『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

あり合わせのもので何とかする技術@ネパール・マタティルタ村

2017年8月上旬、Ibashoプロジェクトが行われているネパールのマタティルタ(Matatirtha)村を訪問しました。今回の訪問時には掲示板作りなどを行いましたが、それに付随して素敵な出来事がありました。元大工の高齢の男性Mさんが、約45年前、大工になって初めて作った棚が、村の人の手によって修復されたことです。

8月9日(水)、掲示板作りのためにどのような工具が使えそうかを見せたもらうため、Mさんの家を訪問。その時に見せてもらった棚です。Mさんが大工になって初めて制作した棚で、当時は、大工の工賃は1時間に20NPR(約20円)だったとのこと。置く場所がなく屋上に置かれていました。 ちょうど、Ibashoプロジェクトでは、高齢者住宅(Oldage Home)の一画にオープンする図書館、インターネットカフェのための家具作りをするという話が出されていました。Mさんは、このような家具を作れるということを、村の他の方にも見てもらうため、高齢者住宅に運ぶことに。

8月11日(金)、掲示板作りが行われている場所にM棚を運んだところ、掲示板作りをしていたMさんと、女性グループ「Mahila Samuha」のSさんら何人かが棚を修復する作業を始めました。傷んだ板をはがし、掲示板作りで余った端材を使って手際よく作業が進められます。修復が終わった後、2人の女性がペンキを塗り、45年前の棚が蘇りました。この棚は、Ibashoプロジェクトのメンバーが作っているイヤリングのためのショーケースとして使えるのではないか、という話が出されています。

女性グループ「Mahila Samuha」のメンバーは、自分たちでレンガを積んで建物(棚の修復をしている建物)を建てるくらいの技術をお持ちなので、棚を修復するくらい朝飯前だったかもしれませんが、素敵な光景だと思いました。

  • その理由の1つは、高齢の男性Mさんと、(若い世代の)女性たちという世代・性別を越えた共同作業であること。女性たちはMさんを尊重し、また、Mさんが45年前に作った棚を大切にされているのだということが伝わって来ました。
  • もう1つの理由は、掲示板作りで余った端材や、部屋にあったペンキというあり合わせのものを使って手際よく作業が行われたこと。そして、修復した棚をイヤリングのショーケースにするというのも、あり合わせのもので何とかするということです。何かをするためにまず道具を揃えなければならない、材料を買わなければならないというように、「ないもの」に注目してそれを揃えることから始まるのではなく、身の回りに「あるもの」に注目して何とかするという柔軟な姿勢です。

人を、物を大切にすること、あり合わせのもので何とかするという柔軟性。忘れてはならないことだと思わされました。