『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

海外のニュータウン・日本のニュータウンの光景

日本のニュータウン計画は、イギリスやアメリカのニュータウンや計画住宅地から多くを学んでいますが、実際に訪れると日本のニュータウンで見る風景と大きく異なることに気づかされます。

写真はイギリスのレッチワース(Letchworth, 1903〜)。エベネザー・ハワードのガーデンシティ(田園都市)の理念に基づいて作られた街。低層の住宅が並んでいます。

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イギリスで最初にニュータウンとして開発されたスティヴネイジ(Stevenage, 1946〜)。写真左側に高層(12階建て)の集合住宅が並んでいますが、その周りは低層の住宅で、中層の箱型の集合住宅が並ぶ風景を目にすることはありません。

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こちらはフィンランドのタピオラ・ガーデンシティ(Tapiola, 1950’s〜)。「Tapio」とは森の精霊という意味で、名前の通り本当に森の中に街がある印象を受けます。千里ニュータウンも緑が多いですが、森の中にあるというのとは少し違います。

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西欧のニュータウンや郊外住宅地で見た風景は、いずれも千里ニュータウンとは大きく異なっています。それに対して、東欧、東アジアの国々のニュータウンや郊外住宅地は、どこか千里ニュータウンで見かける風景に似ているところがあるように思います。

ドイツのベルリン郊外にあるヴァイセ・シュタット(Weiße Stadt, 1929〜)。2008年、6つの集合住宅(ジードルング, Siedlung)が「ベルリンのモダニズム集合住宅群」として世界遺産に登録されました。ヴァイセ・シュタットはそのうちの1つ。千里ニュータウンも世界遺産にという話があるようですが、世界遺産という意味ではやはりオリジナルの建物が残っていた方がよいように思います。
写真をよく見れば建物の色、窓の形と違いをたくさん見つけることはできますが、住宅と屋外の関係、中庭や木々の様子が千里ニュータウンとどこか似ています。一番下の写真に遊具が写っていますが、千里ニュータウンにも似た遊具があります。

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こちらは韓国・ソウル郊外の盆唐(Bundang, 1988〜)新都市。地震がないこともあり建物自体はスリムな印象を受けますし、屋外のベランダもありませんが、同じ形の集合住宅が整然と並んでいる感じは、どこかに日本に通じるものがあります。

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整然と並ぶ集合住宅、広い道路、街路樹… ニュータウンの見本のような風景。
日本にもこんなニュータウンがありそうですが、これは中国・上海の郊外に作られた浦江世博家園。上海万博の敷地に住んでいた人々の移転のために計画された郊外住宅地です。

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ニュータウン・郊外住宅地は無国籍だという言い方がされるように、世界のニュータウン・郊外住宅地にはどこか共通点があると思います。しかし、共通点があるからこそ、それぞれの違いが浮かびあがってくるのかもしれません。その中で、中層の箱型の集合住宅が並ぶ風景というのは、日本らしい風景だと感じます。

千里ニュータウンが生まれて50年。この街で生まれ、育った子どもたち、この街を故郷とする人々は既にたくさんいます。そのような人々が日本の、あるいは、世界の色々な街で生活する中で、千里ニュータウンの風景を懐かしさとともに思い出し、その風景を日本らしいものとして「再発見」することもあり得るのではないかと思います。

(更新:2016年8月28日)