『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

居場所ハウスで地域の暮らしの現状と課題を共有するためのワークショップを開催

2015年10月17日(土)、「居場所ハウス」で地域の暮らしの現状と課題を共有するためのマップを使ったワークショップを開催しました。ワークショップは日建設計ボランティア部とNPO法人Ibasho Japanの共同で実施したもので、2015年6月27日(土)につぐ2回目のワークショップとなります。

6月に開催したワークショップでは、日建設計ボランティア部が各地で行っている「逃げ地図」(避難地形時間地図)作りを実施。
ワークショップの参加者からは、「逃げ地図」作りからもう一歩進んで、1人暮らしの高齢者、車の乗れない高齢者などの暮らしの支援につながるような地図は作れないだろうかという話がありました。また、特に高台移転によって住まいが変化しているため、誰がどこに住んでいるかを地域で把握しておくことが大切だという話もありました。

これを受け、この日のワークショップでは地図を見ながら「居場所ハウス」周辺の暮らしの現状と、どのような課題があるかを出し合いました。
ワークショップを始めようとした時、小学校6年生の女の子3人がアイスクリームを買いにやって来ました。大人が声をかけたので、3人の女の子もワークショップに参加することに。大人の2グループに、女の子の1グループ、合わせて3つのグループに分かれてもらい、地図を見ながら暮らしの現状と課題を順番にあげていってもらいました。意見を出し終えた後、グループごとに発表してもらいました。

「居場所ハウス」周辺地域の暮らしの現状、課題として次のような意見が出されました。

歩行者の安全性

  • 末崎町内の道には歩道がほとんどない。
  • 末崎小学校前は三叉路になっていて危険。
  • 夜道が暗い。末崎中学校前から「居場所ハウス」を通る道は中学生の通学路になっているが、街灯が50m間隔で暗い。しかし、末崎町内では街灯がついている方である。
  • 11戸の災害公営住宅の前に公園があるが、遊んでいる子どもが道路に飛び出す可能性があるので信号機があった方がよい。
  • 最近、「居場所ハウス」から坂を下っていった所で、側溝のグレーチング部分に杖が挟まり、高齢の女性が転倒するという事故があった。

買い物をする場所

  • 「居場所ハウス」のある付近には高台移転で人口が増えてきたので、スーパーマーケットが欲しい。しかし、現実的にはスーパーマーケットが出店するのは難しいと思う。
  • 仮設住宅にはスーパーマーケットの送迎バスが巡回している。
  • 町外から魚屋が移動販売に来ていて、「居場所ハウス」の敷地の下にも車をとめている。決まって買い物をしている人がいるようだ。

公共交通

  • 震災後、電車がBRTになったことで本数が増えて便利になった。例えば、お酒を飲みに行く時などにはBRTを利用している。
  • 現在、どのくらいの人がBRTに乗っているのかわからないが、利用する人がいなければ運行本数が減らされる可能性がある。

子どもの遊び場

  • 震災前、大田団地には第一公園・第二公園という大きな公園があったが、震災でなくなってしまった。子どもが遊べる場所が必要だが、建物を建てるとお金もかかるので、公園が必要。

災害公営住宅

  • 災害公営住宅に入る人は高齢の人が多い。
  • 災害公営住宅は鉄の扉を閉めると中の様子を伺うことができない。これまでの住宅であれば中の様子も伺えるし、日常的に挨拶などの関わりもあるが、災害公営住宅に移転するとそういうわけにはいかない。
  • 「居場所ハウス」の朝市に来てくれる人とは関わることができるが、家の外に出ない人とは関わりの接点がない。

居場所ハウスの運営

  • 多世代の人が来れるようにイベントなどを工夫しているが、これ以上何かをするのは難しいかもしれない。だから、外部の人からのアドバイスもいただければと思う。
  • 食堂の運営を始めたことで、今まで来なかった人も来るようになった。
  • 発表が終わった後、女の子に「居場所ハウス」でどんなことをやって欲しいかと聞いたところ、ケーキ作りをしたいという返事。親子で一緒に参加するのではなく、何年生以上は親が来なくても参加できるようにして欲しいと話していました。


    ワークショップが終わった後、日建設計ボランティア部とNPO法人Ibasho Japanのメンバーで今日の振り返りを行いました。
    今日のワークショップでは、自家用車に依存した暮らしになっていることが改めて浮かび上がってきました。また、歩道がない、夜道が暗いなど、人が安全に歩ける地域になっていないこともわかりました。
    今後のワークショップの進め方については、主催者側が完成したマップを作るのではなく、住民と一緒にマップ作りを行うことで地域の課題を明らかにすることを確認。次回のワークショップでは末崎町の暮らしの現状をマップとして表現してはどうか。具体的には、末崎町の公共交通であるBRT駅、バス停からの時間距離をマップに表現すること、高齢者の単身世帯、夫婦世帯が住んでいる家を示すなどの作業を行うことで、暮らしの現状を明確にした上で、それを解決するにはどうすればよいかのアイディアを出し合うのはどうかという話をしました。次回のワークショップは12月に開催予定です。


    P.S.ワークショップ後に女の子たちから出された意見をうけ、2015年12月20日(日)にクリスマスケーキ作り教室を開催しました。

    (更新:2017年4月25日)