本稿著者は、居場所(まちの居場所)を施設でない場所として捉え、居場所と施設の違いを3つの側面から捉えてきました。
- ①居合わせる/参加する
- ②当事者/利用者
- ③事後的/計画的
現在、様々な場面で居場所という言葉が使われるようになっており、例えば、施設においても居場所がキーワードにされるようになっています。
居場所という言葉が広く使われるようになっている状況は、「居場所」をタイトルに含む図書の出版数の推移にも現れています。「居場所」をタイトルに含む図書は1980年代半ばから継続的に出版され始めていること、2020年代以降には出版数が増加していることがわかります。
※CiNii Booksで、「タイトル:居場所」、「資料種別:図書・雑誌」、「出版年:2025年まで」の条件で検索すると、602件ヒット。グラフには、出版年が記載されている600件を掲載。
(「居場所」をタイトルに含む図書の出版数の推移)
施設を含めて、様々な場面で居場所に注目されることになったのは、居場所に注目してきた者としては嬉しいことです。ただし、居場所が様々なかたちで使われるようになっている状況に対して、居場所に代わる新たな概念が必要ではないかという議論を耳にすることもあります。しかし、そのようなスタンスもまた流行にのっていることになるかもしれません。
居場所という言葉が、これからどのような場面で使われることになるとしても、居場所は「いる場所」、あるいは、「いられる場所」を表す重要な概念として、これからも考察を続けたいと思います。特に、居場所と施設の違いとして捉えている3つの側面について、次のようなことを考えたいと思います。
①居合わせる/参加する
「居合わせる」とは、建築学者の鈴木毅(2004)が「人間がある場所に居る様子や人の居る風景を扱う枠組み」として提唱する「居方」(いかた)の類型の1つで、「別に直接会話をするわけではないが、場所と時間を共有し、お互いどの様な人が居るかを認識しあっている状況。・・・・・・都市の公共空間における最も基本的な居方」を意味します*1)。
居合わせる/参加するという観点は、日常的には鍵がかかっており、会議や教室など何らかのプログラムがある時にだけ鍵を借りて利用する集会所や公民館、体操などのプログラムを行う「通いの場」に対して、居場所への関わりは、必ずしもプログラムへの参加でないことを捉えるという意図がありました。
「居合わせる」という概念は居場所において重要であることに変わりませんが、近年、施設においても居場所がキーワードとされ、人々が居合わせているのを目にする現状においては、「誰が」居合わせているのかという観点に注目した考察が必要になってくるように考えています。ここでいう「誰が」とは、次の当事者/利用者という観点に関わってきます。
②当事者/利用者
当事者/利用者という観点は、居場所においては主客の関係が緩やかであり、誰もが何らかの役割を担うことを通して、自らが有用な存在であるという手応えを感じることができる可能性があることに注目したものです*2)。
もちろん、施設においても、管理する立場、運営する立場の人には役割がありますが、主客が分かれているため、これらの立場にない人が管理したり、運営したりすることは想定されていません。例えば、福祉施設では「利用者さん」という表現が用いられています。これは丁寧な表現ですが、「利用者さん」が管理する立場になったり、運営する立場になったりすることは想定されていません。
居場所をキーワードにする様々な施設が生まれていることは、好ましいことだと考えていますが、居場所が施設でない場所だとすれば、主客の関係が緩やかであるという点については、これからも居場所を捉えるための重要な観点になると思います。
ただし、主客の関係が緩やかであり、誰もが何らかの役割を担うことができることは重要だとしても、それによって、居場所への関わりが役割を担うというかたちでの参加に限定されたり、役割を担わないことで居心地の悪さを感じてしまう状況は好ましいものでないと思います。
必ずしもプログラムに参加しているわけでない人も、何らかの役割を見出すことで、自らが有用な存在だという手応えを感じることができる余地のある場所であることが、基本になると考えています。
③事後的/計画的
事後的/計画的という観点は、施設でない居場所がどのように作りあげられていくのかに注目したものです。施設では、あらかじめどのような機能を担うかが計画される。人々の関わりが参加するというかたちに限定されたり、利用者に限定されたりするという限定は、計画に基づいて運営することに起因するものと捉えることができます。居合わせることを許容したり、当事者になることを許容したりすることは、必ずしも計画していなかった一人ひとりの要求に応えることによって実現するという側面があります。
居場所においては、一人ひとりの要求への対応によって機能が備わってくる。一人ひとりの要求への対応とは、あらかじめ計画通りにされるものではありませんが、その都度バラバラな対応がされているわけでもない。ここでは、掲げている理念の具体例にするような対応がされていると捉えることができると考えています。
施設でない場所を捉えるうえで、事後的/計画的という観点は重要であり、先日の記事に書いた通り*3)、一人ひとりの要求への対応をミクロな観点で捉えたり、理念を表現する言葉が、どのように一人ひとりの要求への対応によって生じる機能を抱擁していくのかを捉えたりすることは、これから考えていきたいと思います。
■注
■参考文献
- 鈴木毅(2004)「体験される環境の質の豊かさを扱う方法論」・舟橋國男編『建築計画読本』大阪大学出版会


















