2016年11月19日(土)、13時頃から「居場所ハウス」にて末崎町の交通を考える集まりを開催します。
日建設計ボランティア部とIbasho Japanでは、「居場所ハウス」において、末崎町の方々と暮らしの不安、末崎町が抱える課題などについて意見交換を重ねてきました。そうした意見交換を重ねるなかで浮かび上がってきたのが移動することにまつわる課題。
末崎町は、人口約4,300人と大船渡市内の10町のうち4番目に人口が多い町(2015年9月末現在)であるにも関わらず、店舗、飲食店、医療施設などが少なく、碁石方面に向かうバスも1日数本と限られているため、現状では暮らしにおいて自家用車が不可欠。しかし、いずれみな歳を重ね、自家用車を手放さなければならなくなる。その時、どうやって暮らしていけばいいのか… この明るくない将来像を直視するのはなかなか難しいですが、地域で少しでも豊かな暮らしを続けるためには、今から少しずつ手を打っていくしかない。
11月19日(土)の集まりではそのための意見交換、情報共有をしたり、具体的に動き始めるための手がかりを見つけたりすることを目的とし、次の3つの内容を考えています。
- ①交通に関する先進事例の紹介
自家用車や、従来の公共交通機関に頼ることができなくなった地域で取り組まれている有償送迎サービスなど先進事例を紹介します。また、末崎町での実現可能性などについて意見交換します。 - ②BRTの意味・可能性について意見交換
JR大船渡線の線路を活用し、震災後、BRTの運行が始まりました。自家用車に乗る人はほとんど利用したことがないとのことですが、1時間に1〜2本が運行しており自家用車に乗らない人の日常の脚として、通学手段として十分機能しています。BRT大船渡線は今年、グッドデザイン金賞を受賞。今後の末崎町の交通を考える上で、キーとなる公共交通の1つであることは間違いありません。そこで、既に地域の資源としてあるBRTがもつ意味、可能性について意見交換を行います。 - ③歩くことの意味を体験する
末崎町の交通を考える上では、①②のような交通システムという大きな話をするだけでは十分ではないと考えています。いくら便利な交通システムが実現されたとしても、自家用車のように自宅から目的地までドアtoドアで移動することは不可能。それは不便だと言っていれば、自家用車に乗れなくなった時にどうしようもない現実に直面するだけ。これを乗り越えるためには、歩いていて気持ちのよい道を整えていく、歩くことの価値を見直す、自家用車でドアtoドアで移動することによって失われるものを考えるなど、「移動すること」についての固定観念を少しずつ変えていく必要がありそうです。しかし、それは一度に実現することはできません。そこで、この日の集まりでは実際に「居場所ハウス」近辺を歩くという体験をみなで共有することによって、歩くことの意味について意見交換を行います。
日建設計ボランティア部とIbasho Japanでは以上のような内容を考えていますが、いくつか補足があります。
末崎町で交通に関する何らかの取り組みを行うことができればと考えていますが、「居場所ハウス」が主体となって行うことが決まっているわけではありません。そして現実的に、「居場所ハウス」だけで取り組むのではなく、広く末崎町として取り組むことが必要です。そこで、11月19日(土)の集まりには「居場所ハウス」に普段来られている方に限らず、末崎町の多くの方にお越しいただければと考えています。
もう1点は、末崎町の交通を考えるためには、町外の団体がサービスを提供し、町民はそのお客さんになるということでは根本的な問題の解決にはならないということです。それではお金が末崎町外に流出してしまいますし、(末崎町に思い入れのない団体であれば)採算がとれなくなった段階でサービスが打ち切られてしまう可能性が大きい。それでは、末崎町が本当に困った時には使えないサービスとなってしまいます。末崎町の方々が、本当に将来の末崎町のためになる交通のあり方を実現するためには、一見すると遠回りでも地道な取り組みが必要だと考えています。11月19日(土)の集まりにぜひご参加ください。