『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

山岸仮設の同窓お茶っこ会に向けて

大船渡市末崎町の末崎小学校校庭に、山岸仮設(山岸団地)という仮設住宅がありました。58戸の仮設住宅で、東日本大震災から2ヶ月後の2011年5月11日に完成。2016年6月末に閉鎖されるまでの約5年間にわたって暮らしの場になってきました。
既に撤去工事も完了しており、2016年12月6日は小学校による「おかえりなさい校庭の会」が、2017年5月20日は震災後初となる「こいのぼり大運動会」が開催されています。

山岸仮設では元住民による「同窓お茶っこ会」が定期的に開かれてきました。
2016年7月10日、山岸レディース(婦人会)主催で、仮設住宅集会所で続けられてきたヨーガ・セラピーの講師へのお礼を兼ねた食事会が開かれ、約20人が参加。この日の集まりで、これからも集まりを継続したい、女性だけでなく男性や支援員にも声をかけるのはどうかという声があがったため、2017年2月12日、山岸仮設の(旧)自治会主催で「同窓お茶っこ会」が開かれました。「同窓お茶っこ会」には約30人の参加があり、今後も年に2回、「同窓お茶っこ会」を開催することが話し合われました。

そして、今月、山岸仮設の(旧)自治会が主催する2回目の「同窓お茶っこ会」が開催されることになっており、本日(2017年9月12日)、「居場所ハウス」にて打合せが行われました。
打合せに参加されたのは山岸レディースの役員だった方々と、山岸仮設の支援員をされていた方。山岸仮設に入居したのは、主に末崎町の門之浜、小細浦、小河原の3地区の住民であり、それぞれの地区から1人ずつ、山岸レディースの役員が選ばれたという経緯があり、それぞれの地区の代表というかたちで「同窓お茶っこ会」の幹事をつとめておられます。

本日の打合せでは、「同窓お茶っこ会」の流れ、食事、予算などについての確認が行われました。「同窓お茶っこ会」を楽しみにされている方もいたようで、次にいつ開催するのかと催促されたという話、他の仮設住宅の方から羨ましがられるという話も聞きました。
当日は、山岸仮設の写真をスライドショーにしたDVD(支援員の方が制作されたDVD)を上映してはどうかという提案もありました。機器の使い方を確認するため、試しにスライドショーのDVDを上映したところ、こんなこともあった、あんなこともあったとスライドショーに見入っておられました。また、震災から年月が経過し少しずつ震災のことを忘れていくから、震災の時の話をして、当時を振り返るのはどうかという提案もありました。

現在でも仮設住宅にお住いの方がいる状況では、一概に仮設住宅の暮らしを語ることはできないかもしれませんし、仮設住宅で暮らした方にしかわからない思いもあるかもしれませんが、仮設住宅から退去した後も、仮設住宅での暮らしを共にした人と集まり、その暮らしを大切にしながら振り返ろうとしている方々がいること。そのための集まりを、行政に声をかけられたわけでも、支援員に声をかけられたわけでもなく、元住民が自主的に開こうとされていること。このことは、忘れてはならないことです。
仮設住宅というのは、高台移転するまでの間の一時的な「仮の住まい」、高台移転すれば忘れ去られる「仮の住まい」では決してないということだと考えています。

今日の打合せで、1人の方が次のような話をされました。みなの元気な顔を見て、あの時に戻る。それだけで集まる意味があるんだよ、と。