『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

三宮(神戸)と御堂筋(大阪)のパークレット

2010年、サンフランシスコで初めて、公式に、パブリック・パークレット(Public Parklet)が設置されました。路肩の駐車スペースにテーブルや椅子、ベンチなどを置いたり、植栽を植えたりして、人々が過ごせる場所にするという取り組みで、サンフランシスコでは次のように説明されています*1)。

■パークレットとは何ですか?
パークレットは、歩道に隣接する道の一部を人々のためのパブリックスペースとして再利用するものです。このような小さな公園では、座席、植栽、駐輪場、アートなどのアメニティが提供されています。パークレットは近隣のビジネス、住民、コミュニティ団体によって資金提供され、メンテナンスされていますが、誰もが自由にアクセスできるパブリックな場所です。パークレットには、スポンサーやデザインを担当するする人々や組織の多様性と創造性が反映されています。また、徒歩や自転車の利用を促進し、コミュニティを強化するサンフランシスコ市の取り組みも反映されています。
■パークレットはどこにありますか?
ほとんどのパークレットは、歩行者や歩道での活動の多い近隣の商業道路に設置されています。パークレットは常に駐車レーンに設置されており、通常、1~2台分の長さです。
※Groundplayの「Parakeets」のページに記載内容の翻訳。

サンフランシスコのパブリック・パークレット

パークレット(Parklet)の「let」は「小さい」という意味をつくる接尾語(booklet(小冊子)、applet(小型アプリケーション)など)、「Parklet」とは小さな公園という意味になります。近年、パークレットが、日本のいくつかの都市で社会実験、あるいは、常設で設置されています。ここでは、神戸市と大阪市に設置されたパークレットをご紹介したいと思います。

KOBEパークレット

神戸市の三宮中央通りでは、三宮中央通りまちづくり協議会、神戸市、神戸芸術工科大学の協力で、2016年10月から2017年3月まで、社会実験として3基のパークレットが設置されました*2)。西から、(1)三宮中央通りとトアロードの交差点の南西角付近、(2)三宮中央通りとトアロードの交差点の北西角付近、(3)三宮中央通りと生田筋との交差点の北東角付近の3ヶ所です。

社会実験の効果を検証をふまえ、2017年4月以降は、(1)三宮中央通りとトアロードの交差点の南西角付近、(3)三宮中央通りと生田筋との交差点の北東角付近の2基のパークレットが継続設置されること、(2)三宮中央通りとトアロードの交差点の北西角付近を、(2’)三宮中央通りとフラワーロードの交差点の北西角付近に移設することが決定。現在、この3基のパークレットが設置されています。

サンフランシスコでは歩道でなく車道部分に、つまり、車道路肩の駐車スペースを活用するかたちでパブリック・パークレットが設置されているのに対して、日本のパークレットは車道でなく歩道部分に設置されることがあります。
KOBEパークレットは歩道部分も活用しているという意味ではサンフランシスコのパブリック・パークレットと全く同じではないものの、歩道に加えて車道の停車帯を活用するかたちでパークレットを設置した日本で初めての例ということです。

(歩道部分に加えて車道の停車帯も活用)

KOBEパークレットの3基は、それぞれ違ったデザインになっています。
(1)三宮中央通りとトアロードの交差点の南西角付近のパークレットは、主にグループでの利用を想定した「長時間滞在型」で、ローテーブルとそれを囲うベンチが設置。一画には、地域情報や災害情報を発信するデジタルサイネージも設置されています。

(長時間滞在型のパークレット)

(2’)三宮中央通りとフラワーロードの交差点の北西角付近のパークレットは、少人数の人や、主に子ども連れの買い物客などの利用を想定した「中時間滞在型」で、対面式のベンチが設置されています。

(中時間滞在型のパークレット)

(3)(3)三宮中央通りと生田筋との交差点の北東角付近のパークレットは、オフィスワーカーなどの個人利用者などを想定した「短時間滞在型」で、カウンターテーブルとスツールが設置されています。

(短時間滞在型のパークレット)

KOBEパークレットには「このパークレットは、どなたでもご自由にご利用いただけます」という掲示がされています。

(KOBEパークレット内の掲示)


2020年5月、道路法の改正により「歩行者利便増進道路」(通称:ほこみち)制度が制定。「道路を「通行」以外の目的で柔軟に利用できるようにする制度」で、「道路空間を活用する際に必要となる道路占用許可が柔軟に認められる」ようになります。この制度を用いると、「幅の広い歩道にオープンカフェやベンチなどを置いて、歩行者にとって便利でにぎわいあふれる空間を創り出す」ことができるというもの*3)。
2021年2月、大阪市の御堂筋、神戸市の三宮中央通り、姫路市の大手前通りが全国で初めて「ほこみち」に指定されました。現在、KOBEパークレットは「ほこみち」制度による取り組みの1つとして位置づけられています。

(KOBEパークレット内の掲示)

御堂筋パークレット

大阪市の御堂筋にもパークレットが設置されています。2017年11月から2018年5月まで、御堂筋完成80周年記念事業推進委員会(事務局:大阪市建設局道路部道路課)が、一般社団法人御堂筋まちづくりネットワークと連携し、淀屋橋odona前にパークレット「いちょうテラス淀屋橋」を設置しました*4)。
その後、2019年8月から2020年1月には、大阪市建設局が、、一般社団法人御堂筋まちづくりネットワークと連携し、本町ガーデンシティ前にパークレット「いちょうテラス本町」を設置しました。

「いちょうテラス淀屋橋」、「いちょうテラス本町」はいずれも、歩道部分を活用していますが、歩道部分だけでなく、緩速車線の一部を活用して設置されています。

社会実験をふまえ、2022年4月、「いちょうテラス淀屋橋」が設置されました。一般社団法人御堂筋まちづくりネットワークが、大阪市建設局との協定を締結し、「ほこみち」制度を用いて設置されたパークレットです*5)。

「いちょうテラス淀屋橋」には、テーブル席、カウンター席、向かい合って座れるベンチ、1人で座れるベンチなどが設置されています。

(いちょうテラス淀屋橋)

(歩道部分に加えて緩速車線の一部も活用)

2024年4月には、2基目のパークレットとして、三菱UFJ銀行大阪ビル本館前に「いちょうテラス高麗橋」が設置されています*6)。


■注