『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

イギリスにおけるニュータウンの再評価:ニュータウン・タスクフォースによる報告書より

イギリスのニュータウン

イギリスでは、1946年のニュータウン法(New Towns Act 1946)、及び、その後の関連法に基づき、32のニュータウンが開発されました*1)。32のニュータウンは、指定された時期により第一世代、第二世代、第三世代(Mark I、II、III)に分類されます。1946年に指定されたスティヴネイジ(Stevenage)が最初のニュータウンで、1970年に指定されたセントラル・ランカシャー(Central Lancashire)が最後のニュータウンとなります。ただし、セントラル・ランカシャーは、土地の取得と一部の開発が行われたものの、後に計画は縮小されました。
イギリスのニュータウンは、都市の過密・スラムを解消すること、国の産業を育成することという目的を背景に、都市の外部に開発されました。しかし、1970年代後半になると、都市内部の老朽化した地域や旧工業地帯を再開発するというインナーシティの再生へと国の政策の重点が移されたことで、1946年のニュータウン法に基づくニュータウンは開発されなくなったと言われています。1976年には、環境大臣ピーター・ショアが、グラスゴーの過密解消のために計画されていたストーンハウス(Stonehouse)の開発を中止し、その財源をインナーシティ再生に振り向けるという出来事がありました。これが、ニュータウン計画の終焉を象徴する出来事(single event marks the end of the New Towns Programme)として紹介されることがあります*2)。

イギリスのニュータウン一覧

指定順ニュータウンNewtown指定年指定前の人口指定面積(ha)当初の計画人口現在の人口(2007年推計)
1スティヴネイジStevenage1946670025328000079400
2クローリーCrawley19479100239685000100100
3ヘメル・ヘムステッドHemel Hempstead19472100023916500081000
4ハーロウHarlow1947450025888000078300
5ニュートン・エイクリフNewton Aycliffe1947601254undefined29000
6イースト・キルブライドEast Kilbride1947240041488250073300
7ウェリン・ガーデンシティWelwyn Garden City19481850017474200043300
8ハットフィールドHatfield194885009472500027900
9ピーターリーPeterlee194820011332800030000
10グレンロセスGlenrothes1948110023335500038900
11バジルドンBasildon1949250003165103000100000
12ブラックネルBracknell1949514913375500050100
13クンブランCwmbran19491200012785500047200
14コービーCorby195015700179149200
15カンバーノールドCumbernauld1955300031527000049600
16スケルマズデールSkelmersdale19611000016697330038800
17リヴィングストンLivingston1962200027087000054800
18ドーリー /テルフォードDawley / Telford1963/68200007790135000164600
19ランコーンRuncorn19642850029307100061200
20ワシントンWashington19642000022716500060000
21レディッチRedditch19643200029067000079500
22クレイグアヴォンCraigavon196557700
23アーバインIrvine196634600502211600033000
24アントリムAntrim196620000
25バリーメナBallymena196728700
26ニュータウンNewtown / Y Drenewydd196750006061150012700
27ミルトン・キーンズMilton Keynes1967400008900150000184500
28ピーターバラPeterborough1967810006453160000161800
29ノーサンプトンNorthampton19671000008080230000202800
30ウォリントンWarrington19681223007535160000195200
31ロンドンデリーLondonderry196983600
32セントラル・ランカシャー(プレストン・シティ)Central Lancashire (Preston City)197023450014267271000300000
  • 一部のニュータウンは正式承認までに数年を要した
  • Anthony Alexander: “Britain’s New Towns: Garden Cities to Sustainable Communities“, Routledge, 2009に掲載の表を元に作成
  • 指定前の人口は、その地域の歴史的中心市街地の規模(the size of the historic core)を表す
  • 指定面積は、ニュータウンのために取得された土地の面積(the volume of land purchased for each town)を表す
  • 「*」は印刷時点ではデータ入手不可
  • 「Y Drenewydd」は「Newtown」のウェールズ語表記

(スティヴネイジ)

(セントラル・ランカシャー)

ニュータウンは、開発公社(Development Corporation)によって開発し、開発が終了することで開発公社は解散するという仕組みになっています。現在、全ての開発公社は解散しています。開発終了に伴い開発公社は段階的に解散し、住宅などの一部資産は地方当局などに、商業・工業用地などは政府系機関の「ニュータウン委員会」(Commission for the New Towns)*3)によって継承されました。

ニュータウンの再評価

ニュータウン・タスクフォース

1970年に指定されたセントラル・ランカシャー以降、イギリスでは新たなニュータウンは開発されていませんが、近年、ニュータウンの再評価と見なせる動きが生まれています。

2024年9月、次世代のニュータウン(next generation of new towns)についての政策を支援するため、独立した専門家による諮問機関としてニュータウン・タスクフォース(New Towns Taskforce)が設立されました。ニュータウン・タスクフォースは、次世代のニュータウンについて、候補地の選定、評価基準の策定、事業性の検討、実施手法や長期的な管理体制などについて提言を行うものとされています*4)。

2025年9月、ニュータウン・タスクフォースは政府に対して最終報告書(以下、報告書)*5)を提出しました。報告書では、開発公社によって開発された32のニュータウンは、住宅不足とインフラ不全に直面していた地域で、アフォーダブルで質の高い住宅と、新たな雇用・サービスを提供し、生活水準の向上と経済成長を同時に実現した国家的プロジェクトとして評価されています。さらに、32のニュータウンは、それぞれの世代ごとに、その時々の社会・経済状況に対応するように設計されたが、いずれも、省庁横断の強いミッション意識(a strong sense of cross-government mission)に導かれたものだったとも指摘されています。その一方で、1977年から1992年の間に、開発公社による一連のプログラムが終了し、さらに、1990年代半ばから後半にかけて都市再開発公社(Urban Development Corporation:UDC)のプログラムが打ち切られて以降、住宅ニーズを満たすのに必要な規模で新たなコミュニティを生み出すことに成功した全国的なプログラムは存在していないこと*6)、大規模な開発のほとんどは1,500戸未満にとどまっており、将来のニュータウン計画の目的を達成するために必要とされる1万戸という基準には、はるかに及ばないものであることが指摘されています。

報告書では、次世代のニュータウンが、単なる大規模な住宅地ではなく、地域経済戦略の中核、かつ、今後の大規模開発の標準モデル(blueprint)として位置づけられ、次のような提言がなされています。

  • 背景と目的:住宅不足は、労働力の流動性や生産性、公衆衛生、教育、家族形成など、経済・社会の広い領域に悪影響を及ぼしている。ニュータウン・タスクフォースの使命は、次世代のニュータウン建設を通して、経済成長と住宅供給を両立させることである。ニュータウン・タスクフォースでは、新たなスタンドアロン型のニュータウンに加えて、既存の町や都市の拡張、インナーシティの再開発も検討対象とした。
  • 規模と目標:次世代のニュータウンは原則として最低1万戸以上の住宅を含むものとし、候補地全体で少なくとも30万戸の住宅供給がなされる見込みである。アフォーダブル住宅の大量供給によって、住宅価格を適正なものにする役割も期待される。
  • プレイスメイキングの方針:住宅供給だけでなく、社会・経済的なインフラ、緑地、交通アクセス、雇用機会などを当初から備えた持続可能なコミュニティ形成を重視し、ニュータウンのためのプレイスメイキングの基本原則(placemaking principles for new towns)を、開発事業者や実施機関との合意事項に組み込むことを提言する。
  • 用地確保と実施体制:公有地の統合、交渉による取得、強制収用(Compulsory Purchase Orders:CPOs)などを早期に組み合わせた強力な用地集約アプローチを推奨する。実施主体としては開発公社(development corporation)が基本かつ優先すべき実施体制とされる。ただし、民間事業者が用地を保有し、プレイスメイキングの基本原則への賛同を示し、この方向での開発に意欲を示している場合には、民間事業者がより大きな役割を担う余地もある。
  • 資金とガバナンス:政府による開発公社への長期融資などを通じた、大規模なインフラへの先行投資を求める。また、次世代のニュータウン候補地の公表に伴う投機による土地価格の上昇によって、統一的な開発が阻害されないように、候補地の公表と同時に個別の開発申請を止められる暫定計画政策(interim planning policy)を即座に導入することを求める。政府が2025年6月に発表した10年計画(Infrastructure: A 10 Year Strategy)や産業戦略との整合性を図りつつ、各省庁を横断した強力なリーダーシップと、長期的な財政コミットメントが不可欠である。

報告書では、次世代のニュータウンの候補として、以下の12の地域があげられています。スタンドアロン型のニュータウン、既存の町や都市の拡張、インナーシティの再開発というように、いくつかのタイプに分類されていることがわかります。

  • Adlington(Cheshire East):マンチェスターとチェシャーの成長産業を支えるスタンドアロン型の都市
  • Brabazon and West Innovation Arc:高度研究・先端工学・テクノロジーの集積地における連続開発
  • Chase Park and Crews Hill(Enfield):ロンドンの深刻な住宅需要に応えるための、グリーン開発(green development)型の都市拡張
  • Heyford Park(Cherwell):旧空軍基地の再開発
  • Leeds:都心近接の高品質住宅を供給し、2.1億ポンド規模の交通投資の効果を最大化する都心開発
  • Manchester(Victoria North):多様な産業を支える高技能人材の受け皿となる都心高密度化プロジェクト
  • Marlcombe(East Devon):エクセターおよび東デボン・エンタープライズゾーン(Exeter and East Devon Enterprise Zone)を支えるスタンドアロン型の新市
  • Milton Keynes(Renewed Town):既存ニュータウンの中心部再生と周辺拡張、MRT導入を組み合わせた再生ニュータウン(Renewed Town)
  • Plymouth:海洋都市のポテンシャルと国防投資(HMNB Devonport)を梃子とした高密度都市開発
  • Tempsford(Bedfordshire):オックスフォード・ケンブリッジ成長回廊(Oxford-Cambridge Growth Corridor)の中央に位置し、イースト・ウェスト・レール(オックスフォードとケンブリッジを結ぶ新しい鉄道路線)を最大限活用する新市
  • Thamesmead(Greenwich):DLR(Docklands Light Railway)の延伸を前提としたテムズ河畔のリバーサイドの都市
  • Worcestershire Parkway(Wychavon):既存駅周辺の大規模開発による、持続可能・カーボンニュートラルなモデル開発

ニュータウンのためのプレイスメイキングの基本原則

イギリスでは、このように次世代のニュータウンについて複数のモデルを提示し、具体的な候補地の検討まで進められています。ここで注目したいのは、報告書で言及されているニュータウンのためのプレイスメイキングの基本原則(placemaking principles for new towns)です。報告書では、ニュータウンは単なる居住地でなく、豊かに暮らせる場所であり(each new town is not just a place to live, but to live well)、これを実現するために、政府は、あらゆるニュータウンのマスタープラン、法定計画、および、その後の開発提案の基礎となる、明確なプレイスメイキングの原則を策定すべきであるとして、次の10の原則として整理されています。

  • ビジョン主導(Vision-led):それぞれのニュータウンは、優れたデザインと個性的な場所を創出するために明確な長期的ビジョンを掲げ、街全体の質を高めるために、街全体を網羅する戦略的マスタープランとデザインコードによって支えることが求められる。
  • 野心的な密度(Ambitious density):ニュータウンは、住民が地元の施設まで歩くことができ、公共交通を支え、より良い社会インフラを整備し、活気があり暮らしやすい近隣住区(neighbourhoods)を生み出すために十分な密度で建設される必要があり、政府は明確な最低密度基準を定めることが求められる。
  • アフォーダブル住宅とバランスの取れたコミュニティ(Affordable housing and balanced communities):ニュータウンは、バランスの取れたコミュニティのニーズに応えるため、多様な住宅タイプや保有形態を含む、質の高い住宅を幅広く提供する必要がある。これには、アフォーダブル住宅を最低40%とする目標を含めるべきであり、そのうち少なくとも半分が社会的賃貸住宅(social rent)として提供されるものとする。
  • 社会インフラ(Social infrastructure):ニュータウンは、学校、文化・スポーツ・医療施設など、新たな住民のニーズを当初から満たす社会インフラへのアクセスを確保することで、活気あるコミュニティの形成を支援することが期待される。
  • 健康で安全な場所(Healthy and safe places):ニュータウンは、住民がアクティブな生活を送れるように、アクセスしやすい緑地やレクリエーション施設を備えた、健康的で安全な場所であるべきである。
  • 環境の持続可能性(Environmental sustainability):ニュータウンは、環境原則を取り入れて設計・整備されるべきである。建物と近隣住区(neighbourhoods)は、低炭素かつ気候変動に対してレジリエントであり、生物多様性の保護、回復、向上に寄与するように計画・整備されることが求められる。
  • 交通の接続性(Transport connectivity):ニュータウンは、人々を教育や職業訓練の機会(skills)、雇用、サービス、生活利便施設に容易にアクセスできるようにすべきである。そのために、各ニュータウン内における質の高い公共交通機関、歩行者・自転車ネットワークに加え、広域の交通網に容易にアクセスできる必要がある。
  • 事業創出と雇用機会(Business creation and employment opportunities):ニュータウンは、住民に雇用を提供し、ビジネスの成長を可能にする場所であり、政府の経済成長ミッション(government’s economic growth mission)を支えることが期待される。
  • スチュワードシップ(Stewardship):ニュータウンは、共同資産を長期的に管理・維持するための明確なガバナンス体制や資金調達体制を含めて、持続可能なスチュワードシップ・モデル(管理・運営モデル)を当初から整備しておくことが不可欠である。
  • コミュニティエンゲージメント(Community engagement):ニュータウンは、コミュニティが自らの街のビジョンや提案の形成に関与できる明確かつ効果的な方法を確立し、住民がソーシャル・キャピタル(social capital)を構築し、街の文化的アイデンティティの形成に寄与できるようにすべきである。

※New Towns Taskforce: “New Towns Taskforce: Report to government“, Ministry of Housing, Communities and Local Government, September 28, 2025に掲載の内容を翻訳

プレイスメイキングの基本原則は、次世代のニュータウンはどのような場所であり、その場所はどのように計画、開発、管理すべきかが現れた興味深い内容となっています。

ニュー・エルサレムズ・プロジェクト

イギリスでは、2021年からニュー・エルサレムズ・プロジェクト(New Jerusalems Project)が始められています。イギリス(イングランド、ウェールズ)、及び、アイルランド共和国の11のニュータウンにおいて、研究者が資料に容易にアクセスできるようにするために、地方自治体の公文書館などの機関がアーカイブ・ネットワークを構築し、アーキビストによって開発公社の議事録、年次報告書、図面、地図、写真、契約書類、広報誌など数千もの資料のカタログ化、デジタル化を行うというプロジェクトです。
ニュータウン・タスクフォースとニュー・エルサレムズ・プロジェクトに直接的な関係があるという情報は確認できていませんが、ニュー・エルサレムズ・プロジェクトも、次のようなニュータウンの再評価が背景になっています。

「ニュー・エルサレムズ・プロジェクト(New Jerusalems Project)は、イングランド、ウェールズ、アイルランド共和国にある11の戦後ニュータウンのアーカイブを初めて公開するプロジェクトです。このプロジェクトにより、ニュータウン運動(New Towns movement)の研究に利用できる資料に根本的な変化がもたらされます。プロジェクトは、ウェルカム・トラスト(Wellcome Trust)の42万ポンドの助成金により実現しました。ニュータウン運動は、ヨーロッパを覆った暗黒と紛争の時代から生まれました。ニュータウンは、住宅、都市計画、社会福祉、雇用、田園地帯、国民保健サービス(NHS)、教育などに対する新しく、ラディカルなアプローチをとる「ニュー・エルサレム」(新たな平和の街)の重要な一部でした。以前の状態に戻すのではなく、より良い復興(Build Back Better)という点で、現在と共通点があります。都市部における新型コロナウイルス感染症の長期的な影響に対して、戦後のニュータウンから貴重な教訓を引き出すことができます。2020年以降、戦後ニュータウンの都市設計の次のような特徴が注目されています。

  • 広大なパブリックな公園やその他の緑地
  • 20分の近隣(20-minute neighbourhood):(徒歩または自転車の)20分圏内で日常生活に必要なものが揃う近隣
  • アクティブ・トラベルを可能にする自転車専用道路
  • 場所への愛着心(sense of place)を育むパブリック・アート、コミュニティ・アート

ニュー・エルサレムズ・プロジェクトは、住宅、都市設計、公衆衛生のつながりに関心のある全ての人々に、重要な新たな資源を提供します。これらのアーカイブは、保存(conservation and preservation)の作業を通じてカタログ化され、将来にわたって保管されます。」
※「New Jerusalems」のページに記載内容の翻訳。

ニュータウンの再評価

このように、イギリスではニュータウンの再評価が行われ、アーカイブの取り組みが行われたり、次世代のニュータウンの開発に向けた提言がなされたりしています。

例えば、千里ニュータウンの場合、集合住宅の再開発によって人口が増加していますが、これはニュータウンの再評価と言えるのか。教育や緑をはじめとする住環境の良さ、交通の利便性が評価されていると捉えることはできるかもしれません。その一方で、千里ニュータウンが大阪府企業局によって開発されたこと、その後、大阪府千里センター*7)によって管理されていたこと、さらに、大阪府千里センターが解散したことなどを見直したり、それをふまえて、次世代のニュータウンを開発するか否か、開発する場合にはどのような体制や法律に基づいて開発すべきかなどの議論がなされているのか。ニュー・エルサレムズ・プロジェクトのように、大阪府企業局や大阪府千里センターが保有していた資料を一元的に検索、閲覧できるようにする取り組みはされているか。

イギリスでは、1946年のニュータウン法、及び、その後の関連法に基づいて開発されたものがニュータウンと定義されています。日本においては、イギリスのニュータウン法に相当するものがないため、日本においてニュータウンの見直しは困難という状況があるかもしれません。そのため、イギリスと日本の単純な比較は慎むべきかもしれませんが、ニュータウンの経験を次世代のニュータウンへとどう継承するかというイギリスの動向は、これからも注目していきたいと思います。


■注