『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

居場所ハウスにおける地域課題解決のためのワークショップに向けて

今月末、「居場所ハウス」にて地域の課題を共有し、それを解決するための手がかりを見出すためのワークショップを開催します。日建設計ボランティア部「逃げ地図」メンバーとIbasho Japanのメンバーが開催してきたもので、今月末のワークショップで4回目となります。

以前ご紹介したように、今回のワークショップのテーマはモビリティ(移動すること)。
3回のワークショップであげられた内容を整理すると、町内には店舗が少ないので車がないと不便、119番に電話してから救急車で病院に到着するまで1時間はかかる、道路に歩道がついておらず危険、照明が少なく夜になると道が暗いといった現状、今は車を運転しているが、車を運転できなくなったら困るという将来の不安など、モビリティ(移動すること)が大船渡市末崎町において切実な課題であることが浮かびあがってきました。
モビリティ(移動すること)は切実な課題ですが、これを解決しようとすると、行政など大きなところに陳情するか、個人・家族で抱え込むかという両極端な考えになりがち。例えば、店舗を誘致して欲しい、町内に消防車を配備して欲しい、道路に歩道や照明を付けて欲しいといったように陳情するか、車が運転できなくなったら我慢する、家族に送ってもらうなど、個人・家族として解決するか。

今回のワークショップでは、モビリティ(移動すること)の課題に向き合うに際して、両者の間にある様々な可能性を考えるための機会としたいと思います。
例えば、地域の人々が集まってできることはあるか? 公民館や自治会で取り組めることはあるか? 「居場所ハウス」のような地域の場所で取り組めることはあるか? あるいは、地域に根ざした小さなビジネスとして取り組めることはあるか? などですが、事例紹介をまじえて、こうした可能性について考えるための機会にしたいと考えています。これも以前ご紹介したように、ポイントは「移動することはコストではなく、価値を生み出すリソースである」という価値観の転換です。

日建設計ボランティア部「逃げ地図」メンバーとIbasho Japanのメンバーの思いは、地域の方々がモビリティ(移動すること)を自分たちが具体的に動くことで解決し得る課題として認識してもらうこと。
しかし地域外の者が、地域の方々に対してこのような思いを抱くことは、余計なお世話ではないかという思いが頭をよぎることもあります。だからこそ、地域外の者は、自分たちの活動が余計なお世話である(と見なされる)可能性があること、地域の方々に一方的に思いを伝えないこと、これを自覚していおかねばならないのだと思います。けれども、伝えるべき価値観は淡々と伝えていくこと。

東日本大震災から5年。東北に対する金銭的な支援、人的な支援は徐々に減っていくと思われます。そうした状況にあって、東北の地域がと、地域の外部との好ましい関係とは?
地域外の者が余計なお世話(だと見なされること)をすることと、地域の人々が外部からの支援に依存することを乗り越える関係を築いていくことができればと考えています。

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*写真は2015年12月19日に開催した3回目のワークショップの様子。