『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

ひがしまち街角広場:ふらっと立ち寄れる地域の場所

2019年6月1日(土)、千里ニュータウン新千里東町の「ひがしまち街角広場」を訪問しました。近隣センターの空き店舗を活用して運営されているコミュニティ・カフェです。

先日ご紹介した大阪府ふれあいリビング整備事業により開かれた「下新庄さくら園」は19年にわたって住民ボランティアにより運営され続けてきた場所ですが、「ひがしまち街角広場」も2001年9月30日のオープン以来、17年半にわたり住民ボランティアにより運営され続けてきました。

「ひがしまち街角広場」は豊中市の助成を受けて空き店舗の整備(リノベーション)が行われました。そして、最初の半年間は豊中市の社会実験として豊中市の助成を受けて運営されていました。その後は補助を一切受けず、イベントもほとんど行われていません。食事の販売も行われておらず、提供されているのはコーヒー、紅茶、ジュースなどの飲み物だけ。しかしそれでも訪れる人が絶えることはなく、ふらっと立ち寄れる場所であり続けています。

新千里東町は集合住宅の建替えに伴い、多くの若い世代が転入してきました。転入してきた若い世代からは「ひがしまち街角広場」のことが認知されていない、常連でないと入りにくいなどの課題があるという声も耳にしますが、それでも17年半の運営が継続されてきたことは変わらない事実です。

この日も、表のテーブルではテニス帰りの男性3人がコーヒーを飲んでいたり、小学生の女の子2人が水を飲みにきたりと、来訪者は高齢の女性ばかりではありません。

表のテーブルに座っていた男性は、帰り際、使った食器をカウンターに運んでいる光景を見かけました。店員とお客さんが完全に分かれている通常のカフェと異なり、「ひがしまち街角広場」では来訪者もできる範囲で運営に協力しようとしていることがこの光景に現れているように思います。

水を飲みに来た女の子に対して、当番の女性は「小さい時から来てたもんな」と声かけ。子どもたちの成長を地域の大人たちが見守り続けていることが現れている言葉だと思います。

「ひがしまち街角広場」は近隣センターの建替えで空き店舗がなくなるという皮肉な事態により、あと2年ほどで運営を終了することが決まっています。しかしそれでも「ひがしまち街角広場」がこれまで積み重ねてきたものの価値がなくなるわけではありません。

「ひがしまち街角広場」の価値を共有すること、「ひがしまち街角広場」から多くを学ぶことが、今、大切な作業だと考えています。