『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

プンゴル・ノースショア地区:スマート&サステナブルをコンセプトとするシンガポール最新の地区

シンガポールでは国民の約8割がHDB(Housing and Development Board:住宅開発庁)が建設する住宅に住んでいます。プンゴル(Punggol)はHDBが建設している最新のニュータウンで、2000年に最初のHDBのプロジェクトが完成しています。

2020年時点の人口は174,450人、面積は957ha(居住エリアは374ha)*1)。千里ニュータウンの2020年時点の人口が約100,135人、面積が1,160haであるのに比べると、千里ニュータウンより規模が大きく、高密度で開発されていることがわかります。ただし、プンゴルではまだ開発が続けられており、10年で開発が完了した千里ニュータウンに比べると、長い時間をかけて開発が行われていることもわかります。

HDBは、プンゴルにおいて新たなコンセプトを導入しました。従来、HDBは4,000~6,000戸を単位とする近隣住区(neighbourhood)に基づいて街を計画してきたのに対して、プンゴルではより小規模な2,000~3,000戸の団地が単位とされました。そして、その上位に独自の性格を持つ地区(District)が計画されました。

■近隣住区のコンセプト(Neighbourhood Concept)
1960年代から90年代半ばまで、街は近隣住区(neighbourhood)に基づき包括的に計画されていました。街は4,000~6,000戸からなるいくつかの近隣住区に分けられます。 それぞれの近隣住区には近隣公園、近隣センター、学校などの施設が配置されています。

■プンゴル21のコンセプト(Punggol 21 Concept)
プンゴル(Punggol)の計画においては、より小さく、より親密な団地という、従来とは異なるコンセプトが採用されました。それぞれの団地は、共有の緑地、学校、管区の店舗群(Precinct Shop Cluster)を共有する2,000~3,000の住戸で構成されています。これにより団地はより歩きやすくなり、住民間の交流の促進につながります。
HDBはPunggolにおいて、地区(District)のコンセプトを導入しました。それぞれの地区(District)は、アイデンティティと帰属感を生み出すのに寄与する独自の性格を持っています。この独特の地区のコンセプトは、ビダダリ(Bidadari)とテンガ(Tengah)の計画にでも用いられています。
HDBギャラリーの展示の翻訳。

プンゴルで開発が進められている最新の地区が、ノースショア地区(Northshore District)です。

プンゴル・ノースショア地区

プンゴル・ノースショア地区は、「スマート&サステナブル」(Smart & Sustainable)をコンセプトとして開発されています*2)。MRTプンゴル駅の北西、LRTサムデラ駅(Samudera St)とプンゴル・ポイント駅(Punggol Point St)の間に位置しています。ここでは、ノースショア地区の中心となる複合施設ノースショア・プラザ(Northshore Plaza)と、これに隣接するHDBの団地、ノースショア・レジデンス(Northshore Residences)、ウォーターフロント@ノースショア(Waterfront@Northshore)をご紹介します。

(LRTサムデラ駅からの風景)

ノースショア・プラザ

ノースショア・プラザ(Northshore Plaza)は、HDB初となるシーフロントの新世代の近隣センター(HDB’s first seafront New Generation Neighbourhood Centre)*3)と位置づけられており、各種店舗、飲食店、レクリエーション施設が入居する複合施設。2022年7月24日にオープニングセレモニーが行われました*4)。
ノースショア・プラザは「近隣センター」(Neighbourhood Centre)と呼ばれていますが、千里ニュータウンの近隣センターより規模が大きいのが特徴です。

LRTサムデラ駅に直結するノースショア・プラザI(Northshore Plaza I)と、車道(Northshore Dr)を越えた海側にあるノースショア・プラザII(Northshore Plaza II)からなり、両者は2階レベルのブリッジで連結。ノースショア・プラザ内を通ることにより、LRTサムデラ駅から車道を横切ることなくウォーターフロントやHDBの住棟にアクセスできる歩車分離が実現されています。

(ノースショア・プラザI)

(ノースショア・プラザII)

(ノースショア・プラザIとノースショア・プラザIIを結ぶ2階レベルのブリッジ)

ノースショア・プラザには、次のような特徴があると説明がされています*5)。

コミュニティ・スペース

ノースショア・プラザIには、お祭りのようなイベント、グループでのエクササイズ教室などに利用できるコミュニティ・プラザ(Community Plaza)と呼ばれる吹き抜けの広場がもうけられています。

(コミュニティ・プラザ)

ノースショア・プラザ内には、人々が集まったり、休憩したりするためのコミュニティ・ポッド(Community Pods)と呼ばれる小さな場所がもうけられています。コミュニティ・ポッドには、空気質を改善するためのマイナスイオン浄化技術が導入されています。

(コミュニティ・ポッド)

ノースショア・プラザIIに隣接して、芝生の広場、子どものためのプレイグラウンド、トンボ池のあるオープンスペースがあります。

(ノースショア・プラザIIに隣接するオープンスペース)

スマートな取り組み

ノースショア・プラザに設置されているシーリングファンにはセンサーが搭載されており、気温に応じて回転数が自動的に調整。これにより快適さを向上させながら、エネルギー使用量の最適化が実現されています。

(センサーを搭載したシーリングファン)

エレベーターやエスカレーターなどには、設備の状態をリアルタイムで把握するためのスマートセンサーが設置。異常を検知すると、メンテナンスチームに通知が届く仕組みとなっています。また、シンガポールの情報通信メディア開発庁(Infocomm Media Development Authority:IMDA)との共同の取り組みとして、スマートナビゲーションセンサーを搭載した自律型モバイルロボット(Autonomous Mobile Robots)が導入されており、資材搬入口と店舗の間で商品の集荷と配送が行われています。

スマートなショッピング体験

ノースショア・プラザは様々なかたちでデジタル技術が導入されたデジタル体験型モール(Digital Experiential Mall)で、ロボットが注文した食事を運んでくれる飲食店、在庫を自動でカウント・分析するためのRFIDロボットを導入する店舗などがあります。
「ShopperLink App」というスマートフォンのアプリケーションは、ノースショア・プラザをはじめとするHDBのモールで、バーチャルでの店舗閲覧、最新のプロモーションやイベント情報の受信、小売業者とのチャットなどを可能にするアプリケーション。
ノースショア・プラザには、スマート・インタラクティブ・ディレクトリー(Smart Interactive Directories)と呼ばれるデジタルの案内標識が設置。スマート・インタラクティブ・ディレクトリーには、店舗を検索すると表示されるQRコードをスマートフォンで読み取ることで、その店舗までのルートが表示されたり、車のナンバーを入力すると駐車した場所が表示されたりする機能があります。また、記念写真を撮影するフォトブースの機能も備わっているとのことです。

ノースショア・レジデンス

ノースショア・レジデンス(Northshore Residences)は、LRTサムデラ駅側にあるノースショア・プラザIを挟むように立地しています*6)。

(ノースショア・レジデンス)

ノースショア・レジデンスはノースショア・プラザIと2階レベルで直結しており、2階レベルにもうけられたランドスケープ・デッキ(Landscape Deck)を通って、そのまま各住棟にアクセスできるようになっています。

(ノースショア・プラザIとノースショア・レジデンスを結ぶ通路)

ランドスケープ・デッキは駐車場の屋上にあたり、子どもの遊び場、健康器具が置かれたコーナーがもうけられています。ランドスケープ・デッキに隣接して、屋根のある半屋外の広場である管区パヴィリオン(Precinct Pavilion)がもうけられています。

(ランドスケープ・デッキ)

ウォーターフロント@ノースショア

ウォーターフロント@ノースショア(Waterfront@Northshore)は、ウォーターフロントに面するノースショア・プラザIIを挟むように立地しています*7)。

(ウォーターフロント@ノースショア)

ウォーターフロント@ノースショアはノースショア・プラザIIと1階と2階レベルで直結しており、そのまま住棟にアクセスできるようになっています。

(ノースショア・プラザIIとウォーターフロント@ノースショアを結ぶ2階レベルのブリッジ)

ウォーターフロント@ノースショアの中庭は1階レベルにあり、子どもの遊び場、健康器具が置かれたコーナーがもうけられています。管区パヴィリオン(Precinct Pavilion)も1階レベルにもうけられています。

(ウォーターフロント@ノースショアの中庭)

ウォーターフロント@ノースショアの1階部分にはヴォイド・デッキが作られていますが、その一部がコミュニティ・リビングルーム(Community Living Room)と呼ばれる場所になっています。

(コミュニティ・リビングルーム)


一般的に、HDBの住棟の1階部分にはヴォイド・デッキがもうけられていますが、ここでご紹介しているノースショア・レジデンス、ウォーターフロント@ノースショアは2階レベルも住棟にアクセスするためのメインのフロアであり、2階部分にもヴォイド・デッキのような空間が作られています。

(ノースショア・レジデンスの2階部分)

(ウォーターフロント@ノースショアの2階部分)


■注

  • 1)人口は「CITY POPULATION」のページ、面積は「Land Area and Dwelling Units by Town」のページより。
  • 2)HDBギャラリーの展示より。
  • 3)ノースショア・プラザIIに設置されていた展示パネルより。
  • 4)オープニングセレモニー以前も、完成した部分からオープンしていた。
  • 5)以下は、ノースショア・プラザIIに設置されていた展示パネルより。
  • 6)ノースショア・プラザIの南側はノースショア・レジデンスI、北側はノースショア・レジデンスIIだが、ここでは両者をまとめてノースショア・レジデンスと表記している。
  • 7)ノースショア・プラザIIの南側はウォーターフロントI@ノースショア、北側はウォーターフロントII@ノースショアだが、ここでは両者をまとめてウォーターフロント@ノースショアと表記している。