『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

アートが身近にある暮らし@アメリカの郊外住宅地:グリーンベルト

アメリカ・ワシントンDC郊外のグリーンベルトは、ニューディール政策によって作られた住宅地で、まちびらきは1937年。
グリーンベルトのコミュニティ・センターは、建物自体が芸術作品だと言っても過言ではありませんが、この建物は多様な活動が行われているという意味でも興味深い場所です。


この建物は、まちびらきの年、1937年に建てられたもので、かつては小学校でした。小学校が移転することになったため、コミュニティ・センターとして生まれ変わりました。
建物内には地域の様々なグループの活動拠点・活動場所となっており、グリーンベルト・ミュージアム(Greenbelt Museum)のオフィス、地域新聞(Greenbelt News Review)のオフィス、アーティストのスタジオ、保育園まであります。

ミュージアムのオフィス前の掲示板。ニューズレターやお知らせが掲示されています。

その日に開催されるプログラムや集まりは廊下に置かれた掲示板で案内されています。

以下は2008年9月22日の掲示板。この日に開催されるのはエアロビクス、ポーカー、ジャズ、コンサート・バンド、フィルム写真、バスケットボールなど、様々なプログラムや集まりがあることが伺えます。

Sept 22, 2008
9:00〜9:45  Holy Cross Sr.Exercise (Room 10)
9:30〜10:45  Fit ‘N’ Fun Aerobics (Room 106)
11:30〜1:30  Food & Friendship (Room 105)
2:00〜5:00  Poker (Room 109)
3:30〜4:00  Creative Movement (Age 3-4) (Room 10)
4:00〜4:45  Creative Movement (Age 4-5) (Room 10)
5:00〜6:00  Jazz III – Ages 7+ (Room 10)
6:00〜7:15  Jazz III – Ages 11+ (Room 10)
6:30〜8:30  Jazzercize (Room 106)
7:00〜9:30  Ceramic Art w/out Wheel (Room 304)
7:00〜10:00  Greenbelt Concert Band (Room 201)
7:15〜9:30  Basic B+W Film Photography (Room 116)
7:30〜8:30  Beg. Waltz/Paso Doble (Room 10)
7:30〜10:00  Greenbelt Writers Group (Room 111)
8:30〜9:30  Int. Nolero/Cha Cha (Room 10)
8:30〜10:00  George-Basketball (Room 106)

大きなイベントが開かれることもあります。写真は体育館で開かれていたクリスマスのクラフトフェアーの様子。

コミュニティ・センターはアートの場でもあり、最上階はアーティスト・イン・レジデンス(artist-in-residence)のためのスタジオになっています。

アーティスト・イン・レジデンス
アーティストがある地域に一定期間滞在し、地元での生活を通じて創作・研究活動を行うこと。レジデンシィ。創造活動の刺激となるような新しい創作環境をアーティストに提供することが目的であったり、地域社会とアーティストとの交流で地域活性化を目指したりなど、いろいろな展開がある。欧米では60年代ごろから始まり、滞在先は”地域”に限らず、学校や美術館など”機関”の場合もある。
*「メセナ用語集」より。

グリーンベルトでは、毎月第一日曜日はArtful Afternoon(アートフル・アフタヌーン)というプログラムが開かれ、街中で色々なアートにまつわるイベント・ワークショップが開かれますが、その日、このスタジオを開放するアーティストもいます。


グリーンベルトからは色々なことに気づかされます。その1つが、アートや音楽との、アーティストやミュージシャンとの距離の近さ。

コミュニティ・センターに限らず、ニューディール・カフェ(New Deal Café)の店内にもアーティストの作品が展示されており、2ヶ月に一回展示替えが行われます。Artful Afternoonn(アートフル・アフタヌーン)にあわせて、アーティストによるレセプションも開催。レセプションでは音楽のライブも行われます。

美術館に行ったり、ライブハウスやコンサートホールに行ったりせずとも、肩肘張らずに、日々の暮らしの場でアートや音楽に触れることができる、アーティストやミュージシャン(もちろん、プロのアーティストやミュージシャンもいます)と話をすることもできる。アートや音楽が暮らしに溶け込むというのは、こういうことを言うのだろうなと思います。

(更新:2020年3月9日)