2020年8月19日（水）、千里ニュータウン新千里東町の「ひがしまち街角広場」を訪問しました。
オープンは2001年9月30日。最初の半年間は豊中市の社会実験として補助を受けて運営されていました。せっかく開いた場所を閉鎖するのはもったいないということで、半年間の社会実験終了後は「自主運営」として、住民ボランティアによって運営され続けてきました。「自主運営」が始まってから補助金は一切受けておらず、コーヒー、紅茶などの飲物の100円の「お気持ち料」と、夕方以降・定休日の会場使用料によって、家賃、水道光熱費、食材費など全ての費用をまかなっています。
また、プログラム（教室や体操、行事など）を行っておらず、「みんなが何となくふらっと集まって喋れる、ゆっくり過ごせる場所」（初代代表の言葉）として19年間の運営が続けられてきました。
「ひがしまち街角広場」は、新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の感染防止対策として、市内の公共施設などとあわせて3月2日から臨時休業としていましたが、緊急事態宣言の解除を受け、6月1日から運営を再開しました。
運営再開後も感染防止対策として、密を避けるため室内の座席数を減らし、他の人に席を譲ったり、なるべく屋外（アーケード下）のテーブルで過ごすことが依頼されています。また、スタッフはマスクを着用する、入口に消毒液を設置する、使い捨ての紙コップを利用する、扉を開けて換気を良くするなどの対応もされています。
8月19日も30人（※1日の「お気持ち料」の合計が3,000円から計算）の来訪があったということで、運営が再開された後も人が訪れ続けていることがわかります*1）。
ここでは、8月19日（水）に訪問した時に見かけた光景から、「ひがしまち街角広場」での来訪者とスタッフの過ごし方の特徴をみたいと思います。
- 1）ただし、近隣センターの再開発に伴い、早ければ2021年春頃、遅くとも2022年夏頃には運営を終了することが決まっています。
来訪者とスタッフの過ごし方の特徴
写真は8月19日に訪問した時に見かけた光景。6人の女性が並んで座っていますが、エプロンをかけている3人はスタッフ。このように、「ひがしまち街角広場」はスタッフと来訪者が、店員とお客さんというように明確に分かれていないのが特徴。スタッフも来訪者も、同じ地域の住民ということです。
1時間半ほど滞在している間に、10人の来訪者の出入りがありました。この日見かけた光景から、スタッフと来訪者の特徴を整理すると次のようになります。
- 1人でやって来る人もいれば、連れ立ってやって来る人もいる。
- 1人でやって来た人も、ずっと1人だけで過ごすのではなく、他の来訪者やスタッフと話をする時間もある。
- 他の曜日にスタッフを担当している人も、来訪者としてやって来ている。
- スタッフも来訪者の隣に座って話をする。
- 15時55分に入ってきた人がいるように、運営時間の終了間際にやって来る人もいる。
- 運営が終了する16時00分になっても、まだテーブルに座って話をしている人がいる。スタッフも、無理に帰ることを急かすわけではない。
- 会話が行われる場合、隣に座っている人と話す人、話をするためテーブルを移動する人、テーブル越しに会話する人など、会話のグループは頻繁に入れ替わる。全員が同じ会話に参加する時間帯もある。
これらのことから、「ひがしまち街角広場」は通常のカフェとは違うことがわかると思います。また、プログラムのない場所における過ごし方の特徴という観点からも捉えることができると思います。
2020年6月の運営再開後、感染防止として密にならないよう座席数が減らされています。これにより、以前は中央に置かれていた2つの丸いテーブルが撤去されています。以前は四角いテーブルに向き合うように椅子が置かれていましたが、運営再開後は全ての椅子が横に一列になるように（※上の写真のように）並べ替えられました。
感染防止のためのレイアウト変更により、みなが壁を背にして座ることになりました。テーブル越しの会話は以前から見られましたが、感染防止のためのレイアウト変更によって増えた印象を受けます。
この日滞在していた時に出入りのあった10人の来訪者と、3人のスタッフは全員が女性で、そのほとんどが高齢の世代。共通点があるため会話がしやすく、そのことが、主客の関係を緩やかにしたり、別々にやって来た人同士が会話をしたり、テーブル越しの会話が生まれたりすることにつながっているように思います。
ただし、「ひがしまち街角広場」では必ず会話に参加しなければならないわけではありません。実際、この日筆者は1人で資料を読んで過ごしている時間帯がありましたが、その時は放っておいてもらえる。こうした緩やかさも、プログラムのない「ひがしまち街角広場」の魅力だと感じます。
