『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

「ひがしまち街角広場」が担う他の居場所の参考になるという役割

「ひがしまち街角広場」は、人々がふらっと立ち寄れる居場所として地域の人々が居ることを日常的な光景として実現し、その結果として様々な役割を担ってきました。
しかし、「ひがしまち街角広場」が担った役割はこれだけではありません。1回訪れただけでは見えない役割ですが、地域内外で「同じような場所」の参考になってきたことも「ひがしまち街角広場」が担った大きな役割です。

2022年11月26日、大阪府富田林市の金剛団地(金剛ニュータウン)にある「わっくCafé」を訪問させていただきました。「わっくCafé」は、一般社団法人わっく金剛が運営する「多世代、そして金剛内外の人たち誰もが集える常設拠点」*1)。金剛銀座商店街の空き店舗を活用して、2021年2月27日にオープンした場所です。

「わっくCafe」を開くにあたって、メンバーらは、団地(ニュータウン)において人々がふらっと立ち寄れる居場所はどのようにして実現するかの参考にするため、2019年8月5日に千里ニュータウンの「ひがしまち街角広場」の見学に来られました。見学では、「ひがしまち街角広場」のスタッフらに対して次のような質問がありました。

  • □運営費について
    :運営資金はどうしているか? 家賃はいくらか?
  • □来訪者について
    :1日に何人ぐらい来ているか? 来訪者は、個人で来る人と団体の人のどちらが多いか?
  • □スタッフについて
    :スタッフは何人いるか? スタッフの入れ替わりはあるか?
  • □行政との関わりについて
    :市役所との関わりはあるか? 保健所との関わりはあるか?
  • □運営全般
    :19年間も運営が継続できた理由は? 定年退職した男性に関わってもらうための工夫は?

「わっくCafé」のメンバーらは他の場所の見学に行かれており、「日替わりカフェオーナー」、「ボックスショップオーナー」*2)という仕組みも、「ひがしまち街角広場」と大きく異なります。このように具体的な運営方法は異なりますが、あらかじめ決められたプログラムに参加するために訪れる傾向のある公民館や集会所とは異なり、人々がふらっと立ち寄れる居場所を実現するという狙いは共通するものがあると感じました*3)。


以前、施設と居場所の広がり方の違いを考えたことがあります。
施設は、先進事例からエッセンスを抽出することで標準を作り、その標準に基づいた「同じもの」として広がっていく。ここで、先進事例の調査・分析を行い、標準を作るのが専門家や研究者ということになります。これに対して、居場所は、「ひがしまち街角広場」と「わっくCafé」の関係のように、先行事例が参考されるものの「同じもの」でなく「同じようなもの」として広がっていく。*4)

「ひがしまち街角広場」が運営している新千里東町には、「ひがしまち街角広場」のような場所が欲しいと考えた人により、次のような場所が開かれてきました。

  • 府営新千里東住宅の「3・3ひろば」:2009年7月からスタート。府営新千里東住宅の集会所を活用して、毎月第2水・第4金曜の13時〜16時に開かれている。
  • 千里文化センター・コラボの「コラボひろば」(コラボ交流カフェ):2010年4月オープン。千里文化センター・コラボ2階の多目的室の一画で、火曜〜土曜の週5日、10時〜16時半まで運営されている。2020年運営終了
  • UR新千里東町団地の茶話会:UR新千里東町団地の集会所で毎月1会開催。
  • 桜ヶ丘メゾンシティーの「桜ヶ丘さくらサロン」:分譲マンションの建替え計画に携わっていた人が「ひがしまち街角広場」を見て、建替え後の分譲マンションにもこのような場所が欲しいと考え、「桜ヶ丘まちかど広場」という場所を設置。毎月0と5のつく日(土日祝を除く)の13時〜15時に開かれている。

また、新千里東町の外部からも、「わっくCafé」以外にも多くの人々が見学に来られました。そして、千里ニュータウン佐竹台の「佐竹台サロン」、新千里北町の北丘小学校内の「畑のある交流サロン@Kitamachi」、北海道の北広島団地の「北広島団地地域交流ホームふれて」、三重県名張市の桔梗が丘自治連合会による「ほっとまち茶房ききょう」は、見学に来た人が「ひがしまち街角広場」を参考にして開いた場所です*5)。

「ひがしまち街角広場」は、人々がふらっと立ち寄れる居場所の先駆として*6)、多くの見学者を受け入れ、「同じような場所」の参考になってきました。この意味で、「ひがしまち街角広場」は、制度ではない居場所がどのようなかたちで広がっていくかについての提示したという意味でも重要な場所だった。残念ながら「ひがしまち街角広場」は2022年5月末で運営を終了することになりましたが、「ひがしまち街角広場」がになったこの役割も忘れてはならないと感がています。


■注

  • 1)一般社団法人わっく金剛の「わっくカフェ」のページより。
  • 2)一般社団法人わっく金剛の「わっくカフェ」のページより。
  • 3)2022年11月26日に訪問した際には、ひがしまち街角広場」がコーヒーなどの飲物の100円の「お気持ち料」という日々の収入で、家賃を含めた費用を賄っていることも参考になったという話も伺った。
  • 4)佐藤航陽(2015)における社会システムの分類に従えば、施設の広がりは「ハブ型の近代社会」、居場所の広がりは「分散型の現代社会」のモデルで捉えることができる。このように捉えれば、「ハブ型の近代社会」における専門家や研究者はハブの位置に立つ「代理人」ということになる。佐藤航陽(2015)の社会システムの分類はこちらの記事を参照。
  • 5)ここにあげた場所はあくまでも把握できている場所であり、この他にも「ひがしまち街角広場」に見学に来られた人が開いた場所がある可能性がある。
  • 6)各地に居場所が開かれるようになったのは2000年頃であり、2001年9月30日にオープンした「ひがしまち街角広場」は居場所の先駆的な場所の1つだと捉えることができる。

■参考文献