アメリカ東海岸のメリーランド州では、2020年5月15日の17時から、外出禁止令(自宅待機命令:Stay-at-Home Order)が解除され、自宅待機に関する勧告(Safer-at-Home Public Health Advisory)に移行しました。2020年3月30日から1ヶ月半で外出禁止令(自宅待機命令)が解除されたことになります。これにより洋服屋や靴屋などの小売店、散髪屋と美容院のパーソナルサービス、製造業などのビジネスが再開されることとなりました。
これに伴い、メリーランド州は、ビジネス再開にあたっての新型コロナウイルス感染症の感染防止のためのベストプラクティス(最も効率の良い方法)を公開しています。
「州がビジネスを再開するにあたり、事業主には人々を第一に(people first)することを考え続けることが強く求められます。このことは、労働者と顧客の安全を確保するためのベストプラクティスを遵守することを意味します。メリーランドのビジネス・コミュニティは、我々の共同の取り組みを通じて、市民を守り、新型コロナウイルス感染症のさらなる蔓延を防ぐ上で重要な役割を担います。」
※メリーランド州「Back to Business」のページの翻訳。
ここではメリーランド州のベストプラクティスの資料から、ビジネスの再開においては感染防止のためのどのような取り組みが求められているかを見ていきたいと思います*1)。
- 1)以下はメリーランド州「Back to Business」のページに掲載されている「ビジネス再開のためのベストプラクティス」の資料のうち、「一般的なビジネス」、「小売店」、「パーソナルサービス」、「製造業」の資料の翻訳である。資料の公開日時はいずれも2020年5月13日。なお、このページには「ゴルフ」、「ヨット停泊場」の資料も掲載されている。
目次
一般的なビジネス
雇用主のために
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)やOSHA(アメリカ労働安全衛生局)のガイダンスに従い、再開や営業計画を準備する。
- 物理的な施設を準備する:入居していない建物は、冷暖房空調設備(HVAC)システムを確認し、給水システムを洗浄する。
- 新型コロナウイルス感染症の方針を、スタッフや来訪者への掲示を含めて、全ての人に明確に伝える。
- 訪問者と従業員の間隔と通行を調整し、可能な限り6フィートの間隔を維持し、混雑を防ぐ。
- 勤務開始時に、従業員の新型コロナウイルス感染症の症状を検査する。
- 重症化するリスクの高い従業員に注意し、リスクの低いエリアへの移動を検討する。
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のガイダンスに従い、施設を清掃、消毒する。
- 病欠による休暇の方針が柔軟で、州および連邦の法律に準拠していることを確認する。
従業員のために
- 病気になったら、家にいるか、医師の診察を受ける。
- 他の人から6フィート離れる(ソーシャル・ディスタンシング)
- 病気の人との濃厚接触(close contact)を避ける
- 咳やくしゃみをする時は覆うか、ティッシュを使う。
- 目、鼻、口には触れないようにする。
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のガイダンスに従い、頻繁に触れる場所を清掃、消毒する。
- 手を頻繁に石鹸と水で少なくとも20秒以上洗うか、ハンドサニタイザー(手指消毒剤)を利用する。
来訪者のために
- 体調が悪い場合は、やむを得ない場合を除いて訪問しない。
- 常にフェイスカバーを着用する(シャツを着ていない人、靴を履いていない人、フェイスカバーを着用していない人はサービスを受けることができない:no shirt, no shoes, no face covering, no service)
- 咳やくしゃみをする時は覆うか、ティッシュを使う。
- 手を頻繁に石鹸と水で少なくとも20秒以上洗うか、ハンドサニタイザー(手指消毒剤)を利用する。
- 可能な限り、他の人から6フィート離れる(ソーシャル・ディスタンシング)
- 混雑しないようにする。
小売店
小売店のために
- よく触る場所を確認し、くしゃみガードなどのバリアを通して顧客と従業員の相互作用を排除または最小限にするための手順(protocol)を計画する。
- 顧客とスタッフの販売慣行を評価し、「頻繁に接触する」(high-touch)可能性のある観光と機会を特定し、新型コロナウイルス感染症の感染を減少、防止する。
- フロアプランを評価し、混雑するポイントを緩和し、ソーシャル・ディスタンシングを維持する。床に方向を示すマーキングを行い、顧客の動線計画を作成する。
- 顧客と従業員が最も少ない時に配送を手配することで、ベンダーが安全に商品を搬入するための計画を立てる。
- 機会、空調、水道を含む設備に損傷や、欠損による問題がないか検査する。
- ソーシャル・ディスタンシング、フェイスカバー、その他の手順(protocol)に異議を申し立てる顧客への適切な対応ついて、従業員をトレーニングする。
- 行政命令や他の地方自治体のガイダンスにより、店舗の収容人数が制限される場合がある。
従業員の快適さのために
- 従業員は、手の衛生と洗浄の手順(protocol)など、現在の新型コロナウイルス感染症の健康と職場のガイドラインについてトレーニングを受け、理解する必要がある。
- 職場への復帰に関して、従業員に柔軟性を与える。
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)またはMDH(Maryland Department of Health:メリーランド州保健局)推奨の健康に関する質問(health questions)を含む労働者の日常的な検査プロセスを実施し、体温測定を検討する。
- 病気の労働者に、新型コロナウイルス感染症の感染が疑われる、または感染が確認された場合の自宅隔離(home isolation)に関するCDC(アメリカ疾病予防管理センター)と州のガイドラインに従うよう指示する。
- 従業員と顧客は該当する場合、または、必要とされる場合は引き続きフェイスカバーを着用する。
ソーシャル・ディスタンシングのために
- 6フィートごとのマーキングのシステムを確立し、推奨されるソーシャル・ディスタンシングを視覚的に示す。
- 可能であれば、脆弱な、あるいは、リスクのある顧客のために特別な時間帯を設ける。
- オンラインでの注文とカーブサイド・ピックアップ(※従業員が車内にいる顧客に商品を手渡す)を継続し、奨励する必要がある。
- 店舗の収容人数、顧客が店舗内外で並ぶ方法、カーブサイド・ピックアップ(※従業員が車内にいる顧客に商品を手渡す)に関するガイダンスを準備する。行列や混雑を引き起こす可能性がある状況を作らないように注意する。
- 病気や症状のある人は入店しないように注意を促す掲示を行う。カーブサイド・ピックアップ(※従業員が車内にいる顧客に商品を手渡す)など代替となる購入方法のための電話番号やウェブサイトの情報を提供する。
清潔さと快適さのために
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のガイドラインに従って施設を清掃、消毒する。
- ハンドサニタイザー(手指消毒剤)、消毒用ウェットティッシュ、石鹸と水、または同様の消毒剤を従業員や顧客が、手で触る可能性のある場所ですぐ利用できるようにしておく。入店時に提供する。
- 可能な限り、タッチレス決済を実施し、奨励する。
コミュニケーションのために
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の推奨を遵守していることを投稿することで、清潔さへの取り組みを伝える。
- ソーシャル・ディスタンシングの手順(ptotocol)と新型コロナウイルス感染症防止の取り組みを詳細に記した看板を掲示することで、顧客への配慮を示す。
- 従業員とゲストの快適さのための対策と、従業員とゲストの健康状態を把握し、体調が悪い時は自宅待機するという責任の共有について、従業員とゲストとコミュニケーションを図る。
- 言語へのアクセス:スペイン語、および、スモールビジネスのコミュニティで広く行き渡っている言語でトレーニングのコンテンツを提供する。
- 営業していることをコミュニケーション・チャンネルを通して、顧客に呼びかける。
パーソナルサービス
建物の準備
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の推奨に従って、通行量の多い場所、よく触る場所を絶えず清掃するための包括的な計画を検討し、作成する。
- 顧客と従業員が最も少ない時に配送を手配することで、ベンダーが安全に商品を搬入するための計画を立てる。
- 公共エリアから雑誌や新聞を取り除く。
- ソーシャル・ディスタンシングのガイドラインに対応するためにワークステーションを配置する。
- 建物が長期間閉鎖されている場合は、冷暖房空調設備(HVAC)システムを点検する。水回りを洗浄・消毒する。
労働力の準備
- 従業員は、一般の、および、業界固有の両方について、現在の新型コロナウイルス感染症の健康と職場のガイドラインについてトレーニングを受け、理解する必要がある。
- 必要に応じてテレワークを行えるようにする。職場への復帰に関して、従業員に柔軟性を与える。
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)またはMDH(Maryland Department of Health:メリーランド州保健局)推奨の健康に関する質問(health questions)を含む労働者やその他の人の日常的な検査プロセスを実施し、体温測定を検討する。
- 病気の労働者に、新型コロナウイルス感染症の感染が疑われる、または感染が確認された場合の自宅隔離(home isolation)に関するCDC(アメリカ疾病予防管理センター)と州のガイドラインに従うよう指示する。
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)とMDH(Maryland Department of Health:メリーランド州保健局)のガイドラインに従い、新型コロナウイルス感染症に直接被曝した人、および、被曝した可能性がある人が陽性診断を受けた場合の行動計画を作成し、伝達する。
- 従業員と顧客はフェイスマスク/フェイスカバーを着用する必要がある。特定の業界からの推奨に基づき、追加の個人防護具(PPE)を検討する。
ソーシャル・ディスタンシングの計画
- 可能な限り、在宅での勤務を許可する。
- 待合室や精算場所に人が集まらないように、適切なマーキング/混雑抑制の仕組みを作ったり、掲示したりする。
- 予約制のみとする。クライエント間は、清掃のために十分な時間を確保する。
- 付属的な商品は、カーブサイド・ピックアップ(※従業員が車内にいる顧客に商品を手渡す)で購入できるようにする。
- 従業員の相互作用を制限するために、1日あたりの勤務時間を調整したり、ずらしたり、および/または、延長したりする。
- ソーシャル・ディスタンシングに対応できないオープンエリアへの立ち入りを制限する。
タッチポイント(接触点)の削減、アクセス管理、清掃の向上
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のガイドラインに従って、クライアント間の含むように、施設を清掃、消毒する。
- 一般の人や従業員が利用しやすいように、ハンドサニタイザー(手指消毒剤)や消毒用ウェットティッシュを備えた消毒ステーションを設置する。
- 可能な限り、タッチレス決済を実施し、奨励する。
- 病気や症状のある人は入店しないように注意を促す掲示を行う。
- 小売する商品の在庫を触れない(ノータッチ)エリア(カウンターの後ろなど)に移動し、接触を最小限にする。
- 従業員に、名刺を配らないこと、身体の接触を伴う挨拶を控えることを提案する。
コミュニケーションの手続き
- 言語へのアクセス:スペイン語、および、スモールビジネスのコミュニティで広く行き渡っている言語でトレーニングのコンテンツを提供する。
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の推奨を遵守していることを投稿することで、清潔さへの取り組みを伝える。
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の推奨を遵守していることを投稿することで、清潔さへの取り組みを伝える。
- ソーシャル・ディスタンシングの手順(ptotocol)と新型コロナウイルス感染症防止の取り組みを詳細に記した看板を掲示することで、顧客への配慮を示す。
製造業
建物の準備
- 工場のフロアをゾーン化し、可能な限り従業員が指定されたエリアに留まるようにする。
- プレキシガラスなどの仕切りを設置することで、生産工程で一緒に作業する人同士を切り離す。
- 換気率と、システムに循環する外気の割合を高める。
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)、OSHA(アメリカ労働安全衛生局)、州、および会社によるガイドラインの実施とモニタリングを担当するチームを編成する。
- 事前にサプライチェーンと手順を共有し、全ての訪問者に期待することを伝える。
労働力の準備
- ソーシャル・ディスタンシング、タイムレコーダーの利用、共用エリアの利用、消毒、適切な個人防護具(PPE)の利用を含め、現在の新型コロナウイルス感染症の健康のガイドラインにって従業員をトレーニングする。全従業員の責任を再確認するため、毎日の安全会議にトレーニングを含める。
- 必要に応じてテレワークを行えるようにする。工場/事務所への復帰に関して、従業員に柔軟性を与える。
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)またはMDH(Maryland Department of Health:メリーランド州保健局)推奨の健康に関する質問(health questions)を含む労働者やその他の人の日常的な検査プロセスを実施し、体温測定を検討する。
- 病気の労働者に、新型コロナウイルス感染症の感染が疑われる、または感染が確認された場合の自宅隔離(home isolation)に関するCDC(アメリカ疾病予防管理センター)と州のガイドラインに従うよう指示する。
- 職場で症状が生じた場合は、従業員が帰宅できるまでの隔離エリア(isolation are)を指定する。
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)とMDH(Maryland Department of Health:メリーランド州保健局)のガイドラインに従い、新型コロナウイルス感染症に直接被曝した人、および、被曝した可能性がある人が陽性診断を受けた場合の行動計画を作成し、伝達する。
- 適切な個人防護具(PPE)を提供し、マスクと手袋の適切な着脱方法について、従業員をトレーニングする。
ソーシャル・ディスタンシングの計画
- タイムレコーダーのある場所や休憩場所に人が集まるのを最小限にするために、シフトの開始/終了時間、休憩時間、昼食時間をずらす。
- 床や作業に6フィート間隔のマーキングをすることで、従業員にソーシャル・ディスタンシングを意識させる。
- トレーニングルーム/休憩室の椅子を離すことで、ソーシャル・ディスタンシングを確保する。
- 潜在的な感染爆発(Outbreak)を隔離し、封じ込めるために、チームメンバーの一貫性を維持する。
- 病気の蔓延を軽減するために、シフトごとに一貫した基幹的な業務チーム(essential operations team)を立ち上げる。
- 日常的なシフトの引き継ぎのミーティングを変更して、可能な限り相互作用を制限する。
タッチポイント(接触点)の削減、アクセス管理、清掃の向上
- 従業員が手洗いや手の消毒を簡単に行えるようにし、シフトの開始前と終了後、トイレを含めて、昼食や他の休憩の開始前と終了後に手洗い、手の消毒を行うことを義務付ける。
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のガイダンスに従い、少なくとも各シフトの変更、および/あるいは、生産ラインの変更と同じ頻度で、よく触る場所の清掃、消毒をする。
- 感染拡大を防ぐために、タイムカードを打つ場所で保護具や消毒剤を提供する。
- 可能であればドアを開け放したり、取り除いたりすることで、触る場所を減らしたり、無くしたりする。
コミュニケーションの手続き
- 職場全体の安全手順(protocols)に関する適切な掲示を行う。
- 暴露のリスクを最小限に抑えるための手続きと期待される行動を頻繁に伝えることで、労働力の信頼を築く。
(翻訳ここまで)