寒い日が続き、「居場所ハウス」では薪ストーブが活躍しています。暖を取るため薪ストーブの周りは自然と人が集まり、そこから会話も生まれてきます。
何もないところでぼんやり立っていたり、座っていると、「あの人、あんなところで何してるんだろう?」という目で見られるかもしれませんが、薪ストーブでは薪ストーブで暖を取ることができますし、また、薪ストーブに火をくべたり、上にかけているヤカンの水が減ってないか確認したり、囲いの柵に布巾を干したり… 薪ストーブの周りにいると手持ち無沙汰になることも少ないように思います。薪ストーブは、このように周りに居ることに名分を与えてくれるので、結果として、周りに人を集め、そこから会話が生まれてくる。まるで、人と人との関係を薪ストーブが媒介しているかのようです。
今年の春、Hさんがクルミを割る方法を教えてくださいました。クルミを10〜15分くらい煎ると、クルミの先が少し開くので、そこに包丁を入れて2つに割るという方法です。この日も、Hさんが家からフライパンを持参し、クルミを割るところを見せてくださいました。最近のガスコンロは鍋底の温度を感知して、火が弱まる仕組みになっています。それだを、クルミを煎り続けることはできません。だから、ガスコンロより薪ストーブがよく、また、テフロン加工のフライパンは傷んでしまうため、昔ながらの鉄のフライパンがよいのだとのこと。Hさんは、わざわざ鉄製のフライパンを取り寄せて購入したとのこと。Hさんが煎って先が割れたクルミを、Tさんが包丁で2つに割っていきました。50個ほどのクルミは20分ほどで2つに割り終えました。
クルミを煎って割る方法を知らなかったという方からは、握って殻をくだく機械は持ってるけどなかなか大変で… と話されていました。クルミをもらっても割るのが面倒だから、食べずに他の人にあげてしまうという方も。その話を聞いて、「家にあるクルミ持ってきたら、やってあげるよ」とHさん。
ささやかなことかもしれませんが、クルミを簡単に割る方法という暮らしの知恵を、居合わせた人同士で教え/教えられるという学びが生まれていること。今年の春、Hさんがクルミ割りの方法を教えてくださった時にも感じましたが、「居場所ハウス」はそれぞれの人が身につけた暮らしの知恵が、日々の運営を通して学び合えるような場所であり続けて欲しいと思います。
エアコンで暖房をして、ガスコンロしかない場所だとHさんはクルミ割りをしようと思わなかったかもしれません。薪ストーブという昔ながらの生活の道具が、学び合いを媒介しているとすれば、「居場所ハウス」が古民家を移築・再生した空間になっていることの意味があるのだと思います。