『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

居場所ハウスで逃げ地図作りのワークショップを開催

2015年6月27日(土)、「居場所ハウス」にて逃げ地図作りのワークショップを開催しました。主催は日建設計ボランティア部+非営利組織Ibasho。

逃げ地図(避難地形時間地図)とは、津波が到達しない安全な場所まで、高齢者が歩いて何分で避難できるかを可視化するもの。高齢者の歩行速度を43m/分とし、安全な場所まで
・3分で歩ける範囲(129m)の道路を緑
・6分で歩ける範囲(258m)の道路を黄緑
・9分かかる範囲の道路(387m)をオレンジ
で塗り分けることによって、避難時間がぱっと見て把握できるように作成した地図です
*詳細は逃げ地図のウェブサイトを参照

この日は日建設計ボランティア部メンバー、6人にお越しいただきました。
13:00からワークショップがスタート。最初に逃げ地図の紹介と作り方の説明を聞いた後、逃げ地図作りが始まりました。ワークショップでは「居場所ハウス」を中心とする細浦、小細浦、大田団地の範囲を対象として、避難時に①橋を渡れる場合、②橋が渡れない場合、の2種類の地図を作ります。
参加された地域の方たちは、説明を聞きながら緑、黄緑、オレンジと道路に色を塗っていきます。地図作りをしながら、地図には書かれていないけどここは人が歩ける階段がある、「舗装した道路は水が早いので、逃げる時は舗装していないところを逃げろと言われた」などの話が出てきました。

ワークショップでは、途中から明治大学のボランティアの学生13人も参加。市の企画調整課椿の主催でツバキの植生調査をする予定が、雨天のため調査できなくなったためワークショップの見学に来られたとのこと。学生の方にも2グループに分かれて、別途、逃げ地図を作っていただきました。

1時間少しで逃げ地図が完成。完成した逃げ地図を囲んで意見交換を行いました。
末崎町は典型的なリアス式海岸のため、完成した逃げ地図のほとんどの部分が緑か黄緑で塗られていました。これを見ながら、高齢者の足でも6分で避難できるエリアが多いことをみなで確認しました。

参加者からは、震災後、市でも何回も防災マップを作ったし、学校でも防災マップを作って避難場所を子どもに伝えている、という指摘がありました。日建設計ボランティア部メンバーからは、逃げ地図は、地図を完成させること自体が目的ではなく、地図作りを通して地域は良くなるかを話し合うことが大切だという話がありました。
参加者の中には「マップ作りって、無駄なことするかと思ったけど良かった」という方、やってるうちにここはどうだったかなぁと振り返れたという話をした方もいて、完成した地図を見るのではなく、実際に地図作りに参加することの意義が伝わったと思います。

逃げ地図の今後の可能性として次のような意見も出されました。

  • 防潮堤や新たな道の建設、高台移転など、今は地域の状況がどんどん変化している。このような変化に応じて、避難時間などがどう変わるかを可視化することにも意味があるのではないか
  • 津波の際は車で逃げるより、徒歩で逃げる地域。車道だけでなく人が通れる道を地図に取り入れると、地域の人々にとってより避難時の手がかりになる
    →そのためには、一般の地図には載っていないような道の情報を地域の人に教えてもらいながら作るという、より地域の方とのコラボレーションが必要になります
  • 逃げ地図からもう一歩進んで、1人暮らしの高齢者、車の乗れない高齢者などの暮らしの支援につながるような地図は作れないだろうか。(特に高台移転の後)誰がどこに住んでいるのかを地域で把握しておくことは大切

今回のワークショップを主催した日建設計ボランティア部+非営利組織Ibashoでは、地図作りにどのような可能性があるかを議論していく予定です。地図作りを通して、少しでも地域をより良くするお手伝いができればと考えています。

なお、この日のワークショップでは、公民館にカマドを設置して、高齢の女性からご飯の炊き方を教わったという震災直後の貴重な話も聞かせていただくことができました。「元気なばっばを呼んで、カマドでご飯をの炊き方を教えられた。釜でご飯炊く時はただ火をくべればいいもんでないんだって怒られたりと、いい雰囲気もできた」。こうした暮らしの技術・知恵を伝えていくことも大切なことです。

150627-132010 150627-132545 150627-133311 150627-133927