2017年1月12日(木)、「居場所ハウス」の今後の運営の参考とするため、「居場所ハウス」の運営に関わるメンバー15人で、同じく被災地で活動されている団体を訪問させていただきました。
We Are One北上(宮城県石巻市北上町)の「こどもハウス」「復興まちづくり情報交流館 北上館」
最初に訪問したのは、石巻市北上町の一般社団法人「We Are One北上」の活動拠点である「こどもハウス」と、委託運営する「復興まちづくり情報交流館 北上館」。
「こどもハウス」はアメリカの非営利組織Architecture for Humanity(米国のArchitecture for Humanity、日本の一般社団法人アーキテクチャー・フォー・ヒューマニティ・ジャパンは2014年12月に活動停止。その後、日本において一般社団法人まきビズ設立)の寄付で2013年に建設。震災で失われた子ども会に代わって、子どものための居場所になっており子どもたちが訪れて宿題をしたり、子どもを遠足に連れて行ったりする活動を行ってきたとのこと。日用雑貨の販売、お弁当の調理・販売も行っており、北上町内であれば1食からでもお弁当の配達されています。
「復興まちづくり情報交流館 北上館」は北上市によって2016年に建設された建物で、「こどもハウス」の側にあります。東日本大震災の被災状況や復興の様子を地域住民に伝えることが目的とされており、室内には北上町の地図、東日本大震災で被災した集落の被災前の航空写真など多様な情報が展示されていました。
天ぷら、蒸しホヤ、ホタテのお吸い物、ところてん、茶碗蒸し、塩ウニご飯など地域の方の手作りの郷土料理(「とりまわし料理」という表現を使われていました)をいただいた後、代表の女性の方から活動について話を伺いました。
「We Are One北上」は東日本大震災の後、町にお店が一軒もなくなったから、自分たちでお店をやろうというところから活動が始められました。2012年に仮設店舗を始めた時は3人でしたが、現在、30〜40代のメンバー、30人ほどが活動されています。
仮設店舗をオープンした後、被災者に高台移転についてヒアリングを行ったり、低平地利用のための住民とのワークショップを行ったり、2014年には復興支援から地域創生へシフトするための「インボルブ北上」という団体を立ち上げたりと活動の幅を広げながら、一般社団法人に。2016年からは上に紹介した「復興まちづくり情報交流館 北上館」の委託運営をスタート。
印象に残っているのは、「We Are One北上」は最初は任意団体でありきちんとした活動計画があったわけではなく、必要なことを追いかけ、必要な時にグループを1つ1つ作り上げてきたら、今のような姿になったという話です。
地域に根ざした活動を続けてこられた方だからこその言葉だと思いました。
もう1つ印象に残ったのは、「あたりまえの暮らしがふつうにある地域」ということを昨年ぐらいから考えるようになったという話。たとえ自分たちが高齢化しても、人口が減っても、自分たちが安心して住めることが必要ではないか。そのような地域を実現するために必要なことをこれから見つけていきたいし、それをボランティアではなく仕事として取り組めるような事業化を行いたいと話されていました。
レスキューストックヤード(宮城県七ヶ浜町)の「きずなハウス」
次に訪問したのは、認定NPO法人「レスキューストックヤード」七ヶ浜事務局(法人の本部は愛知県)が運営する「きずなハウス」。
「きずなハウス」は2014年12月に仮設商店街「七の市商店街」の空き店舗を活用して開かれたレスキューストックヤードの事務所・兼・コミュニティ・スペース。仮設商店街の閉鎖に伴い、2015年12月から七ヶ浜町老人福祉センター内に移転しています。駄菓子や100円コーヒー、そして、「ボーちゃん」というキャラクターの型焼きなどを販売したり、図書を置いたり、七ヶ浜町に関する情報の掲示などが行われています。
七ヶ浜事務局のスタッフの方に話を聞いたところ、「レスキューストックヤード」では震災から5年を期に活動を停止し、それに伴い「きずなハウス」も閉鎖する計画だったが、住民から町長へ活動継続の嘆願書が出されたことを受けて、公共施設である現在の場所に移転し継続することなったという話でした。通常、公共施設では駄菓子などの販売は禁止されているが、「きずなハウス」では町民の嘆願書を受けたものであるため、場所の継続のために公共施設での販売が認められているとのこと。
印象に残ったのは、人は場所の雰囲気で来るという話。美味しいものとか、安いものがあるから来るわけではなく、居心地が良いから来る。そして、居心地を作ってるのは人。だから、居心地のいい場所を作るために(子どもたちに)いいことと、悪いことは伝えているという話でした。「きずなハウス」はコンビニとは違うので、自分のことを店員と呼ばれるとちょっと違うかなと思うとのこと。元々「レスキューストックヤード」は災害救援、日常防災を中心とする活動を行う団体であり、まちづくりのノウハウが十分にあったわけではなかったが、居心地がよく、誰もが気兼ねなく寄れる場所にしようと手探りでやってきたら、「きずなハウス」は月に1,300人近くが来てくれるようになったという話でした。来訪者の半分は子どものようで、訪れた時も何人かの子どもたちが集まって勉強をしていました。
子どもの訪問に関して、「居場所ハウス」で子どもの見守りグループ「わらしっ子見守り広場」のメンバーは、子どもにはどのように接しているのか、事故があった時の対応はなどについて話を聞いていました。
「レスキューストックヤード」七ヶ浜事務局では、「きずなハウス」の運営に加えて、災害公営住宅に出向いてお茶会、食事会なども開催されています。
その際に意識していることは、被災者支援イベント、無料イベントということを前面に出してしまうと災害公営住宅の周囲に以前から住んでいる方が来にくくなるので、被災の有無に関わらず来れるような会にすることと、「レスキューストックヤード」では住民が主役になる活動の裏方になるという話しでした。
また、地方の沿岸部でどう暮らしていくかを、そのためにどんな町にしたいかを、住民に話を聞いていきたいということも話されていました。
なお、現在、七ヶ浜町では著名な建築家が関わり「みんなの家」が建設されており、「きずなハウス」は「みんなの家」に移転して活動が継続されると伺いました。
「We Are One北上」、「レスキューストックヤード」七ヶ浜事務局は活動している地域も、体制も、活動内容も違いますが、話を伺っていると共通点があることに気づきました。そして、これは地域での活動をする上で非常に重要なことだと思わされました。
最初は任意団体でありきちんとした活動計画があったわけではなく、必要なことを追いかけ、必要な時にグループを1つ1つ作り上げてきたら、今のような姿になったという「We Are One北上」。誰もが気兼ねなく寄れる場所にしようと手探りでやってきたら、月に1,300人近くが来てくれるようになったという「きずなハウス」。最初に計画ありきではなく、地域に根ざし、地域の人々に応えながら活動を展開されてきたという共通点があります。
もう1つは、地域での暮らしについての問いかけがなされていること。「あたりまえの暮らしがふつうにある地域」という「We Are One北上」の方の言葉。地方の沿岸部でどう暮らしていくかを、そのためにどんな町にしたいかを、住民に話を聞いていきたいという「レスキューストックヤード」の方の言葉。表現は違いますが、地域で豊かに暮らすとは何かという問いかけがなされています。こうした問いかけは、今後、「居場所ハウス」の活動を展開していく上でも大きなポイントになってくることだと考えています。
大勢の訪問でご迷惑をおかけしましたが、伺った話、見せていただいたことは、今後の「居場所ハウス」の運営にいかしていきたいと考えています。