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グリーンベルト・ニューズ・レビュー:まちびらき当時から協同組合で発行され続けている地域新聞

アメリカ、メリーランド州のグリーンベルトには図書館の中に歴史資料室があり、グリーンベルトに関する資料が保管・公開されています。

グリーンベルトの歴史を語る時に欠かせないのが地域新聞。歴史資料室内のキャビネットには地域新聞「グリーンベルト・ニューズ・レビュー(Greenbelt News Review)」(創刊時の名前は「COOPERATOR」)のほぼ全てのバックナンバーが保管されています。

「グリーンベルト・ニューズ・レビュー」はまちびらきから約2ヶ月が経過した1937年11月24日に創刊されて以来、毎週一度も欠かすことなく発行されており(つまり、70年以上にわたって発行され続けていることになります)、現在、グリーンベルト市内の各家庭、1万戸に無料で配布されています。協同組合(Co-op)方式で運営されており、60名以上のボランティアスタッフが活動に参加しているとのこと。広告からの収入で、印刷費等がまかなわれています。

「グリーンベルト・ニューズ・レビュー」の編集長の女性に話を伺ったところ、地域新聞の意義について次のように話してくださいました。

私たちには、いつも歴史に興味をもつ人がスタッフにいます。私たちは記事を書くことで、新しくグリーンベルトにやってきた人々に、歴史を知ってもらうためにできる限りのことをやっています。・・・・・・。私たちは歴史に立ち返って、そして、こう言います。「かつてはこうだった、それが何故変わってしまったのか、私たちが必要としてることは何なのか」って。

私自身の家族、夫の家族を知ることは、コミュニティの歴史のことを学ぶことにもなります。・・・・・・。それは色々な意味で重要なことです。〔故人の〕思い出をもつこと、〔故人に関する〕記事を切り抜いて保管し、孫に見せることは、家族にとってはとても個人的なことですが、それはコミュニティにおけるその人の価値を認識することでもあります。たとえ、その人がたくさんのことをしなくても、ここにいるだけで、あなたの隣人であるだけで。ひょっとしたら、その人の子どもとあなたの子どもが一緒に野球をしたかもしれませんし、その人を教会で見たことのある人かもしれません。

元々、「グリーンベルト・ニューズ・レビュー」は、地域の人々にイベントの情報を伝えたり、意見交換のフォーラムを提供することが必要だと感じた人々が創刊したものです。創刊された時点では、グリーンベルトの歴史を記録することは意識されていなかったかもしれませんが、グリーンベルトの街とともに歩んできたこの地域新聞自体が、今では歴史です。

歴史資料室で保管・公開されている創刊号。1937年11月24日に発行されたものです。

紙媒体で保管されているだけではなく、デジタル化されたデータもあります。


  • 紙媒体の資料を電子化してアーカイブを作る時、将来も読み取れるファイル形式かどうかを考えると、どのようなファイル形式でスキャンし、保存するのが一番よいか迷いますが、「グリーンベルト・ニューズ・レビュー」はモノクロのTIFF形式で保存されていました。

(更新:2018年4月23日)