千里ニュータウンの豊中市域の住区である新千里北町について、近年、大規模な再開発が進められている府営住宅(B棟)のこと、UR団地(C棟)における「トライぶらり」という新たな試みのことをご紹介します。
府営新千里北住宅/豊中新千里北住宅
府営新千里北住宅は、47棟からなる1,312戸の大規模な団地で、近年、再開発が進められています。
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第1期工事
新千里北住宅の再開発の第1期工事(大阪府豊中新千里北第1期高層住宅)は、樫ノ木公園の西側にあるB26~B31棟を対象として行われました。高低差のある敷地には、既に高層の府営豊中新千里北住宅の2棟が完成し、入居が始まっています。
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(右手が建設された府営豊中新千里北住宅)
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(府営豊中新千里北住宅)
第2期工事
新千里北住宅の再開発の第2期工事(大阪府営豊中新千里北第2期住宅民活プロジェクト)は、PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)に基づいて府営住宅と民間施設等の整備を行うものです。
第2期工事(大阪府営豊中新千里北第2期住宅民活プロジェクト)では、次のような再開発が計画されています*1)。
- 新千里北町近隣センター南東にあるB21~25棟の敷地:府営住宅の高層の住棟が建設
- 新千里北町近隣センター、北丘小学校南にあるB15~20棟、B45~47棟の敷地:民間分譲マンションが建設、敷地の北側(B19~20棟付近)には福祉施設等が建設
- 樫ノ木公園の北側にあるB10~14棟の敷地:民間による戸建住宅地として開発
既に府営新千里北住宅のB19〜25棟は取り壊されています。
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(右手がB23棟付近)
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(北丘小学校前の交差点より)
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(つつじ橋より、正面がB20・21棟付近)
府営新千里北住宅のB15・16棟、B45〜47棟は再開発に対象になっていますが、現在はまだ工事は始められていません。
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(左手がB18棟、右手がB16棟、奥がB17棟)
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(左からB16棟・B15棟)
樫ノ木公園の北側にある府営新千里北住宅のB10~14棟も再開発の対象となっていますが、現在はまだ工事は始められていません。団地というと長方形のかまぼこ板のような住棟をイメージする方が多いと思いますが、府営新千里北住宅のB10~14棟(既に取り壊されたB28〜31棟も)は「十字型」の平面をもつ(ポイント型住棟)特徴的なかたちの住棟になっています。
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(B12棟)
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(B13棟)
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(B14棟)
再開発されない住棟
ひらど公園のすぐ北側の府営新千里北住宅のB32~44棟、樫ノ木公園のすぐ北側の府営新千里北住宅のB1~B9棟は再開発の対象になっておらず、住棟の外壁には耐震補強として鉄骨のブレースが取り付けらています。
千里ニュータウンの府営住宅では囲み型配置が試みられました。府営新千里北住宅のB32~44棟は典型的な囲み型配置がなされたエリアとなっています。中庭には高低差があります。現在は中庭の一部が駐車場となっていますが、これは入居開始後の自家用車の普及を受けたもので、入居当初は中庭全体が公園になっていました。
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(耐震補強がされた住棟)
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(B32~44棟で囲まれた中庭)
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(中庭に作られた高低差をいかしたすべり台)
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(外側からみた囲み型配置)
千里ニュータウンの府営住宅は囲み型配置がされているという特徴がありますが、府営新千里北住宅のB1~B8棟は千里ニュータウンの府営住宅には珍しい平行配置となっています。
中庭を作ることができる囲み型配置に比べると、平行配置は住民が接触する機会を作るのが難しいと言われています。一般的に集合住宅の住棟では、日当たりのよい南側を部屋にするため、階段室が住棟の北側に設けられます(北入りタイプの住棟)。平行配置では、全ての住棟に北側からアクセスするため、隣接する住棟の住民が接触する機会をもちにくくなるからです。
しかし、府営新千里北住宅のB1~B8棟の場合、南側に並ぶB1〜B4棟は一般的な北側に階段室のある住棟(北入りタイプ)、それに対して、北側に並ぶB5〜B8棟は南側に階段室のある住棟(南入りタイプ)とされており、北入りタイプと南入りタイプの住棟を組み合わせることで(NSペア)、平行配置でありながら間の空間があたかも中庭のような場所にするという工夫がなされていることは見落としてはなりません。そして、中庭のような空間を確保するため、南側に並ぶB1〜B4棟は南側に、北側に並ぶB5〜B8棟はは北側にと、外側に向かって増築がされています。
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(北入りタイプのB1〜B4棟の南側)
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(北入りタイプのB1〜B4棟の北側)
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(北入りタイプ(右手)と南いりタイプ(左手)を組み合わせた平行配置)
樫ノ木公園の北側にある府営新千里北住宅のB1〜B9棟のあるエリアと、再開発の対象となっているB10〜B14棟のあるエリアの間にも中庭が作られています。
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(B7〜B11棟付近の中庭)
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(中庭に作られた高低差をいかしたすべり台)
UR新千里北町団地
UR新千里北町団地は、28棟からなる730戸の団地です。
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住棟自体は再開発が行われているわけでありませんが、新千里東町2丁目交差点の北西角にあるかつてUR(公団)の事務所として使われていたC28棟では「トライぶらり」という新たな試みが行われることが計画されています。
「トライぶらり」は、本を通じて交流するスペースの実現を目的とする場所。月2,000円を支払うことで、本棚を1箱分を借りて自分おすすめの本などを並べたり、図書室の店番をしたりすることができるオーナーになることができるという静岡の私設図書館からはじまった「一箱本棚オーナー制度」という仕組みを採用した図書室となっています。
2023年10月22日から12月28日までUR武庫川団地で「トライぶらり」の社会実験が行われました。UR新千里北町団地は、2ヶ所目の社会実験の対象として選定。2024年3月2日に1日限定のプレオープンが行われ、2024年4月中旬から7月末にかけて「トライぶらり」の社会実験が行われることが計画されています*2)。
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(C28棟)
■注
- 1)大阪府の「大阪府営豊中新千里北第2期住宅民活プロジェクト」のページより。
- 2)「カリグラシマガジン うち まち だんち」の「みんなでつくる図書室「トライぶらり」:武庫川団地での限定オープンを終え、次なる地へ」(2024年3月1日)のページより。