『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

新型コロナウイルス感染症からの再開ステージ2への移行:アメリカ・メリーランド州

アメリカ東海岸のメリーランド州では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応として2020年3月30日には外出禁止令(自宅待機命令:Stay-at-Home Order)が発令され、不可欠な活動(Essential Activities)を除いた外出が禁止されることになりました。

それから約1ヶ月半が経過した5月15日の17時から、外出禁止令(自宅待機命令:Stay-at-Home Order)が解除され、自宅待機に関する勧告(Safer-at-Home Public Health Advisory)に移行し、再開ステージ1が開始されました。
これに伴い、復興プラン『メリーランド・ストロング:復興のためのロードマップ』(Maryland Strong: Roadmap to Recovery)に示されたステージ1に移行し、次のようなビジネスが再開されることになりました。

  • 小売店は最大収容人数の50%を上限として再開可。店の外でのピックアップと配達のオプションを引き続き強く奨励。例としては、洋服屋、靴屋、ペットの美容師(Pet groomer)、アニマルシェルター(animal adoption shelters)、洗車サービス、アートギャラリー、本屋
  • 製造業は安全・公衆衛生ガイドラインに従う形で操業開始可
  • 教会や礼拝所は再開可。アウトドアでの集会が強く推奨されるが、最大収容人数の50%を上限として適切な安全策をとった上で屋内での集会も可
  • パーソナルサービス(床屋と美容院)は予約のみ、50%の収容を上限として再開可。適切な安全ガイドラインに則る必要がある

※2020年5月13日配信の在アメリカ合衆国日本国大使館「領事メール」より。ただし、表現を改めている部分がある。

5月29日17時からは、レストランやバーでの屋外ダイニング、VFW(Veterans of Foreign Wars)ポスト、エルクスクラブ(Elks Clubs)をはじめとする社交クラブ、友愛クラブにおける屋外ダイニング、ユーススポーツ活動、ユースデイキャンプ、屋外プール、ドライブインシアターが再開。

そして、6月5日の17時からステージ2に移行し、次のようなビジネスが新たに再開されることとなりました。

  • ステージ2で再開されるビジネス:製造、建設、大小の小売店、専門業者、卸売業者、倉庫、IT企業、法律事務所、経理、銀行、金融機関、保険代理店、デザインスタジオ、広告、建築会社、メディア制作会社、不動産、旅行代理店、自動車ディーラーのショールーム、銀行の支店等
  • 追加的に再開されるパーソナルサービス:ネイルサロン、日焼けサロン、マッサージ・タトゥーパーラーなどのパーソナルサービスは、ガイドライン履行のもと、予約のみ、最大収容人数の50%以下で営業が可能。

※2020年6月3日配信の在アメリカ合衆国日本国大使館「領事メール」より。ただし、表現を改めている部分がある。

このように、メリーランド州では段階的に、少しずつ社会を再開する動きが進んでいます。

なお、ステージの移行は郡(County)などの地方政府の状況に応じたコミュニティ重視のアプローチがとられており、ステージ移行のタイミングは地方政府の判断に基づくものとされています。

ステージ2における活動やビジネス

6月3日に発令された知事令では、ステージ2への移行に伴って再開が可能になる活動やビジネスと、引き続き禁止される活動やビジネスが記されています。以下ではこの知事令の内容を見ていきたいと思います*1)。


II.10名以上の集まりの禁止

10人以上の社会的、コミュニティ、レクリエーション、レジャー、スポーツの集まりやイベント(以下、大規模な集まりやイベント)は、パレード、お祭り、集会、ファンドレイザー(資金獲得の催し)をはじめ、あらゆる場所で禁止されている。
計画されている「大規模な集まりやイベント」は、非常事態が終了し、健康上の非常事態の宣言(proclamation of the catastrophic health emergency)が取り消されるまで、中止または延期しなければならない。

III.オープン可能なビジネス、組織、施設(Businesses, Organizations, Establishments, and Facilities)

(a)宗教施設

該当する地方令に従い、メリーランド州内の教会、シナゴーグ、モスク、寺院、およびその他の同様の宗教施設(以下、宗教施設)は一般市民に公開することができる。ただし、宗教施設内で一度に収容できる人数は、その施設の最大収容人数(以下に定義)の50%を超えてはならない。

(b)小売施設

該当する地方令に従い、メリーランド州内で主に商品を販売する小売業、組織、施設(以下、小売施設)は一般市民に公開することができる。ただし、小売施設内で一度に収容できる人数は、その施設の最大収容人数(以下に定義)の50%を超えてはならない。

(c)製造業

該当する地方令に従い、メリーランド州内の全ての製造業および製造施設が営業を開始することができる。

(d)特定のパーソナルサービス

(i)該当する地方令および下記のIII-d-ii項に従い、メリーランド州内の以下の施設(以下、パーソナルサービス施設)は一般市民に公開することができる。
1)美容室。ただしヘアサービスと、「Title 5 of the Business Occupations Article of the Maryland Code」に記載されている乾燥のみ提供可能。
2)理髪店。
3)2020年6月5日17時より営業可能。
(a)タトゥーパーラー。
(b)日焼けサロン。
(c)マッサージパーラー
(d)エステサービスやネイルサービス(Title 5 of the Business Occupations Article of the Maryland Codeに記載されている)を提供する施設。

(ii)2歳以上の全ての顧客は、パーソナルサービス施設内ではフェイスカバー(以下のフェイスカバー命令によって定義される)の着用が義務付けられる。ただし、フェイスカバーを着用することでサービスが行えない場合を除く。全てのパーソナルサービスは以下の条件を満たさなければならない。
1)スタッフには、一般市民に公開されているエリアや他のスタッフと接触する可能性があるエリアでは、フェイスカバーの着用を義務付ける。
2)予約制でのみサービスを提供する。
3)パーソナルサービス施設内で一度に収容できる人数は、その施設の最大収容人数(以下に定義)の50%を超えてはならない。
4)それぞれの顧客にサービスを提供した後は、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)およびMDH(Maryland Department of Health:メリーランド州保健局)による該当するガイダンスに従い、サービスが行われたエリアを清掃、消毒する。

(e)アウトドア・レクリエーション

本命令の他の規定に関わらず、該当する地方令に従い、メリーランド州内の以下の施設は一般市民に公開することができる。
(i)ゴルフコース、および、ゴルフ練習場。

(ii)屋外のアーチェリー場、および、射撃場。

(iii)マリーナ(ヨット停泊場)、および、船舶のレンタル事業。

(iv)キャンプ場。

(v)乗馬施設。

(vi)ドライブイン・シアター

(vii)屋外のスイミング・プール

(viii)屋外のデイキャンプ

(f)フードサービス施設

(i)本命令の他の規定に関わらず、該当する地方令および下記のIII-f-iiに従い、(a)メリーランド州内の敷地で消費される飲食物を販売するレストラン、バー、他の類似の施設(以下、レストランとバー)、(b)食事のための施設を備えた社交クラブ、友愛クラブ(アメリカン・リージョン・ポスト、VFW(Veterans of Foreign Wars)ポスト、エルクスクラブ(Elks Clubs)など)(以下、「社交クラブ」)は、該当する法によって以下を行うことができる。
1)屋外の座席エリアで消費される飲食物を顧客に提供すること。
2)飲食物が速やかに敷地内から持ち出される場合、つまり、テイクアウト(carry-out)やドライブスルーで、飲食物を販売すること。および/または
3)敷地外の顧客に飲食物を配達すること。

(ii)屋外エリアで顧客に飲食物を提供するレストランとバー、社交クラブは以下を行うものとする。
1)フェイスカバー命令(以下で定義)に従い、全てのスタッフにフェイスカバー着用を義務付ける。
2)同じ世帯の人が一緒に座る場合を除き、顧客が少なくとも6フィート離れて座っていることを確認する。
3)同じ世帯のメンバーを除いて、6人以上のグループが一緒に座ることを許可しない。
4)ビュッフェ形式で食事を提供しない。
5)CDC(アメリカ疾病予防管理センター)およびMDH(Maryland Department of Health:メリーランド州保健局)のガイドラインに従い、新型コロナウイルス感染症の対策になるアメリカ合衆国環境保護庁(EPA=Environmental Protection Agency)の基準を満たす洗浄製品を用いて、着席する顧客が変わるたびにテーブルを洗浄、消毒する。

(iii)本命令で使用される「屋外の座席エリア」とは、「COMAR 10.19.04.02.B(9)」で定義される屋内エリアではないエリアを意味する。

(g)他のビジネス

2020年6月5日17時から発効する本命令、または、メリーランド州知事の他の命令によって閉鎖されている場合を除き、アメリカ合衆国国土安全保障省のサイバーセキュリティ・インフラストラクチャーセキュリティ庁(Cybersecurity and Infrastructure Security Agency)によって特定された重要インフラ部門(現在はhttps://www.cisa.gov/identifying-critical-infrastructure-during-covid-19に記載されている)に属さないビジネス、組織、施設は一般市民に公開することができる。

(h)最大収容人数の定義

宗教施設、小売施設、パーソナルサービス施設(以下、施設)に関して、最大収容人数は次のことを意味する。
(i)該当する消防法に基づく施設の最大収容人数(maximum occupancy load)であり、地元の消防法施行者が施設に交付した証明書に記載されているもの。
あるいは

(ii)地元の消防法施行者により証明書が交付されていない場合、該当する法令、規則、認可による施設の最大収容人数に基づく。

(i)営業の要件

(i)IIIで営業が許可されている全てのビジネス、組織、施設は、以下を遵守しなければならない。
1)該当する地方令。
2)該当する長官指令。
3)該当するCDC(アメリカ疾病予防管理センター)およびMDH(Maryland Department of Health:メリーランド州保健局)によるソーシャル・ディスタンシングのガイダンス。
4)2020年4月5日付けのメリーランド州知事令第20-04-05-02号「Delegating Authority to Local Officials to Control and Close Unsafe Facilities」に基づき、地方保健担当官が発令した該当する命令(随時改正される可能性がある)。

(ii)誤解を避けるために記すと、小売施設は2020年4月15日付けのメリーランド州知事令第20-04-15-01号「Requiring Use of Face Coverings Under Certain Circumstances and Requiring Implementation of Certain Physical Distancing Measures」(随時改正される可能性がある。以下、フェイスカバー命令)を引き続き遵守する必要がある。

(iii)メリーランド州ないの全てのビジネス、組織、施設は、2歳以上の顧客、2歳以上の訪問者、および/あるいはスタッフにフェイスカバー着用(フェイスカバー命令で定義)を義務付けることができる。着用を義務付けるビジネス、組織、施設はそれぞれの入口に顧客、訪問者、および/あるいはスタッフにそれを知らせる看板を掲示しなければならない。

IV.閉鎖が義務付けられるビジネス、組織、施設(Businesses, Organizations, Establishments, and Facilities)

(a)シニアセンター

全ての高齢者活動センター(「Section 10- 501(i) of the Human Services Article of the Maryland Code」で定義されている)は、非常事態が終了し、健康上の非常事態の宣言(proclamation of the catastrophic health emergency)が取り消されるまで、閉鎖し続けなければならない。

(b)レストランとバー

(i)この命令はメリーランド州内のレストラン、バー、および、敷地内で消費する飲食物を販売する他の類似の施設(以下、レストランとバー)の収容と利用を規制するものである。この命令はレストランとバーの定義から明示的に除外される医療施設(health care facilities)での飲食サービスには適用されない。

(ii)III-f項によって許可されている場合を除き、全てのレストランとバーは一般市民に開放してはならない。

(c)フィットネスセンター

(i)この命令はメリーランド州内のフィットネスセンター、ヘルスクラブ、ヘルススパ、ジム、スイミングプール、および、護身術の学校(self-defense schools)(以下、フィットネスセンター)の収容と利用を規制するものである。

(ii)全てのフィットネスセンターは一般市民に開放してはならない。ただし、免許を受けて、あるいは、該当する法律、規制、命令に基づいて託児サービスを提供しているフィットネスセンターの部分は、その託児サービスを継続して提供するために、一般市民に公開することができる。

(d)劇場

(i)この命令はメリーランド州内の、ライブパフォーマンスが行われたり、映画が上映されたりする場所(以下、劇場)の収容と利用を規制するものである。
(ii)III-e-vi-1項によって許可されている場合を除き、全ての劇場は一般市民に開放してはならない。

(e)モール

(i)この命令はメリーランド州内の、1つ以上の閉鎖型の歩行者用コンコースを有するショッピングセンター(以下、閉鎖型モール)の収容と利用を規制するものである。

(ii)閉鎖型モールのうち、以下の部分は一般市民に開放してはならない。
1)一般市民に開放されている、フードコートを含む歩行者用コンコースおよび他の屋内の共有エリア。
2)閉鎖型の歩行者用コンコースや他の内部空間からしかアクセスできない小売施設。

(iii)IV-e項は、屋外から直接アクセスが可能な、閉鎖型モールに接続する小売施設の閉鎖を求めるものではない。

(iv)IV-e-ii項に関わらず、地方自治体は閉鎖型モールの以下の部分への一般市民によるアクセスを承認することができる。
1)(a)主に食料品や薬を販売している小売施設、(b)認可を受けた専門家がヘルケアサービスを提供している小売施設。
2)歩行者用コンコース、および、その他の屋内の共用エリア。ただし、一般市民がIV-e-iv-1項に記載されている小売施設にアクセスするために必要な範囲に限定される。

(f)他のレクリエーション施設

(i)この命令はメリーランド州内の、以下の施設(以下、レクリエーション施設)の収容と利用を規制するものである。
1)ビンゴホール。
2)ボーリング場。
3)ビリヤード場。
4)遊園地。
5)ローラースケート場、および、アイススケート場。
6)ミニチュアゴルフ場。
7)社交クラブ。
8)上に記載されていない他の施設で、「Title 4 of the Tax-General Article of the Maryland Code」に基づく入場・娯楽税(admission and amusement tax)の対象になる施設。

(ii)全てのレクリエーション施設は一般市民(施設クラブの場合は会員を含む)に開放してはならない。

(g)最小限の業務

スタッフやオーナーは、以下の場合にのみ、本命令によって閉鎖が義務付けられているビジネス、組織、施設の敷地に継続して立ち入ることができる。
(i)他のスタッフによるリモートワーク(テレワーク)のファシリテート。

(ii)不可欠な財産(essential property)の維持。

(iii)生鮮品の腐敗防止をはじめとする、財産の損失または損害の防止。

(iv)郵便物の受け取りや給与計算処理をはじめとする不可欠な管理業務の遂行。

(v)生きた動物の世話。

(h)他の命令による閉鎖

メリーランド州知事の他の命令、または、政治の下位部門の他の命令によって閉鎖が義務付けられた全てのビジネス、組織、施設は、場合によっては、その命令に基づいて閉鎖され、および、閉鎖され続けなければならない。

V.特定の除外

誤解を避けるために記すと、この命令は、以下のいずれかの業務に関連して、閉鎖したり、あるいは、スタッフやボランティアの移動を禁止したりすることを求めるものではない。
(a)連邦政府、州政府、地方自治体の部門、建物、施設。
(b)新聞、テレビ、ラジオ、あるいは、他のメディアサービス。
(c)ホームレスのシェルター、フードバンク、食糧配給所をはじめとする低所得の人々に不可欠なサービスを提供する非営利団体または施設。

VI.大人数が利用・出席する政府の建物や施設

(a)10人以上の利用・出席が予想される州や地方自治体の建物や施設は、以下の条件を満たさなければならない。
(i)建物や施設内に、ソーシャル・ディスタンシングに関するMDH(Maryland Department of Health:メリーランド州保健局)の推奨のコピーを即座に、目立つように掲示する。
(ii)利用者と出席者全員が手洗いできるようにする。

(b)10人以上の利用・出席が予想される州や地方自治体の建物や施設において、全ての利用者と出席者がこの命令の写しを閲覧できるようにしなければならない。

(翻訳ここまで)

(更新:2020年10月2日)