『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

大人たちの中で子どもたちが過ごす場所

「居場所ハウス」の来訪者は普段は高齢の世代が中心ですが、この週末はこどもたちもやって来て、大人たちの中で子どもたちが過ごしている光景が見られました。

2018年12月8日(土)、郷土食のかま餅・ゆべし作り講習会が行われました。ゆべしはきな粉のゆべしと、お正月ということで紅白の梅肉ゆべしの2種類です。講師は大船渡市日頃市町のSさん。「食の匠」で、「居場所ハウス」での毎月の朝市にもお蒸し、菓子類などを出品してくださっている方です。
参加者は定員を超える23人。このうち、4人は小学校6年生の女の子でした。

地域の大人たちが子どもたちのために何かをするのではなく、大人が子どもと一緒に郷土食作りを学ぶ光景が見られました。

2018年12月9日(日)は末崎中学校の男の子3人がやって来ました。健康体操が行われていた時間帯には、和室では健康体操に参加する大人、その隣でゲームをして遊ぶ中学生の男の子、さらにその奥ではノートパソコンで作業をしている大人が過ごす光景が見られました。帰り際、「居場所ハウス」のスタッフは、帰る時は挨拶を、と子どもたちに声をかけていました。

「居場所ハウス」という同じ場所に居合わせている地域の多世代の人々。大人と子どもが一緒の活動に参加したり、交流したりしたわけではありませんが、このように同じ場所に居合わせるが、地域にどのような人がいるのかを互いに認識することにつながり、結果として緩やかで、広がりのある関係を実現していくことになると思います。

通常、大人と子どもが一緒に過ごすと言うと、大人たちが子どもたちのために何かをしてあげたり、教えたりというように、関係が一方通行になりがち。けれども、この週末「居場所ハウス」で見られたのは、次のような光景です。
・地域の大人たちが子どもたちのために何かをするのではなく、大人が子どもと一緒に郷土食作りを学ぶ。
・地域の大人と子どもが何らかの活動に参加したり、交流したりするのではなく、同じ空間に居合わせる。

地域における大人と子どもの関係とはこうした多様なものであり、これは具体的な場所があるからこそ実現されるものだと考えています。