『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

認知症予防でなく認知症でも暮らしやすい地域の実現@居場所ハウスでのミニ講座より

2018年7月13日(土)、「居場所ハウス」にて認知症についてのミニ講座が開催されました。2018年度2回目の「困りごと介護相談会」として開催したミニ講座です。

認知症は身近で、また、関心を持つ方の多いテーマで、この日のミニ講座には「居場所ハウス」に日常的にやって来られる方、認知症の家族をお持ちの方など20人の参加がありました。講師は末崎町にお住いのKさんです。

Kさんからは認知症とはどのような病気かという説明と、認知症予防のためには30代、40代と若い頃から塩分を摂り過ぎない、お酒を飲み過ぎないなどに気をつける必要があるという話がありました。

ただし、Kさんからは「認知症予防っていうと、認知症にならないようにすることが考えられるけれど、それはちょっと違うと思う。認知症になっても、それを受け入れ、周りの人が理解し合えることが大事」という話があり、「老いを受け入れ乗り越えて、くよくよしない」という言葉を紹介していただきました。

周りの人も含めて、認知症を受け入れ、理解し合うとはどういうことか。Kさんは次のような話をしてくださいました。

  • 認知症の人には「どこに行ってきたの?」と質問するのではなく、「○○に行ってきたの? △△に行ってきたの?」とYesかNoで応えることのできる質問をする。そうすると、認知症の人も応えやすい。どこに行ったかについて正確な情報を聞き出すよりも、どこかに行ってきたかを生き生きと話をすることの方が大切だから。
  • 久しぶりに会った人に対して、「自分が誰かわかる?」と聞くと、思い出せない場合に負担をかける。「○○だけど久しぶり」と自分から名乗るのが親切な聞き方。
  • お茶の先生、裁縫の先生だった人が認知症になった時に、昔得意だったからとお茶をさせたり、裁縫をさせたりするのが良いとは限らない。昔できてたことができなくなるのは本人にとっても辛いこと。昔できていたことを無理にするより、今、楽しいことをするのがいい。

それぞれが少しずつ配慮することで、認知症になっても暮らしやすい地域が実現されるということだと思いました。

最後にKさんは、参加された方に、健康のために気をつけていることを質問していきました。
参加された方からは、散歩するようにしている、出かける時はなるべく1人でなく誰かと一緒に出かけるようにしている、草取りをしている、お酒を飲み過ぎないようにしている、会った人には笑顔で挨拶するようにしているなどの意見。また、昼間は家に1人でいるが「居場所ハウス」に来て皆の顔を見るのが健康につながると思ってる、と話された方もいました。

今日の認知症についてのミニ講座を聞いて、軽々しくは言えませんが、認知症の予防から、認知症でも暮らしやすい地域を作ることへと発想を変えることが大切、というのがメッセージだったと感じました。

もちろん、自身で認知症予防の努力をすることは大切ですし、家族内で介護することも大切。けれどいくら予防の努力をしていても認知症になってしまう可能性がある。また、家族内だけで介護を抱え込むのも限界がある。特に高齢化・人口減少が続く地方では、必ずしも全ての人が家族と一緒に暮らしているわけではないし、子どもが都会に出て高齢の夫婦だけで暮らしている人も多い。
認知症になっても暮らしやすい地域を実現するために、「居場所ハウス」がそのために何らかの役割を果たせたらと思います。