シンガポールでは、国民の約8割がHDB(Housing and Development Board:住宅開発庁)が建設する住宅に住んでいます。
HDBが現在開発を進めている最新のニュータウンが、シンガポールの西部のテンガ(Tengah)。HDDが開発する町で初めて、町全体にスマートテクノロジーの導入が計画されており、自然とコミュニティに焦点をあてた「自然と共にある家」(At Home with Nature)として*1)、約700haの土地に42,000戸の住宅が計画されています。
テンガでは、プランテーション地区(Plantation District)、パーク地区(Park District)、ガーデン地区(Garden District)、ブリックランド地区(Brickland District)、フォレスト・ヒル地区(Forest Hill District)という5地区が計画されています。
- プランテーション地区(Plantation District)
コミュニティ農業(community farming)の拠点で、コミュニティ・ファームウェイ(Community Farmway)が地区を通り抜ける。オーガニック・マーケットや、穫れたての食材を味わえる「農場から食卓まで」のダイニング(“farm-to-table” dining)のような施設も設置される。- ガーデン地区(Garden District)
テンガ池とセントラルパークに囲まれた地区。庭園をテーマにしたファームウェイ(garden-themed faraway)によって絵のように美しい環境が実現され、健康的で活動的な生活を行うことができる。- パーク地区(Park District)
テンガの中心地で、緑豊かな景観と森の回廊(Forest Corridor)に囲まれている。地区の中心は、車の乗り入れが禁止された活気のある場所となる。- ブリックランド地区(Brickland District)
レンガを生産していたテンガの工業地帯を思い起こさせるような、レンガ仕上げの建物が建設される。地区から森の回廊(Forest Corridor)の方面には視界を遮るものがなく、都市生活と自然との相乗効果を得ることができる。- フォレスト・ヒル地区(Forest Hill District)
森の回廊(Forest Corridor)と緑地に囲まれており、タウン・センターの近くにありながら、「自然の中で暮らす」(living amidst nature)というコンセプトを体現する地区。※HDBハブの展示パネル(2017年7月)に記載内容を翻訳したもの。
2023年8月、プランテーション地区への入居が始まりました*2)。2024年末までには、ガーデン地区への入居が始まっています*3)。
(左がプランテーション地区、右がガーデン地区)
パーク地区
パーク地区はテンガの中心でプランテーション地区、ガーデン地区の北東に位置。最終的に13,000戸の住宅が計画されています。パーク地区には、長さ約1.5kmのレインフォレスト・ウォーク(Rainforest Walk)が地区を縫うように通され、自然をテーマにした遊具のある広場、緑地、休憩スペースなどがもうけられます。
テンガ・タウンセンター(Tengah Town Centre)は、自動車を地下に通すことで、シンガポール初の自動車が通行しないタウンセンター(“car-free” town centre)として計画されています。また、プライマリケアを担当する診療所であるポリクリニックと、直線状の歩行者専用モールである小売ストリート(retail street)を統合した新世代の近隣センター(new-generation Neighbourhood Centre)も2025年内に開業予定。近隣センターには約40の食料品店と小売店、容院や学習塾などのサービス、フードコート、スーパーマーケットなどが開業予定ということです*4)。
2024年7月21日には、バスターミナルであるテンガ・バス・インターチェンジ(Tengah Bus Interchange)開業*5)。運行している路線は徐々に増加し、2026年1月現時点で452、453、870、871、871A、872、872A、992の8路線のバスが運行しています。
パーク・クローバー@テンガ
2025年9月時点で、バス・インターチェンジの南東にあるパーク・クローバー@テンガ(Parc Clover @ Tengah)の入居が行われていました。8階から14階建までの12棟の住棟からなる1,124戸の大規模なHDBの団地です。クローバーから着想を得たコンセプトにより、12の住棟が、3棟ずつ4つのクラスターに分けて配置。それぞれのクラスターの中央には中庭がもうけられています*6)。
パーク・クローバー@テンガは1階にヴォイド・デッキ(Void Deck)のある住棟で、ヴォイド・デッキの一部は、テーブルと椅子が置かれたコミュニティ・リビングルーム(Community Livingroom)になっています。
(パーク・クローバー@テンガ)
敷地の中央には、7階建ての大きな立体駐車場があります。立体駐車場の1階部分は半屋外の広場、屋上には大きな庭園。植栽のされた屋上庭園には全長300mのジョギングのトラックが作られています。このジョギングのトラックは、HDBによる「身体的なWell-being」(Physical Well-Being)の取り組みの例として紹介されています*7)。ジョギングのトラックの周りには遊び場、フィットネスコーナー、瞑想コーナーなどが配置されています。
(パーク・クローバー@テンガの立体駐車場の屋上)
パーク・レジデンス@テンガ
パーク・クローバー@テンガの南に位置するパーク・レジデンス@テンガ(Parc Residences@Tengah)への入居も始まっています。
パーク・レジデンス@テンガも、7階から14階建までの12棟の住棟からなる1,044戸の大規模な団地。1階にヴォイド・デッキ(Void Deck)のある住棟で、ヴォイド・デッキの一部は、テーブルと椅子が置かれたコミュニティ・リビングルーム(Community Livingroom)になっているのも共通しています。
(パーク・レジデンス@テンガ)
パーク・レジデンス@テンガの敷地の中央には、大きな立体駐車場が配置されています。6階の屋上は庭園になっており、屋上には遊び場、フィットネスコーナーに加えて、全長225mのジョギングトラックがもうけられています。
(パーク・レジデンス@テンガの立体駐車場の屋上)
立体駐車場の1階はソーシャル・ハブ(Social Hub)と呼ばれるスペースになっています。訪れた時はまだ工事が行われていましたが、保育所(childcare centre)、遊び場、フィットネスコーナーなどがもうけられるということです*8)。
(立体駐車場1階のソーシャル・ハブ)
立体駐車場の両脇には、屋上庭園まで上がれる階段がもうけられています。この階段には、階段を上がるモチベーションを起こさせるメッセージが描かれており、HDBによる「身体的なWell-being」(Physical Well-Being)の取り組みとして紹介されています*9)。訪れた時はまだ工事中のようでしたが、階段の蹴込み部分に、「一段一段が、勝ち取った勝利」(EVERY STAIR CLIMBED IS A VICTORY EARNED)、「毎日のワークアウトはほんの数歩先」(YOUR DAILY WORKOUT IS JUST A FEW STEPS AWAY)、「体はきっと感謝する」(YOUR BODY WILL THANK YOU LATFR)というメッセージが描かれているのを見かけました。
(立体駐車場脇の階段)
パーク・レジデンス@テンガに隣接して、パーク地区の近隣センター(Neighbourhood Centre)であるパーク・ポイント(Parc Point)が建設されています。
パーク・ウッズ@テンガ、パーク・フローラ@テンガ
テンガ・バス・インターチェンジ南側のパーク・ウッズ@テンガ(Parc Woods@Tengah)、西側のパーク・フローラ@テンガ(Park Flora@Tengah)への入居も始まっています。パーク・ウッズ@テンガは12階から14階建ての5棟からなる767戸の団地、パーク・フローラ@テンガは12階から14階建ての4棟からなる560戸の団地です。いずれの団地も、1階にヴォイド・デッキ(Void Deck)のある住棟で、ヴォイド・デッキの一部は、テーブルと椅子が置かれたコミュニティ・リビングルーム(Community Livingroom)になっています。
(パーク・ウッズ@テンガ)
(パーク・フローラ@テンガ)
2つの団地は、コモン・グリーン(Common Green)を挟んで、向き合うようにして配置。コモン・グリーンに面した1階部分には、いずれの団地にも保育所(Child Care Centre)があります。また、パーク・ウッズ@テンガには住民ネットワーク・センター(Residents’ Network Centre)もあります。
コモン・グリーンは、遊び場、フィットネスコーナーのある広々としたオープンスペース。それぞれの団地は、コモン・グリーンからもアクセスできるようになっています。さらに、コモン・グリーンは、北側でテンガ・バス・インターチェンジに接続されています。
(コモン・グリーン)
パーク・ウッズ@テンガ、パーク・フローラ@テンガから、テンガ・ドライブ(Tenga Dr)を南にわたると、ガーデン地区のガーデン・ヴァレス@テンガ(Garden Vales@Tengah)とガーデン・ヴァインズ@テンガ(Garden Vines@Tengah)という2つのHDBの団地があります。2つの団地は、ガーデン・ファームウェイ(Garden Farmway)と呼ばれるオープンスペースを挟んで、向き合うように配置。そして、パーク・ウッズ@テンガとパーク・フローラ@テンガの間のコモン・グリーンは、テンガ・ドライブをまたいで、このガーデン・ファームウェイと接続するように配置されています。
(テンガ・ドライブの向こうのガーデン・ファームウェイ)
このように、テンガでは、地区をまたいで、緑のあるオープンスペースのネットワークが計画されています。
■注
- 1)HDB「Tengah」のページ。
- 2)Koh Wan Ting「‘Very inconvenient’: New residents at Tengah face blocked paths, long walks through dusty construction sites」・『CNA』October 10, 2023
- 3)Isabelle Liew「More than 8,800 BTO flats completed in Tengah; residents move into homes in Garden district」・『The Straits Times』November 27, 2024
- 4)HDB「Tengah Districts」のページ。
なお、新世代の近隣センターは、パーク・ポイント(Parc Point)と名づけられ、2026年第1四半期にオープン予定とされている。
HDB「Supermarket, Food Court and Wellness Trail to Open at Tengah’s Newest Neighbourhood Centre in 1Q 2026」December 6, 2025のページ。 - 5)Land Transport Authority「Tengah Bus Interchange to Start Operations On 21 July 2024」July 5, 2024のページ。
- 6)HDBによるMy NiceHome「MyNiceHome Roadshow for Parc Clover @ Tengah」のページより。
- 7)HDBは、居住者のWell-beingを向上させるため、身体的なWell-being(Physical Well-Being)、精神的なWell-being(Mental Well-Being)、社会的なWell-being(Social Well-Being)の3つの観点からの取り組みを行っている。HDB「Live Well」のページより。
- 8)HDB「Supermarket, Food Court and Wellness Trail to Open at Tengah’s Newest Neighbourhood Centre in 1Q 2026」December 6, 2025のページ。
- 9)HDB「Live Well」のページより。





















