『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

グリーンベルトの図書館内の歴史資料室

アメリカ・メリーランド州のグリーンベルトには、街の歴史を展示するミュージアムがあることを紹介しましたが、グリーンベルトには他にも歴史にまつわる重要な場所があります。

図書館(郡立図書館のグリーンベルト分館・ Prince George’s County Memorial Library, Greenbelt Branch)内にあるタグウェル・ルーム(Tugwell Room)です。
部屋の名前は、農業経済学者であり、フランクリン・D・ルーズベルトの最初のブレーントラスト(ブレーン)の1人で、グリーンベルト・タウン計画に責任者として携わったレックスフォード・ガイ・タグウェル(Rexford Guy Tugwell, 1891〜1979)からとられています。

決して大きな部屋ではありませんが、グリーンベルトの歴史にまつわる資料が全て揃っています。図書館のウェブサイトには、タグウェル・ルームでは都市計画、社会学、建築、ニュー・ディール期のアメリカの歴史、消費者協同組合、グリーンベルト市について調査する研究者(自分の街について調べものをする小学生、学位論文を書く学生を含めたあらゆる研究者)のために資料を提供すると書かれています。

保管・公開されている資料は次の通り。

  • 500冊以上の本・定期刊行物
  • パンフレット・広告・その他のテキスト資料
  • ファイルキャビネット内の資料・資料一覧
  • 新聞記事の切り抜きの目録(オンライン・データベース)
  • ビデオテープ
  • マイクロフィルム
  • オーディオカセット(オーラル・ヒストリー)
  • 写真・アルバム・スクラップブック
  • 地図・青写真(1938年〜1990年代)
  • 記念品
  • ディスプレイ・ケース

*Prince George’s County Memorial Library System Websiteより

図書館内の部屋なので、もちろん書籍は充実しています。グリーンベルトにまつわる書籍も充実していますが、グリーンベルト以外のニュータウン・都市計画に関する書籍も。比較的最近の本もあるので、コレクションはどんどん拡張されていることがわかります。

グリーンベルトの地図。1964年6月の記載があります。

書籍、地図の他、写真、図面などの資料。1937年11月に創刊されて以来、毎週発行され続けている地域新聞「グリーンベルト・ニューズ・レビュー」(Greenbelt News Review)のバックナンバーもほぼ揃っています。初期に開発されたエリアの住宅地・住宅を所有・運営する協同組合(GHI=Greenbelt Homes, Inc.)の年次報告書や、ミュージアムの設立経緯にまつわる資料などもありました。


図書館は、ミュージアムから歩いて1〜2分ほどのところにあります。ミュージアムが幅広い来訪者を受け入れたり、街の歴史を積極的に発信しているのに対して、タグウェル・ルームは街の歴史を専門的に調べたい人に対して開かれた場所です。

オートロックで鍵がかかるようになっていて、入室する際にはIDカードをカウンターに預ける必要がありますが、利用料は無料。海外からの訪問者であっても、事前のアポイント無しで自由に入ることができます。

図書館の開館時間は以下の通り。図書館が開いている時間帯であれば、いつでも入室が可能で、夜の9時まで開館している日もあります(2011年6月現在)。

  • 月曜:1 pm – 9 pm
  • 火曜:1 pm – 9 pm
  • 水曜:10 am – 6 pm
  • 木曜:10 am – 6 pm
  • 金曜:10 am – 6 pm
  • 土曜:10 am – 5 pm
  • 日曜:Close

貴重な資料がきちんと保管され、しかも、誰に対してもオープンになっているというのは、当たり前なのかもしれません。でも、当たり前のことが、当たり前のように実現されていることは、すごいことではないかと思います。

(更新:2018年5月5日)