オープニング・セレモニー
2024年3月30日(土)、シンガポールで、Ibashoプロジェクトの活動拠点のオープニング・セレモニーが開催されました*1)。
(オープニング・セレモニーの様子)
活動拠点が開かれたのは、近年、大規模な再開発が進められているクイーンズタウン(Queenstown)のドーソン(Dawson)というエリア。HDB(Housing and Development Board:住宅開発庁)が開発した大規模な団地、スカイオアシス@ドーソン(SkyOasis@Dawson)の共用施設棟の一画です。
(スカイオアシス@ドーソン)
(スカイオアシス@ドーソンの共用施設棟)
オープニング・セレモニーまでの歩み
クイーンズタウンにおけるIbashoプロジェクトは、2022年5月から始められ、Ibashoの8理念を共有したり、活動の内容や拠点を検討したりするワークショップやミーティングが重ねられました。そして、具体的な活動としてスマートフォンなどの相談を行うデジタル・クリニック(Digital Clinic)が行われました。
(Ibashoプロジェクトの歩み)
- 高齢者が知恵と経験を活かすこと (Elder Wisdom)
- あくまでも「ふつう」を実現すること(Normalcy)
- 地域の人たちがオーナーになること(Community Ownership)
- 地域の文化や伝統の魅力を発見すること(Culturally Appropriate)
- 様々な経歴・能力をもつ人たちが力を発揮できること(De-marginalization)
- あらゆる世代がつながりながら学び合うこと(Multi-generational)
- ずっと続いていくこと(Resilience)
- 完全を求めないこと(Embracing Imperfection)
(デジタル・クリニック(2023年9月2日))
マーガレット・ドライブ・センター
シンガポールにおけるIbashoプロジェクトの活動拠点は、日本の「居場所ハウス」のようにIbashoプロジェクトだけの場所ではありません。
場所の正式名称はFaithActs × Ibashoマーガレット・ドライブ・センター(FaithActs × Ibasho Margaret Drive Centre、以下、マーガレット・ドライブ・センター)で*2)、クイーンズタウンでコミュニティ・ケア・サービスを行う非営利団体のFaithActs(フェイス・アクト)*3)がアクティブ・エイジング・センター(Active Ageing Centre:AAC)として開いた場所に、Ibashoの8理念を導入するもので、具体的には、ある時間帯をIbashoプロジェクトの活動として利用するというかたちになっています。
AACは、60歳以上の高齢者(シンガポール国民・永住権保持者)を対象とするドロップインの社会的レクリエーションセンター。
「アクティブ・エイジング・センター(Active Ageing Centre:AAC)は、てコミュニティの近隣に住む高齢者をサポートするドロップインの社会的レクリエーションセンター(drop-in social recreational centre)である。高齢者が強い社会的つながりを築き、レクリエーション活動に参加し、希望に応じてコミュニティに貢献する機会を持てるようにするための場所(go-to point)である。」
※統合ケア庁(Agency for Integrated Care:AIC)の「Active Ageing Centres」のページに記載内容の翻訳
AACでは、具体的に次のようなサービスが提供されています。
- カラオケ、アート・クラフト、料理、エクササイズなどのプログラムによる高齢者がコミュニティに関わりを持ち続けるための活動(Active Ageing activities)
- 自宅を訪問したり、電話をかけたりするなど、追加の社会的なサポートを必要とする高齢者を支援するサービス(Befriending services)
- 介護サービスついての情報提供、紹介
また、AACの活動を手伝ったり、一人暮らしの高齢者の家庭を訪問したり、高齢者のために用事を済ませたりなど、AACのボランティアを希望する高齢者の募集も行われています*4)。
マーガレット・ドライブ・センターの予定表をみると、ソーシャル・レクリエーション・プログラムとしてチェアズンバ、カラオケ、料理、クラフト、音楽などのプログラムや、エクササイズなど、一般的なAACで行われるプログラムが記載されており、Ibashoプロジェクトの活動は、主に午後の時間帯に行われます。
(マーガレット・ドライブ・センターの予定表)
一般的なAACでは、高齢者のボランティアが募集されていますが、高齢者はサービスを受けたり、プログラムに参加する立場。これに対して、Ibashoの8理念を導入したこマーガレット・ドライブ・センターでは、高齢者が活動を自ら企画し、自分にできる役割を担うことでコミュニティに関わる活動が行われます。また、Ibashoプロジェクトのコア委員(Core Committee)には、高齢者だけでなく、若い世代も参加しているのも、一般的なAACとの違いです。
Ibashoプロジェクトとしての具体的な活動はこれから企画されていくようですが、現時点では既にスマートフォンなどの相談を行うデジタル・クリニック(Digital Clinic)や、再利用した布を用いた手芸ワークショップ(upcycling craft workshops)などが企画されているようです。
マーガレット・ドライブ・センターの空間
最初に紹介した通り、マーガレット・ドライブ・センターは共用施設棟の一画に開かれており、敷地のすぐ外には、MRTのクイーンズタウン駅などにつながる遊歩道が通っています。
同じ共用施設棟にはコーヒー・ショップ(Coffee Shop)、コンビニエンスストア、銀行などが入居。通りを渡れば、マーガレット・ドライブ・ホーカー・センター(Margaret Drive Hawker Centre)、かつての市場をリノベーションしたショッピングモールであるマーガレット・マーケット(Margaret Market)もあり、多くの人々が通り過ぎる立地の良い場所にあると感じました。
(共用施設棟のコーヒー・ショップ)
(マーガレット・ドライブ・ホーカー・センター)
(マーガレット・マーケット)
マーガレット・ドライブ・センターは、人通りの多い通りに面して縁側のような座れる場所がもうけられており、空間としても魅力的な場所です。
(マーガレット・ドライブ・センターの縁側)
■注
- 1)シンガポールにおけるIbashoプロジェクトについては、シンガポール国立大学(NUS)のプレスリリース「FaithActs and Ibasho join hands to empower residents at Queenstown」March 30, 2024も参照。
- 2)マーガレット・ドライブ(Margaret Drive)は通り/住所の名前。
- 3)FaithActs(フェイス・アクト)は、クイーンズタウンのフェイス・メソジスト教会(Faith Methodist Church)のコミュニティ・ケア・サービス部門として、学習困難な子ども、危険にさらされている若者、恵まれない家庭、困難なニーズをもつ高齢者などへのサポートを行っている。FaithActsの「About Us」のページより。
- 4)統合ケア庁(Agency for Integrated Care:AIC)の「Active Ageing Centres」のページより。