2019年9月21日(土)に開催された東丘公民分館創立50周年記念パネルディスカッション「分館活動を振り返り、次世代に引き継ぐ」では、新千里東町にある第八中学校について「東丘小学校の子どものうち、約3割が私立の中学校に進学する。地域を盛り上げるためには、地元の第八中学校を盛り上げていくことが大切」という意見が出されました。
第八中学の進学率がどうなっているかを確認するため、統計を調べてみました。
近隣住区論に基づいて計画された千里ニュータウンでは、12の住区が計画されましたが、住区の単位になるのが小学校区。1住区に1小学校、2住区で1中学校が計画されました。
新千里東町には東丘小学校、新千里北町には北丘小学校が開かれ、2つの小学校の子どもが(新千里東町にある)第八中学校に進学するという計画です*1)。
2005年4月1日に校区が変更されて以降の、東丘小学校・北丘小学校から第八中学校への進学率を示したのが下のグラフです。グラフからは次のことがわかります。
- 豊中市内の全公立小学校から全公立中学校への進学率はほぼ90%を推移している。
- 2005年から2010年までは、東丘小学校・北丘小学校から第八中学校への進学率は、豊中市内の全公立小学校から全公立中学校への進学率に近いか、上回っている年もある。
- 2011年以降は一貫して、東丘小学校・北丘小学校から第八中学校への進学率は、豊中市内の全公立小学校から全公立中学校への進学率を下回っており、70〜80%となっている。
他の学校に転入したり、他の学校へ転出したりする転校生がいるため、ここで計算した進学率から私立中学校への進学率を直接求めることはできませんが、パネルディスカッションで出された「東丘小学校の子どものうち、約3割が私立の中学校に進学する」という意見は、このグラフにも表れていると言えます。
第八中学校への進学率が減少傾向にあることは、新千里東町、新千里北町の人口の変化と併せて捉える必要があります。
国勢調査を見ると、新千里東町の人口は1975年をピークとして、新千里北町の人口は1970年をピークとして減少が続いていました。それが、近年は集合住宅(分譲マンション)の建替えにより人口は増加しつつあります。
人口の増加に伴い、東丘小学校、北丘小学校の児童数、そして、第八中学校の生徒数も近年は増加してきました。
以上のことから、近年、東丘小学校、北丘小学校に通う子どもは、建替えられた集合住宅(分譲マンション)に他地域から入居してきた家庭の子どもが多いと考えることができます。
私立中学への進学を選択するのは、(高校受験のない)中高一貫校に進学するため、その後、有名大学へ進学するためという考えがある。この考えを否定することはできず、それぞれの選択の自由を規制することはできません。
それに対して、地域住民の立場からは、第八中学校を盛り上げたいという考えがある。2018年5月1日現在の第八中学校の全校生徒数が252人に対して、隣接する第九中学校の全校生徒数が828人と学習環境に大きな違いがあるため、これを是正したいという考えもある。これらの考えを否定することもできません。一方、第八中学校から有名高校に進学する割合も高いという話を聞いたことがあります。
こう考えると非常に難しい問題ですが、まず、近隣住区論に基づく1住区に1小学校、2住区で1中学校という計画自体を見直す時期にきている必要がありそうです。これは、少子化・高齢化が進む地域において、小・中学校に代わって何が地域の中心になり得るのかという、千里ニュータウン以外の地域に共通する課題でもあります。
また、私立中学校に進学したとしても、地域に関わり続けることができるなら、地域を盛り上げるという課題は解決できることになります。先日のパネルディスカッションでは、小学校の頃、「ひがしまち街角広場」に水を飲みに立ち寄ったという方の話を聞きました(この方は第八中学校に進学されています)。子どもの頃に「ひがしまち街角広場」のような場所を通じて地域の大人と顔見知りになっていれば、つまり、子どもたちが「親・学校の先生・友人だけではない」多層的な関係を地域で築いていれば、たとえ私立中学校に進学したとしても地域とのつながりは切れないのではないかという可能性も描きたくなります。
公立中学校に進学しても、私立中学校に進学しても地域と関われるような場所や仕組みということを考えれば、「学校中心の生活から子どもたちを解放していく」という視点が必要なのかも知れません。
注
- *1)ただしこれは原則であり、第八中学校でも何度か校区が変更されている。そのため、上新田地区の子どもが第八中学校に通学していた時期もある。
- *2)第九中学校の校区は、新千里西町の西丘小学校、新千里南町の南丘小学校、上新田の新田小学校・新田南小学校の通学区域となっている。
(更新:2019年10月6日)