アメリカ東海岸のメリーランド州では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応として、2020年3月30日に外出禁止令(自宅待機命令:Stay-at-Home Order)が発令されました。
それから約1ヶ月半後の2020年5月15日の17時から、外出禁止令(自宅待機命令)が解除され、自宅待機に関する勧告(Safer-at-Home Public Health Advisory)に移行。再開ステージ1が始まりました。これにより洋服屋や靴屋などの小売店、散髪屋と美容院のパーソナルサービス、製造業などのビジネスが再開されました。
2020年5月29日の17時からはレストランとバーでの屋外ダイニング(屋外での食事)が再開可能になっています。
2020年6月5日(金)17時には再開ステージ2が始まりました。そして、2020年6月12日(金)17時から最大収容人数の50%を限度として、レストランとバー内でのダイニングが再開可能になっています。
メリーランド州の動きを振り返ると、少なくともこれまでのところは、社会を再開する動きは順調に進んでいるように思います。
ただし、新型コロナウイルス感染症が完全に収束されたわけではなく、レストランやバーに対しては感染防止のための取り組みが求められています。
ここでは、メリーランド州保健局(MDH:Maryland Department of Health)の指令・命令と、メリーランド州による感染防止のためのベストプラクティス(最も効率の良い方法)を通して、レストランとバーにおいてどのような感染防止の取り組みが求められているかを見ていきたいと思います。
目次
フードサービス施設における指令・命令
※以下はメリーランド州保健局(MDH:Maryland Department of Health)による「フードサービス施設における指令・命令」(DIRECTIVE AND ORDER REGARDING FOOD SERVICE ESTABLISHMENTS)(June 10, 2020)の一部の翻訳である。
フードサービス施設の制限
(A)屋外および屋内の客席エリアで消費される飲食物を顧客に提供する州知事令第20-06-10-01に基づく全てのフードサービス施設は、2020年6月12日の17時の時点で、
I)同じ世帯あるいは一緒に座っているグループを除き、顧客が互いに少なくとも6フィート離れて座れるようにフロアプランを変更する。1つのテーブルに着席できるのは6人までである。
II)ブース席のある施設では、ブースを1つおきに閉鎖することで、6フィートのソーシャル・ディスタンシングを確保する必要がある。
III)顧客とスタッフが集まる全ての場所では、6フィートのマーキングシステムを確立し、推奨されるソーシャル・ディスタンシングを視覚的に示す。
IV)バーに着席する顧客は、同じ世帯あるいは一緒に座っているグループを除き、少なくとも6フィートの適切なソーシャル・ディスタンシングのガイドラインを遵守しなければならない。バーエリアでの立席は許可されない。
V)よく触る場所と共に、利用ごとにテーブルを清掃、消毒する。新型コロナウイルス感染症の対策になるEPA(Environmental Protection Agency:アメリカ合衆国環境保護庁)の基準を満たしている、食品が触れる面に適した洗剤を利用する。
VI)ビュッフェ形式で食事を提供しない。
VII)屋内のフードサービス施設の収容人数は、州知事令第20-06-10-01号で定義される最大収容人数の50%を超えてはならない。
(B)全てのフードサービス施設は、州知事令第20-04-15-01号で定義されているように、フェイスカバー着用が安全でない場合を除き、全てのスタッフにフェイスカバーの着用を義務付け、以下のスタッフの対策を実施しなければならない。
I)従業員は手指の衛生、清掃の手順(ptorocols)、個人防護具(PPE)の使用と廃棄など、新型コロナウイルス感染症の健康と職場のガイドラインのトレーニングを受け、理解する必要がある。
II)CDC(アメリカ疾病予防管理センター)またはMDH(Maryland Department of Health:メリーランド州保健局)推奨の健康に関する質問(health questions)を含む労働者の日常的な検査プロセスを実施し、体温測定を検討する。
III)病気の労働者に、新型コロナウイルス感染症の感染が疑われる、または感染が確認された場合の自宅隔離(home isolation)と、職場復帰に関するCDC(アメリカ疾病予防管理センター)とMDH(Maryland Department of Health:メリーランド州保健局)のガイドラインに従うよう指示する。
(C)フードサービス施設は、9歳以上の顧客、および、9歳以上の訪問者に、飲食している間を除いて、(州知事令第20-04-15-01号で定義されているように)屋内でフェイスカバーの着用を義務付けなければならない。フードサービス施設は、このような要求を顧客と訪問者に知らせるための看板を、各入口に掲示しなければならない。
(翻訳ここまで)
レストランとバー再開のためのベストプラクティス
※以下はメリーランド州「Back to Business」のページに掲載されている「ビジネス再開のためのベストプラクティス」の資料のうち、「レストランとバー」の資料(2020年6月12日更新)の翻訳である。
なお、2020年6月12日に更新された資料からは、2020年5月27日に公開された資料から「ソーシャル・ディスタンシングのために」の「1つのテーブルに6人以上が座ることはできない。大人数の集まりやパーティーは、現時点では行うことができない。」の項目が除外されている。
レストラン・バーのために
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)、FDA(アメリカ食品医薬品局)、全米レストラン協会(National Restaurant Association)のガイダンスに従い、以下を含む再開のための計画またはチェックリストを作成する。
・スタックのトレーニング。
・休暇規定、欠勤の計画、従業員のスクリーニング。
・顧客やスタッフのフェイスカバーの要件。
・損傷や、欠損による問題がないかの物理的施設の評価。機械、空調、水/氷システムの検査を含む、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)、メリーランド州環境局(Maryland Department of the Environment)の建物再開のガイダンスに従う。製造元の指示に従い、危機の給水ラインや接続を含む全ての給水ラインが洗浄されていることを確認する。
・出入口、列、ボトルネック(人が滞留しやすい場所)、施設のレイアウト、安全な収容人数制限に特に配慮した、スタッフ、ベンダー、顧客のためのソーシャル・ディスタンシングの手順(protocols and procedures)。
・コミュニケーションと掲示。
・CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の推奨に準拠し、特によく触る場所の、定期的かつ頻繁な洗浄と消毒。 - 顧客と従業員が最も少ない時に配送を手配することで、ベンダーが安全に商品を搬入するための計画を立てる。
- 注文品を安全に受け取ることができるように、新型コロナウイルス感染症の予防策を遵守しながら、第三者(third-party)の食品配達業者のための手順を確立する。これらの手順を、各事業者に直接、および/または、掲示で伝える。
- 管轄区域内の追加要件、あるいは、質問がある場合、特に営業を変更する場合(屋外での食事(outdoor dining)の追加など)は、地元の保健局に確認する。
従業員のために
- 従業員は、適切な個人防護具(PPE)の利用と廃棄に加えて、手の衛生と洗浄の手順(protocols)など、現在の新型コロナウイルス感染症の健康と職場のガイドラインについてトレーニングを受け、理解する必要がある。
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)またはMDH(Maryland Department of Health:メリーランド州保健局)推奨の健康に関する質問(health questions)を含む労働者の日常的な検査プロセスを実施し、体温測定を検討する。
- 病気の労働者に、新型コロナウイルス感染症の感染が疑われる、または感染が確認された場合の自宅隔離(home isolation)と、職場復帰に関するCDC(アメリカ疾病予防管理センター)と州のガイドラインに従うよう指示する。
- 従業員に、休憩時間を含めてソーシャル・ディスタンシングを維持することを奨励し、スタッフが集まらないように手順を修正する。
- ソーシャル・ディスタンシング、フェイスカバー、その他の手順(protocol)に異議を申し立てる顧客への適切な対応ついて、従業員をトレーニングする。
- 他のスタッフやゲスト、特にソーシャル・ディスタンシングを確保できない場合はフェイスカバーが必要である。
- 従業員は、食事を取り除く際には手袋を着用し、その後すぐに手を洗う必要がある。
- 待機ステーションと注文ステーション(Wait and order stations)は利用後は拭き取り、共用の道具と機器は、他の従業員に渡す前と、シフトの開始時・終了時に消毒する必要がある。
ソーシャル・ディスタンシングのために
- 顧客とスタッフが集まる全ての場所において、6フィートごとのマーキングのシステムを確立し、推奨されるソーシャル・ディスタンシングを視覚的に示す。
- フロアプランを変更し、一緒に座っている世帯を除いて、顧客同士が互いに6フィート離れて座れるようにする。ブース席のある施設では、ブースを1つおきに閉鎖することで、6フィートのソーシャル・ディスタンシングを確保する必要がある。
- 主な循環経路において歩く方向を指定し、表示する。一方通行の循環経路を検討する。
- 掲示、床のマーキング、障壁、従業員のコミュニケーションにより、共用エリアにおける集まりを最小限にする。ソーシャル・ディスタンシング、社会的集まり(social gathering)の要件を遵守できないエリアへのアクセスを制限する。
- バーに着席する顧客は、少なくとも6フィートの適切なソーシャル・ディスタンシングのガイドラインを遵守しなければならない。バーエリアでの立席は許可されない。
- 可能な限り予約システムを利用し、混雑を避ける。スマートフォンのアプリケーション、テキスト・メッセージ(texting)、掲示を利用して、顧客にテーブルやテイクアウトの注文が準備できたことを知らせる。ポケットベルの利用は避ける。
- 施設の収容人数、顧客が店舗内外で並ぶ方法、カーブサイド・ピックアップ(※従業員が車内にいる顧客に商品を手渡す)に関するガイダンスを準備する。行列や混雑を引き起こす可能性がある状況を作らないように注意する。
- 病気や症状のある人は施設に立ち入らないように注意を促す掲示を行う。テイクアウト、デリバリーなど代替となる購入方法のための電話番号やウェブサイトの情報を提供する。
- 可能であれば、脆弱な、あるいは、リスクのある顧客のために特別な時間帯を設ける。
清潔さと快適さのために
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のガイドラインに従い、施設、特によく触るエリア、利用後の各テーブルを頻繁に清掃、消毒する。新型コロナウイルス感染症の対策になるEPA(Environmental Protection Agency:アメリカ合衆国環境保護庁)の基準を満たしている、食品が触れる面に適した洗剤を利用する。
- テーブルから繊維製品(soft goods)を取り除く際には、トートに入れてランドリー・サービスを待ち、できるだけ暖かい湯で洗濯する。
- 現時点では、ビュッフェや類似の形態のサービスは利用できない。
- 顧客の快適さのために、着席後にテーブルセッティングを配置し、使い捨て容器、または、消毒済みの製品包装(disinfected manufactured packaging)のいずれかで調味料を提供する。メニューボード、使い捨てのメニュー、あるいは、モバイルの注文アプリを利用する。通常のメニューを利用している場合は、顧客による利用ごとに洗浄、消毒を行う。
- 複数回利用するアメニティーや、雑誌、クーポン券、メニュー、パンフレットなどの不必要な物は、一般の人々に公開されているエリアから取り除く。
- ハンドサニタイザー(手指消毒剤)、消毒用ウェットティッシュ、石鹸と水、または同様の消毒剤を、特に顧客と従業員の主要な入口や、ゲストが集まる可能性があるエリアにおいて、従業員や顧客がですぐ利用できるようにしておく。
- 可能な場合は、タッチレス決済を実施し、奨励する。
- 従業員と顧客は該当する場合、または、必要とされる場合は引き続きフェイスカバーを着用する。
- トイレに使い捨てのタオルとゴミ箱を用意し、顧客が洗ったばかりの素手でドアの取手を触ることなくトイレから出ることができるようにする。
コミュニケーションのために
- CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のガイドラインを遵守していることを投稿することで、清潔さへの取り組みを伝える。
- ソーシャル・ディスタンシングの手順(ptotocol)と新型コロナウイルス感染症防止を詳細に記した看板を掲示することで、顧客への配慮を示す。
- 従業員と顧客の快適さのための対策と、従業員とゲストの健康状態を把握し、体調が悪い時は自宅待機するという責任の共有について、従業員とゲストとコミュニケーションを図る。
- 事前に、または、予約プロセスにおいて、着席、給仕、注文、支払い、フェイスカバーの着用の手順を含む、食事の体験(dining experience)の変更を顧客に伝える。
- 営業していることをコミュニケーション・チャンネルを通して、顧客に呼びかける。
(翻訳ここまで)
(更新:2020年6月24日)