『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

千里ニュータウン再開発の光景@府営千里桃山台住宅(2020年9月)

現在、府営千里桃山台住宅の再開発が進められています。

府営千里桃山台住宅31棟、613戸からなる府営住宅で、桃山台近隣センターを挟んで敷地が2つに分かれています。現在、再開発が進められているのは一番東に位置するB1〜B7棟。このうち、B1〜B5棟はポイント型住棟として特徴的な形態をした住棟でした。

府営千里桃山台住宅の住棟は特徴的な「囲み型配置」がなされています。「コ」の字を連続させるように(「己」の字を連続させるように)住棟を配置。そして、敷地の片側に歩行者専用道路、反対側に車道が通されており、歩行者専用道路側に向かって開いた「コ」の字の中の空間を公園に、車道に向かって開いた「コ」の字の中の空間を駐車場にすることが基本とされており、これによって歩車分離を実現。さらに、歩行者専用道路の先には近隣センター、学校、駅、公園などが配置されています。こうした工夫はラドバーン方式を集合住宅に適用したものだと見なすことができます。

住棟を「コ」の字を作るように配置する「囲み型配置」はコミュニティを形成が考えられたためですが、それゆえ、一部の住棟では西に面した部屋ができてしまいます。そこでこの住棟の西側には緑色の日除けが設置されています。緑色の日除けは「囲み型配置」がされた千里ニュータウンの府営住宅で特徴的な光景です。
現在から見れば、住棟を「コ」の字に配置して中庭を作るという空間的な操作だけでコミュニティが形成されると考えるのは安易ではないかという批判はあると思いますが、日照の面で有利な「並行配置」ではなく、あえて「囲み型配置」を採用したことは、当時(1960年代)の工夫として、日本の集合住宅史における重要な出来事として記録されるべきことだと考えています。

「コ」の字の中庭

歩行者専用道路