千里ニュータウン新千里東町の「ひがしまち街角広場」は、2001年9月30日のオープン以来、近隣センターの空き店舗を活用して、約19年にわたり住民ボランティアにより運営が継続されてきました。最初の半年間は豊中市の社会実験として補助を受け運営されていましたが、その後は補助を受けない「自主運営」が続けられてきました。
ここでは来訪者とスタッフの推移という観点から「ひがしまち街角広場」を見ていきたいと思います。詳細は以下の通りですが、オープンから年月が経過しても一定数の人が訪れ続けていること、それどころか、この数年は来訪者数が増加していることがわかります。
このように地域にとって重要な場所であり続けてきた「ひがしまち街角広場」ですが、近隣センターの再開発で空き店舗がなくなるため、早ければ2021年春頃、遅くとも2022年夏頃には運営を終了することが決まっています
(運営終了までの来訪者数はこちらをご覧ください)。
来訪者数の推移
「ひがしまち街角広場」は「みんなが何となくふらっと集まって喋れる、ゆっくり過ごせる場所」(初代代表の言葉)を目的として2001年9月30日にオープン。最初の半年の社会実験期間中は教室や展示、コンサート、フリーマーケットなどのプログラムが定期的に開かれていましたが、2002年4月に「自主運営」が始まってから次第にプログラムは行われなくなってきました。
来訪者数(1日の平均来訪者数)のグラフを見ると*1)、社会実験としてオープンした当初、移転前の2005年、そして、2017年以降の人数が多くなっていることがわかります。
社会実験としてオープンした2001年10〜11月は平均来訪者数は40〜45人と多くなっています。新しい場所ができたということで、様々な人への声かけが行われたと思われます。プログラムを目的として訪れた人、中には物珍しさで訪れた人がいたかもしれません。
しかし、その後、平均来訪者数は減少し、この後10年ほどは25〜35人の間を推移するようになります。
2002年4月、住民による「自主運営」が始まりました。「自主運営」が始まってから平均来訪者は徐々に増加し、2005年には45人を超える月が見られるようになりました。
(移転前の様子)
当初から活用していた空き店舗の契約が切れたのに伴い、2006年5月には同じ近隣センターの他の空き店舗に移転しました。
2006年に入ると、平均来訪者数は以前より減少し、この後10年ほどは25〜35人の間を推移するようになります。
(移転直後の様子)
「自主運営」が始まって以降、「ひがしまち街角広場」は補助金を一切受けることなく、家賃、水道光熱費、コーヒー豆代など全ての費用は主に飲物の100円の「お気持ち料」で賄ってきました。このことは、来訪者数が減少することは、運営費の不足という事態に直結することを意味します。実際、来訪者が減少していた時期には運営費をどう確保するかという議論がされています。
その現れが時間外の会場使用料。「ひがしまち街角広場」では運営が終了する16時以降と運休日は貸切利用が可能です。会場使用料は、オープン当初は「1回500円」とされていましたが、20011年5月から、「5人までは500円。6人以上は1人増えるごとにプラス100円」と変更(値上げ)されています*2)。その後、2017年10月25日からは人数に関わらず「2時間まで500円、2〜3時間:800円、3〜4時間:1,100円」とさらに変更(値上げ)された。会場使用料の変遷からは、来訪者数が減少しつつあった中で、いかに運営費を確保するかが考えられたかが現れています。
(会場使用料変更の案内)
「ひがしまち街角広場」は月〜土曜の週6日運営されてきました*3)。しかし、運営を担ってきたスタッフの高齢化などの理由で、スタッフの確保するのが難しくなったことから、2014年5月からは第4土曜が定休日とされています。
(第4土曜を定休日にすることの案内)
このように来訪者数が減少していた時期もありましたが、2017年に入ると来訪者は再び増加し始めており、平均来訪者数が50人を超える月も見られるようになりました。
なぜ最近、来訪者が増えているかの理由は検証する必要がありますが、住民が高齢化してきたからではないか、最近は(1人暮らしの)男性で来る人が増えてきたという話も聞いたことがあり、街の高齢化が進む中で歩いて行ける範囲にある場所がより必要とされている可能性があります。
1日の来訪者数の全期間の平均は約35.5人*4)。オープンからの延べ来訪者数は推計で約20万人となります。豊中市の2020年6月時点の推計人口が401,349人であることを考えると、豊中市民の半分が訪れた計算になります*5)。
スタッフ数の推移
このような「ひがしまち街角広場」の運営を担ってきたのが新千里東町の住民を中心とするボランティアのスタッフです。ほどんとの日は2〜3人のスタッフが担当しています。
社会実験としての運営が始まった2001年10月の1ヶ月間に、1回でもスタッフを担当したのは36人です。
当初は、スタッフの人数を確保するため、自治会連絡協議会、公民分館、校区福祉委員会、地域防犯協会の既存の地域団体ごとに担当日が割り振られていました。しかし、次第に地域団体に所属していない人が入りにくいという不都合が出てきたということです。
「例えば公民分館の日があったり、社協の日があったりするわけでしょ。そしたら、みなやっぱり裃着てるんでしょうね。自分はそうじゃないつもりでも、やっぱりそう見えるのか、気がついてしまう。団体同士の競争もあるんですよ。昨日きちっりしてはったから、うちの団体のときもちゃんとせないかんとかね。こうせないかんとか。あれ不思議、自然発生的にそうなるみたいです。何もそうしなくちゃいけませんとは言ってないんだけど、やっぱりそうなっていくのかな。」(初代代表の言葉)
そこで、以降は地域団体とは関係なく個人としてボランティアのスタッフになるように変更されました。現在のスタッフの中には、オープン当初に地域団体のメンバーとして運営に関わり、その後は個人としてスタッフを続けている人もいれば、地域団体とは無関係に個人としてスタッフになった人もいます。
スタッフには入れ替わりがありますが、15〜20人のスタッフが運営を担っていることがわかります。
■注
- 1)「ひがしまち街角広場」ではコーヒー、紅茶、ジュースなどを100円の「お気持ち料」で提供している。来訪者数は1日の「お気持ち料」の合計を100で割って計算したもの。そのため、飲物を2杯注文した人は2人とカウントしている。また、飲物を注文しない人(水を飲みに立ち寄る子どもなど)、夕方や運休日に会場を利用した人は来訪者にカウントしていない。また、4月の竹林整備(竹の子祭り)、10月の周年記念行事の大きな行事の参加者数、8月の夏祭り、10〜11月のキャンドルロードなど地域の行事にあわせてオープンした時の来訪者数はカウントしていない。
- 2)会場使用料の変更は、2011年5月21日に開かれた「ひがしまち街角広場」のスタッフ会議で提案された。なお、2011年5月には代表の交代など、「ひがしまち街角広場」の運営体制も大きく変化した時期である。
- 3)オープンから2002年1月末までは週7日運営していた。また、2020年3月2日〜5月末までは新型コロナウイルス感染症の感染防止のために臨時休業をしており、2020年6月に運営されてからは週5日の運営となっている。
- 4)2001年10月〜2019年4月(ただし、2009年6月〜2011年7月はデータ無し)の期間の来訪者数の平均。
- 5)オープンから2020年7月までに220ヶ月間運営されてきた。ここでは、1ヶ月25日運営したと仮定し、次のように延べ来訪者数を推計した。33.5人×25日×220ヶ月=195,250人。
(更新:2022年9月19日)