『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

居場所とまち:ひがしまち街角広場について

2016年6月13日(月)、千里ニュータウンの1住区、新千里東町近隣センターの空き店舗を活用して運営されている「ひがしまち街角広場」を訪問し、代表のOさんに話を伺いました。

「ひがしまち街角広場」は2001年9月30日のオープン以来、約15年にわたってカフェ・スペースの運営を継続してきた場所。
Oさんに「15年も運営を継続できた秘訣は何だと思いますか?」と聞いたところ、まず返ってきたのが「スタッフの仲がよいから」という回答。代表は代わっても、「スタッフと来訪者との垣根を作らない」というオープン以来大切にしてきたことは、きちんと継承されているという話でした。実際に、この日もスタッフと来訪者とが一緒にテーブルに座って話をしている光景を見かけました。
もちろん、スタッフや来訪者の間の関係は急に築かれるものではありません。新千里東町への入居が始まったのはちょうど50年前の1966年。ニュータウン第一世代として、ほぼ同じ世代の方々が、団地(集合住宅)での暮らしを共有しながら、50年間にわたって築いてきた関係が「ひがしまち街角広場」の運営につながっていると言えます。

こうした人間関係に加えて、「ひがしまち街角広場」が開かれた当時は、第一世代の人々が高齢になりつつあった、子どもの数が少なくなっていた、近隣センターが衰退して空き店舗ができていた時期でした。新千里東町のこれらの状況も、「ひがしまち街角広場」設立の背景となっています。
「ひがしまち街角広場」という居場所は、新千里東町という計画された「まち」と密接に関わって成立している。この意味で、「ひがしまち街角広場」を「まちの居場所」と呼ぶのはふさわしい。けれども、このことは「ひがしまち街角広場」の運営は、「まち」のあり方に大きな影響を受けるということを意味しています。

現在、新千里東町近隣センターは移転・建替の話が進められています。移転・建替により「ひがしまち街角広場」が活用できる空き店舗がなくなってしまいます。
スペースを確保するめには、新たに完成した近隣センターの店舗を借りるか、新たに完成する東町会館(集会所)での運営を続けるか、のいずれかを選択する必要があります。前者を選べば経済的な負担が大きくなり(空き店舗のような安価な家賃では、新たな店舗を借りることはできない)、後者を選べば「ひがしまち街角広場」だけで東町会館(集会所)を使うわけにはいかず、これまでのような日常の場でなくなる恐れがある。もちろん、この2つ以外にも選択肢はあるかもしれませんし、その可能性は探っていきたいと考えています。

スペースの確保に加えて、スタッフの後継者をどうやって見つけるか、育てていくかも大きな課題。全住戸が集合住宅によって構成されている新千里東町では、50年前のまち開きの時にも、近年の集合住宅の建替の時にも、同じ世代の人々が一斉に入居する傾向があります。だから、住民の年齢が特定の世代に偏っている。現在の「ひがしまち街角広場」のスタッフを担っている第一世代のすぐ下の年齢の人々は、あまり人数が多くはありません。第二世代の中心は30〜40代。夫婦共働きが多い、千里ニュータウン内にはほとんど仕事場がない等の理由から、第二世代の人々の多くは、昼間、地域にはいないという状況です。

このように「ひがしまち街角広場」が抱える課題は、新千里東町が計画された「まち」であることから生まれていると言えます。だから、「ひがしまち街角広場」のこれからを考えるためには、カフェ・スペースをどうするかという方法だけに注目するわけにはいきません。
近隣センターの移転・建替や、住民の年齢層の偏りなどは大きな話になってしまいますが、「ひがしまち街角広場」が15年間の運営を継続してきたことは事実。「ひがしまち街角広場」はこれまで何を生み出してきたのか? これから、どのような姿を目指すのか? 遠回りでも、これらをスタッフや来訪者だけでなく、新千里東町の「まち」として共有することから始めるしかありません。今年10月に予定されている15周年記念行事を、そのための機会にしたいと考えています。

160613-142007 160613-145849 160613-152727 160613-152810 160613-154135 150531新千里東町の年齢構成の推移.001

(更新:2016年6月28日)