『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

レッドウッド・ショアーズ:サンフランシスコ・ベイエリアの計画住宅地

サンフランシスコの南、ベイエリアにレッドウッド・ショアーズ(Redwood Shores)という街があります。
レッドウッド・ショアーズは、以前ご紹介したフォスターシティ(Foster City)のすぐ南にあり、サンフランシスコとサンノゼ(San Jose)のほぼ中間に位置。レッドウッドシティ(Redwood City)の一部ですが、他のエリアとは離れた飛び地になっています。フォスターシティ同様、湾岸を埋め立てて開発されたウォーターフロントの街です。

レッドウッド・ショアーズは、フォスターシティ同様、1960年代から開発が始まりました*1)。

  • 1960年代初頭:製塩を行うLeslie Salt, Inc.が1,400エーカー(約570ha)以上の土地を取得。どこかの市に所属する必要あったが、エリアに隣接していたベルモント(Belmont)、サンカルロス(San Carlos)が興味を持たず、興味を示したレッドウッドシティーに所属することになる。
  • Leslie Salt, Inc.がLeslie Salt Propertiesを設立し、開発事業がスタート。フォスターシティと同様、カリフォルニア州議会の承認を得てGID(Generan Improvement District)を設立。GIDは市町村タイプのサービスを提供するために設立されるもの。
  • 1966年~1968年:初期の地盤改良が行われる。
  • 1968年5月20日:市議会は最初の住区の配置を承認。156の一戸建て住戸、38の連続住戸が新しく、そして、ユニークな街の始まりとなる。
  • 1971年春:レッドウッド・ショアーズの所有権に関する交渉が始まる。
  • 1973年2月29日:モービル石油株式会社(Mobil Oil Estates, LTD.)がレッドウッド・ショアーズの土地を取得。当時、レッドウッド・ショアーズには570戸が存在していた。
  • 1975年:住宅と商業のプロジェクトを融合した新たなマスタープランが採択。200エーカー(約80ha)のラグーン・システムがすぐに実現した。この後の数年間、建設は次の段階に入り、レッドウッド・ショアーズの不動産市場は急激に成長する。
  • 1980年代後半~1990年代:いくつかの新たな住宅プロジェクトが行われ、レッドウッド・ショアーズは大きく成長する。
  • 近年では新たな住宅に加えて、小学校(Redwood Shores Elementary School)と図書館(Redwood Shores Library)が建設された。

1960年代から開発されてきたレッドウッド・ショアーズは現在、高級住宅地となっており、アメリカの経済誌『フォーブズ』(Forbes)によると、2009年「America’s Top Selling Luxury Neighborhoods」のトップに位置しています。また、オラクル(Oracle Corporation)、エレクトロニック・アーツ(Electronic Arts)などが本社を置いています*2)。


2018年10月上旬、レッドウッド・ショアーズを訪問する機会がありましたので、街の様子をご紹介します。

サンフランシスコとギルロイ(Gilroy)を結ぶ鉄道・カルトレイン(Caltrain)でレッドウッド・ショアーズに向かいます。最寄駅は、ベルモント(Belmont)駅かサンカルロス(San Carlos)駅のいずれかです。

往路はサンカルロス(San Carlos)駅で下車。スマートフォンで調べたところ、ちょうどレッドウッド・ショアーズに向かう路線バスがあることがわかったので、路線バスに乗車しました。

サンカルロス駅から15分ほど走ったMarine Pkwy & Sandpiper Lnでバスを下車。図書館(Redwood Shores Branch Library)のやや北のバス停です。
図書館に向かいましたが、この日は金曜であいにく休館日でした。図書館の裏(西側)は沼地になっており、沼地の向こうにはオラクルのビルが見えます。沼地沿いは気持ちの良い遊歩道。沼地に沿って遊歩道を北に歩くと、沼地の向こうにフォスターシティの街並みが見えてきます。

遊歩道の東側は業務地区になっており、四角い建物が並んでいます。Nintendo of Americaのオフィスもここに。金曜だったせいか、業務地区の駐車場にはあまり車が停まっていませんでした。

業務地区を東に抜け、Pkwyを南に渡ってShorebird Parkへ。テニスコートにはテニスをしている人。中央の芝生の広場には水鳥が歩いています。
公園の運河沿いは遊歩道になっており、運河の向こうに戸建て住宅が見えます。戸建て住宅は運河に向かって開かれており、ヨットが停泊している家もありました。運河の向こう側に渡る橋にはゲートが設置されており、人は自由に行き来できますが、車の出入りは制限されています。

Shorebird Parkを出た後、Marine Pkwyを南に、Bridge Pkwyを東に歩いて橋に到着。橋の西の袂には商店が集まる場所がありました。橋の上からは運河と、運河に面して建つ住宅が一望できます。フォスターシティで見た風景と似ています。

橋を渡り終え、Marine Pkwyを少し西に歩き、Bowsprit Drを北へ。Bowsprit Drの突き当りが芝生の緑地になっており、緑地を進むとMarin Parkという大きな公園へ。公園の一角に三日月型の砂浜があるのも、フォスターシティと同じです。
公園では、サッカーをしている10数人の大人、小さな子どもを遊ばせている母親などを見かけました。

Marine Parkを出た後、Davit Lnを北へ。David Lnの西側は運河になっており、運河に面して住宅が並んでいます。たくさんの水鳥も見かけました。
David Lnの東側は庭のある戸建住宅が道路の両側に並んでおり、典型的なアメリカの郊外住宅地の風景が広がっています。

Shell Pkwyを西へ、Redwood Shores Pkwyを北に歩いていきます。住宅地がブロックとして開発されており、車の出入りが制限されているゲート型の住宅地も見かけました。
Redwood Shores Pkwyをさらに進むと左手にコミュニティ・センター(Sandpiper Community Center)と小学校(Sandpiper School)が見えて来ます。駐車場には多くの車、子ども用の自転車が停まっていました。

Redwood Shores Pkwyをさらに北に歩いて行くと、送電線の鉄塔の下へ。鉄塔の下が運河になっており、運河の両岸は遊歩道が巡っています。散歩している高齢者、小さな子どもを連れた母親、犬の散歩をしている人などを見かけました。遊歩道の所々に健康器具やベンチが置かれています。

運河に沿って西に進むと、陸地の西端あたりにいくつか展望台。展望台からはフォスターシティやサンフランシスコ湾を一望することができます。

レッドウッド・ショアーズの一番北のエリアにも、庭のある戸建住宅が道路の両側に並んでいます。歩車分離を実現するため、クルドサック(袋小路)が多数採用されているのを見かけました。

Canvasback WayとWhisperwave Cirが交わる運河付近でライドシェアのLyftを呼びました。15分ほどでLyftの車が到着し、10分ほどでカルトレインのベルモント駅に着きました。

運河に面した住宅、ヨットが停泊している住宅など立派な住宅が多く、人口の運河、芝生の広場、並木道など自然も豊か。こうした環境が閑静な住宅地として評価されているのだと思います。ただしこの環境はゲート型の住宅地のように、住民以外を排除することによって成立しているという側面があります。
実際に歩いて気づいたのは、公園や住宅地などの草刈り、樹木の剪定をしている人をたくさん見かけたこと。訪れたのが平日の昼間だったせいもありますが、住民より、メンテナンスをする人々の方がよく見かけました。こうした人出をかけた日々のメンテナンスによって、閑静な住宅地が保たれていることも見落としてはならないポイントです。

また、住宅地計画において、歩車分離を実現するための手法であるクルドサック(袋小路)が多様されているのも印象的でした。

6年前にフォスターシティを訪問した時は、スマートフォンが使えず駅やホテルからタクシーを利用しましたが、駅にタクシーが停まっているだろうかと不安になったものです。今はスマートフォンで路線バスを検索することもできますし、路線バスがなければライドシェアのUberやLyftを利用することもできます。便利な時代になったとつくづく思います。


  • *1)レッドウッド・ショアーズの歴史は、Redwood Shores」のウェブサイトの「History」のページより。
  • *2)Wikipedia「Redwood Shores, California」のページより。