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アメリカ・メリーランド州の新型コロナウイルス感染症への対応(2020年3月~2021年12月)

※メリーランド州のその後の状況はこちらを参照。
※メリーランド州における対応を時系列で整理した情報はこちらを参照。


メリーランド州は、アメリカ東海岸に位置(ワシントンDCに隣接する州)する人口約600万人の州です。ここではメリーランド州における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の状況の推移をご紹介します。

メリーランド州の対応

アメリカでの新型コロナウイルス感染症の感染者は、2020年1月21日に西海岸のワシントン州で初めて見つかりました(※Wikipediaの「アメリカ合衆国における2019年コロナウイルス感染症の流行状況」のページより)。メリーランド州で初めての感染者が見つかったのは、それから約1ヶ月半後の2020年3月5日。

初めての感染者が見つかったことを受け、メリーランド州知事が非常事態を宣言。2020年3月23日には「基幹的でないビジネス」(Non-Essential Businesses)が営業停止されました。そして、2020年3月30日には外出禁止令(自宅待機命令:Stay-at-Home Order)が発令されました。さらに、2020年4月15日には、買い物をする時、および、公共交通機関を利用する時にはマスク(フェイスカバー)着用を義務化する知事令が発令されました。

2020年4月中旬になると感染防止の対応によって停滞している社会をどう再開するかの提案が見られるようになっています。2020年4月24日に『メリーランド・ストロング:復興のためのロードマップ』(Maryland Strong: Roadmap to Recovery)が発表され、次の3つのステージに沿って段階的に復興していくことが提案されました。

2020年5月に入るとビジネスや活動を再開する具体的な動きが見られるようになり、2020年5月15日から外出禁止令(自宅待機命令:Stay-at-Home Order)が解除され、自宅待機に関する勧告(Safer-at-Home Public Health Advisory)に移行し、再開のステージ1が始まりました。2020年5月29日からはレストランでの屋外ダイニングが再開。2020年6月5日には再開ステージ2へ移行。2020年6月12日からは収容人数を制限してのレストラン屋内での飲食が再開されました。そして、2020年9月4日から再開ステージ3へ移行しました。

2020年12月からはワクチン接種が開始。2021年5月15日には収容人数等の規制の全面解除が行われました。2021年9月末からはファイザー製ワクチンの3回目の接種(ブースター接種)も始まっています。

メリーランド州ではこのように「基幹的でないビジネス」の営業停止、外出禁止令(自宅待機命令)、マスク着用の義務化など感染防止のための厳格な対応が早期に出されてきました。そして、感染状況をふまえながら規制が徐々に緩められていくというアプローチがとられてきました。ただし、その後、感染状況の広がりを受けて規制を強化する措置もとられています。

感染者数・死亡者数の推移

メリーランド州の1日の感染者数は、いくつかの山が見られますが、2021年12月にはオミクロン株により感染者数が大きく増えています。

1日の死亡者数は外出禁止令(自宅待機命令)が発令されていた期間は多く約170人という日もありました。その後もいくつかの山が見られます。オミクロン株による感染者数が増加している2021年12月では、2021年12月28日の死亡者数が417人と大きな値になっていますが、2021年12月5日〜12月27日までのデータがないためこの値はこの期間の累積になっている可能性があります。翌日の2021年12月29日は31人、翌々日の12月29日は55人であることから、感染者数の増加ほどには死亡者数は増加していない可能性があり、今後の推移を見ていく必要があります。

検査数の推移

メリーランド州では検査体制が徐々に拡充されてきました。2020年3月17日という早い段階で、州内の車両排気ガス検査場(VEIP=Vehicle Emissions Inspection Program)を活用して、ドライブスルー方式の検査場を設置することが発表されています。当初、検査には医師の検査指示書(order)と予約が必要とされていましたが、2020年5月22日からは複数の検査場で医師の検査指示書や予約なしでの検査が可能となり、これにより新型コロナウイルス感染症に暴露した可能性がある人でも検査を受けることができるようになっています。2020年5月22日からは薬局・コンビニエンスストアのチェーンであるCVSでも医師の検査指示書が不要のドライブスルー検査を受けることができるようになっています。

メリーランド州の1日の検査数は2020年12月にかけて増加し、その後、減少していましたが、2021年12月にはまた増加しています。2021年12月末に検査を受けようとした知人からは、検査キットが不足しているため検査を受けることができなかったという話も聞きました。
陽性率はいくつかの山が見られますが、2021月12月以降に大きな値になっています。

ワクチン接種完了者数の推移

2020年12月11日、アメリカのファイザーとドイツのビオンテック製が共同開発したワクチンが食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)から緊急使用の許可を得て、2020年12月14日から接種が始められました。

2021年11月19日、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)がファイザー製ワクチン、モデルナ製ワクチンの2回目接種から少なくとも6か月が経過した18歳以上の全ての人を、推奨するブースター接種の対象に加えると発表。この発表を受けて、メリーランド州では18歳以上の全ての人に対するがファイザー製ワクチン、モデルナ製ワクチンのブースター接種が開始されました。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のガイダンスでは、2回接種のワクチンの場合、2回目の摂取から2週間以上経過した人、1回接種のワクチンの場合、摂取から2週間以上経過した人がワクチン接種完了者(People Fully Vaccinated)と定義されています。
2021年12月31日時点で、ワクチン接種完了者(People Fully Vaccinated)は約430万人。約600万人の人口の3分の2がワクチン接種を完了していることになります。
日本は、ワクチン接種の開始時期は遅かったものの、2021年12月27日時点のワクチン接種完了者は77.8%となっており(※日本経済新聞「チャートで見る日本の接種状況 コロナワクチン」(2021年12月27日最終更新)のページより)、メリーランド州の割合を超えています。


メリーランド州の動きは、行政からの要請を受けたり、世間の目に対応したりすることで、あくまでも「自粛」として感染防止が行われきた日本とは異なることがわかります。また、検査数が多いこと、ワクチン接種の開始時期が早かったことも日本との違いです。ただし、ワクチン接種率については日本がメリーランド州を逆転しており、ワクチン接種の開始時期が早いことと、ワクチン接種率が高いこととはイコールでないことがわかります。

新型コロナウイルス感染症の収束の見通しは立っておらず、また、新型コロナウイルス感染症への対応方法については、国による状況も違うためアメリカと日本のどちらの対応が良いかは単純に比較できませんが、後から振り返った検証が行われると考えています。