『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

実家の茶の間・紫竹:運営者も地域で生活する1人として

新潟市東区の「実家の茶の間・紫竹」について、先日の記事で、地域の一人ひとりが集団の中の1人としてではなく、個人として居られること、けれども、その個人は決して孤立した存在として居るのではないことを実現するために細やかな配慮がなされていることをご紹介させていただきました。
「実家の茶の間・紫竹」は1日4人の当番によって運営されています。4人のうち2人は調理の担当。当番とは別に、任意団体「実家の茶の間」代表の河田さん、事務を担当されている方は毎回顔を出すようにされているとのこと。
訪れた人々が「個人として、孤立せずに居られる」ように、こうした運営側の人々が配慮されているのは事実。しかし、運営側と訪れた人々の関係をサービスをする側/される側という固定された関係にしないことが意識されています。河田さんの言葉を借りれば「ここにはサービスの利用者は一人もいない。いるのは“場”の利用者だけ」ということ(『河田方式「地域の茶の間」ガイドブック』博進堂, 2016年)。

「実家の茶の間・紫竹」にはサポーターの名刺を持っておられる男性がいらっしゃいます。当番と違い、サポーターには決められた役割はないようですが、訪れた人々の様子を見守ったり、やって来た人がいないかと気を配ったり、視察・研修に来た人々の対応をしたり、壁の展示物を整理したり、後片付けをしたりと日々の運営には欠かせない存在。
この他、建築関係の仕事をしていた人が大工仕事をしたり、近くの農家の人が野菜を持って来たり、家で使わなくなったものをバザーに出品したりと、多くの方々の協力があるとのことでした。

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それと同時に、運営者が地域で暮らす1人で居られることも大切にされています。

「実家の茶の間・紫竹」では大切にされている決まり事の1つに「その場にいない人の話をしない(ほめる事も含めて)」というものがあります。この決まり事が書かれた紙も部屋に掲示されています。
先日訪問した時、「もし、その場にいない人の話になったら、(当番は)どうするんですか?」と聞いたところ、河田さんは「決まり事が書かれた紙を指さす」と話されたことが印象に残っています。当番の中にも「実家の茶の間・紫竹」が運営する紫竹にお住まいの方がいる。そういう人が決まり事を守らないといけないと言えば、「何を偉そうに言ってるんだ…」と地域の人から思われる可能性があって、地域の人間関係がギクシャクしかねない。けれども、「掲示された決まり事を指させば、当番としての務めを果たしてるんだね、大変だねって思ってもらえる」と河田さん。
「個人として、孤立せずに居られる」場所を維持するためには、当番は時には耳の痛いことも言わなければならない。しかし、個人として言うのではなく「役割として言ったんだ」ということにしておく。それによって、その方の個人を守ろうとする配慮。決まり事や役割というと人間関係において堅苦しいものだと思われることもありますが、決まり事を明確にしておくこと、役割がきちんとあることが、結果として地域で暮らす個人としての尊厳が守られるのだということに気づかされました。

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一度訪れただけであれこれ言える立場でもありませんが、第一印象としてどう感じたかも意味があるかと思いましたので、「実家の茶の間・紫竹」を訪問して感じたことをご紹介させていただきました。