(L.O.:21時30分)
  • 定休日:日曜・月曜・第2金曜
  • 場所:豊中市新千里東町の近隣センター
  • お酒はグラス1杯300円。アテの持ち込み自由

近隣住区論に基づいて計画された千里ニュータウンにおいて、近隣センターはそれぞれの住区の核になる場所です。その中で、新千里東町の近隣センターは、住区内を巡る歩行者専用道路に面して立地しているという特徴があります。近隣センター前の歩行者専用道路は子どもたちの登下校のルートになるなど、住民にとってメインの動線。
この近隣センターで、まち開きの時(1966年)から営業され続けてきたのがいなごや酒店です。ディスカウントショップや通販が拡大する中で、地域の酒屋を取り巻く状況は厳しく、閉店する酒屋も多いと聞きます。そうした中、いなごや酒店は貴重な存在。

近隣センター前の歩行者専用道路

立ち飲みコーナーのマスターは、「いなごや酒店は子どもたちを見守ってきた」、「子どもたちはみな「いなごやのおばちゃん」を知っている」と話されていました。そして、「酒屋は町の顔役」だと。
今は立ち飲みコーナーだけだが、子どもたちのためのコーナー(DJブース、動画編集を学ぶなど)も開きたいとも話されていました。

いなごや酒店の立ち飲みコーナーは、『Meets Regional(特集:酒屋の酒場。)』(2018年10月号)に取り上げられています。ここでもマスターは「新住民と地元民の出会いの場を作る。それも、街の顔役である酒屋の仕事だと思ってます」と話されています。

こうした話を伺うと、地域のお店、あるいは、お店が集まった近隣センターは単に物を売り買いするだけの機能を担うにとどまらず、人々のコミュニケーション、見守り、子どもの教育など豊かな意味をもつ場所であることに気づかされます。
現在、新千里東町の近隣センターは移転・建替が進められていますが、移転・建替後の近隣センターも、こうした豊かな意味をもつ場所になればと思います。

ディスカバー千里は、2019年1月から「街角広場スキマチャレンジ」という新たなプロジェクトを始めました。「ひがしまち街角広場」の空き時間(スキマ)を使って、新千里東町に「あったらいい」、「やってみたい」を試すプロジェクト。「街角広場スキマチャレンジ」では、いなごや酒店の立ち飲みコーナーとも連携予定です。


参考:『Meets Regional(特集:酒屋の酒場。)』No.364 2018年10月号