『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

ふれあいリビング・下新庄さくら園:19年にわたって住民ボランティアにより運営され続けているコミュニティ・カフェ

2019年5月31日(金)、大阪市東淀川区にある「下新庄さくら園」というコミュニティ・カフェを訪問しました。大学院の頃、調査などでお世話になってきた場所です。

「下新庄さくら園」は大阪府の府営住宅における「ふれあいリビング」整備事業の第一号として2000年5月15日にオープン。コミュニティ・カフェのパイオニア的な場所の1つです。

「ふれあいリビング」とは、あらかじめ予定を立て鍵を借りてから利用する府営住宅の集会所と違って、気軽に訪れることのできる「協働生活の場」。「下新庄さくら園」は、集会所と別に新築された場所で運営されています。
その後、「ふれあいリビング」は、府営住宅の集会所を改修してもうけられるようになり、現在では府営住宅の建替えの際には「ふれあいリビング」のようなスペースを最初から設置した「ふれあい型」の集会所が設置されるようになりました(*「ふれあいリビング」についてはこちらをご覧ください)。

このような経緯で開かれることになった場所ですが、「下新庄さくら園」では府営住宅の住民だけの場所にするのではなく、府営住宅を含めた「地域の財産」にすることが考えられ、府営住宅の敷地の端(道路沿い)に建設されるという配慮もなされています。

以前の府営下新庄鉄筋住宅は中層5階建ての10棟からなる団地でしたが、高層の2棟への建替えも完了。管轄も大阪府から大阪市へと移され、現在は市営下新庄4丁目住宅となっています。

住民ボランティアによる運営では継続が難しいと指摘されることもありますが、「下新庄さくら園」はオープンから19年にわたり、住民ボランティアにより運営され続けています。初代代表の方は既にお亡くなりになられ、現在の代表は2代目。代表の方に話を伺うと、最近の若い世代は共働きということもあり、運営を担う人は高齢の世代になってしまう。運営は大変なので運営時間を「9時〜16時」から「10時半〜16時」に短縮したとのことですが、それでも週に5日間の運営は継続されています。

「下新庄さくら園」のテーブルにはいつも綺麗な花がいけられていました。この日訪れた時もこれは変わりなく、トケイソウ、ビワの実などがいけられていました。

代表の方の話では、来訪者は以前よりも減ったとのことですが、この日、1時間ほど滞在していた間にも男性3人、女性3人の出入りがあり、飲み物を飲みながら話をされているのを見かけました。

来月末のG20大阪サミットの期間中、ゴミ収集の日時が変更になるとのこと。市から収集日時の変更を知らせる回覧板が回ってきたが、回覧板の書き方がわかりにくく、収集日時を間違える人がたくさん出てくるだろう。自治会の班長に集まってもらって、収集日時の変更を徹底した方がいい。当番の方、来訪者がこのような相談をされていたのが印象に残っています。

コミュニティ・カフェ、あるいは、居場所にはこのように地域のちょっとした課題について意見交換したり、解決したりする場所でもあることを改めて気づかされました。
近年、コミュニティ・カフェをモデルにした「通いの場」が介護予防、認知症予防の側面から注目されています。もちろん、介護予防、認知症予防が重要なことは言うまでもありません。けれども、「通いの場」のモデルとされたコミュニティ・カフェには、介護予防、認知症予防に限定されないもっと大きな可能性を持っていることを見落としてはなりません。