『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

思いがけず顔見知りになること

「居場所ハウス」のある大船渡市末崎町は、何代にもわたって住んでる方も多く、「居場所ハウス」では「私は○○さんと親戚」、「○○さんと○○さんは兄弟」という話をよく耳にします。けれども、当然ですが、みながみな顔見知りというわけではありません。
生まれたのは末崎町でも、仕事のため何十年も別の土地で暮らしていて、退職してから末崎町に戻って来た、という方もいます。そういう方が、「居場所ハウス」で居合わせた人と、少しずつ顔見知りになっていくことはよくあります。

また、

  • 「○○さんの息子? どっかで見たことあると思った」
  • 「息子が○○君と友達で」「あぁ、○○君のお母さん。どっかで見たことあると思った」
  • 「○○さんだよね。どこか面影あるね。○○さんの同級生でしょ」

という会話のように、全くの他人ではなく、家族や知人を通して知っていた人と、「居場所ハウス」で思いがけず顔を合わせる、という出会い方もあります。

誰かに出会うことを目的とせずとも、「居場所ハウス」で過ごしていることの結果として、偶然そこに居合わせた人と顔見知りになるという、思いがけない出会い。このような思いがけない出会いの繰り返しによって、地域の人との(親密とは言い切れないかも知れませんが)広がりのある人間関係が築かれていく。「居場所ハウス」という、地域の人々が出入りできる具体的な場所があるからこそ築かれていく関係です。震災など、何かあった時、まず一緒に行動するのは同じ地域の住む人。このような、広がりのある顔見知りという関係が築かれていることが、災害からの立ち直りが「強い地域」と言えるのかも知れません。