『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

Ibashoフィリピンの拠点と農園

2019年7月、Ibashoプロジェクトが行われているフィリピン・オルモック市のバゴング・ブハイ(Barangay Bagong Buhay)を訪問しました。先月のネパール訪問に続いて、今回の訪問にもUCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)のフェローのダンサー・コレオグラファー(振付師)と写真家の2人も同行されました。

Ibashoフィリピンでは2015年1月末からペットボトルのリサイクルをスタート。その後、農園、モバイル・カフェ、フィーディング・センターの改修など拠点がなくてもできる活動を少しずつ積み重ねてきました。
これら並行して拠点を実現する活動も進められ、2018年6月24日には拠点の建設に向けた地鎮祭が開催、2019年1月5日にはオープニング・セレモニーが開催されました。

訪問1日目となる2019年7月20日(土)はIbashoの拠点に集合。拠点を紹介してもらい、その後、農園を案内してもらいました。

拠点となる建物

Ibashoの拠点となる建物は、屋根付きのバスケットボール・コート(Covered Court)脇の空き地に建設されました。バランガイが所有する土地で、バランガイ・ホール(Barangay Hall)、チャペル、バスケットボール・コート、ヘルスセンターというバランガイの主要施設が集まる一画に立地しています。

この日、コートではバレーボールの試合が行われており、多くの若者が集まっていました。コートは子どもや若者の遊び場になったり、バランガイの様々なイベントが開かれたりと人々が集まる場所。Ibashoの拠点は非常に立地のよい場所に建設されています。

自己紹介をした後、拠点を紹介してもらいました。拠点は大きな部屋になっており、一画にトイレがあります。

拠点の建設はフィリピン軍・第802歩兵旅団が地域貢献として建設作業を担当しましたが、建設作業が行われている期間、作業に従事する兵士はバゴング・ブハイの住民の家に寝泊まりし、飲食を提供するというのが条件です。Ibashoフィリピンのメンバーは食事を届けたり、軽食・ジュースなどを差し入れしたりしてきました。男性メンバーの中には建設作業にほぼ毎日顔を出し、作業の監督をしたり、手伝ったりしている人もいたということです。
フィリピン軍・第802歩兵旅団の協力で躯体(床、壁、柱、梁、天井など)が完成した後、Ibashoフィリピンのメンバーは窓格子やシャッターを設置したり、扉にペンキを塗装したり、電気の配線をしたりと、自分たちで拠点を徐々に作りあげてきました。半屋外のキッチンはもうすぐ完成するとのこと。

作業に中心的に携わっている男性が紹介してくださる姿は、とても誇らしげに見えました。

農園

Ibashoフィリピンの農園は2つあります。1つは2015年5月から農作業が始められた農園。もう1つは2017年から農作業が始められた農園。いずれも、拠点から歩いて5分ほどのところにあります。

拠点を出た後、まず2015年5月から農作業が始められた農園に向かいました。一画には、2015年5〜6月にかけてメンバーが自分たちで建てた屋根付きの種苗圃(Nursely)があります。
最近は拠点の建設に注力していたため、農作業には十分に手が回っていないということでしたが、レモングラスや瓜科の野菜が大きく育っていました。以前小さかったパパイヤの木も大きくなっています。農園の周りにはバナナ、グアバなどの木があります。

もう1つの農園へ。こちらの農園の一画にも2017年9〜10月にメンバーが自分たちで建てた小屋があります。ちょうどキャッサバ、里芋のような野菜を収穫しているとのことでした。

農園ではメンバーの女性が収穫した野菜をどのように調理するかなどを楽しそうに話されていました。その様子を周りから眺めている女の子たち。

ワシントンDCのIbashoは、高齢者が介護を受けるだけの弱者とみなされるのでなく、何歳になっても知恵や経験をいかしながら地域で暮らし続けることができる社会の実現と、そのために「歳をとること」の既成の概念を変えていくことを目的とする活動を続けています。

高齢者が楽しそうに過ごしている姿を垣間見ることで、子どもたちが高齢者を見る目が少し変わるかもしれません。「歳をとること」の既成の概念を変えていくことは、こうした機会を少しずつ積み重ねることで実現されるのだと思います。