東日本大震災前、岩手県の「一ノ関駅」と「盛駅」(大船渡市)間はJR大船渡線が運行していました。しかし、JR大船渡線は東日本大震災で被災し、「気仙沼駅」と「盛駅」の間はBRT(Bus Rapid Transit:バス高速輸送システム)として復旧されることとなりました。
BRT大船渡線は2013年3月から運行開始。運行しているのは「バス」ですが、気仙沼市と陸前高田市の一部、及び、大船渡市の全域にはBRT専用道が整備されており、ほぼ時刻通りに運行されています。
(BRT専用道を走行する車両)
JR東日本が公開している情報をもとに、BRT大船渡線の各年度の1日平均の乗車人員(以下、乗車人員と表記)を調べたところ*1)、いくつのことに気づかされます。
BRTの駅の変化
2013年3月にBRT大船渡線の運行が始まった時は15駅のみでした。それが、2024年7月時点で、26駅に増加しています。
運行しているのは「バス」のため、BRTの駅は、鉄道駅とは異なり、「バス停」のような簡易的な設備で設置が可能。そのため、駅の位置を移動したり、新たな駅を追加したりすることが比較的容易です。これが、BRT専用道の整備、施設の移転など、その時々の地域の柔軟に対応した運行ルートを可能にしています。
こうしたBRTの柔軟性は、BRTの駅が徐々に増加していることにも現れています。
BRTの乗車人員
2023年度の乗車人員を確認すると、「盛駅」、「陸前高田駅」、「大船渡駅」、「気仙沼駅」と、それぞれの市の中心部に位置する駅、次いで、「高田高校前駅」の乗車人員が多くなっています。
ただし、最も乗車人員の多い「盛駅」でも160人。BRTを通学、買い物などに利用している人はいますが、自家用車を運転するほとんどの人にとってBRTは日常的に利用する公共交通機関でない状況が伺えます。
次いで乗車人員が多いのは、大船渡市末崎町の「碁石海岸口駅」、「細浦駅」、陸前高田市小友町の「小友駅」、陸前高田市米崎町の「脇ノ沢駅」、大船渡市大船渡町の「下船渡駅」というように、大船渡市と陸前高田市をまたぐエリアの駅になっています(駅番号の15~21の駅)。
逆に、「奇跡の一本松駅」は乗車人員がそれほど多くなく、「高田病院」は乗車人員が6人となっています。この人数を見る限りは、奇跡の一本松を訪れるほとんどの観光客はBRTを利用していない、岩手県立高田病院の通院にはほとんどBRTは利用されていない状況が伺えます。
大船渡市末崎町内の駅
大船渡市末崎町には、「碁石海岸口駅」と「細浦駅」の2つの駅があります。
碁石海岸口駅
細浦駅
年度によって多少の違いはありますが、「碁石海岸口駅」の方が、「細浦駅」よりも若干乗車人数が多くなっています。2020年の乗車人員が少なかったのは新型コロナウイルス感染症の影響だと思われますが、その後、徐々に乗車人員は回復しています。
2つの駅のうち、「細浦駅」はJR大船渡線の駅の付近にもうけられた駅。一方、「碁石海岸口駅」はBRT大船渡線の開業に伴い施設された駅です。
JR大船渡線の頃の「細浦駅」の乗車人員は100人を超える年もありました。JRの駅とBRTの駅で乗車人員に大きな違いが見られるのは、「細浦駅」付近は東日本大震災の津波による大きな被害を受けたことや、「碁石海岸口駅」が新設されたことなどが影響していると思われます。
(細浦駅周辺、2019年2月撮影)
■注
- 1)乗車人員は、JR東日本の各駅の乗車人員のページで公開されている人数で、各年度、1日平均の乗車人員である。なお、降車人員は含まれない。