先日、千里ニュータウンのコミュニティ・カフェ(まちの居場所)である「ひがしまち街角広場」を訪問しました。
新千里東町の近隣センター(商店街)の空き店舗を活用して開かれている場所。2001年9月30日のオープン以来、住民ボランティアによって運営が継続されています。
「ひがしまち街角広場」を訪れていつも驚くのは、常に人の出入りがあり、常に過ごしている人がいること。この日は非常に寒い日でしたがテニス帰りの男性グループを始め、10人ほどが過ごしておられました。また、閉店する16時の30分ほど前にもお茶を飲みに立ち寄る人がいました。
各地のコミュニティ・カフェ(まちの居場所)では様々なプログラム、イベントが開催されている場所が多い中、「ひがしまち街角広場」ではプログラム、イベントはほとんど行われていません。食事の提供もされていません。日曜を除く10時から16時まで運営していて、コーヒー、紅茶などの飲み物が100円の「お気持ち料」で提供されているだけ。それにも関わらず絶えず人の出入りがあるということは、居心地がいい場所になっているのだろうと思います。
常連ばかりで入りにくい、扉が1つなので入りにくい(移転前は近隣センターの角地にあったので扉が2つあった)という意見もあるようですが、常連以外の人も受け入れるような許容力、常連でない人でも過ごせるような居心地の良さがある。
それに加えて、「ひがしまち街角広場」は地域で何が不足しているのかについて的確な問題意識があったことも継続の要因だと考えています。
「ニュータウンの中には、みんなが何となくふらっと集まって喋れる、ゆっくり過ごせる場所はありませんでした。そういう場所が欲しいなと思ってたんですけど、なかなかそういう場所を確保することができなかったんです」
「ひがしまち街角広場」の初代代表の言葉ですが、自分たちの地域には何が不足しているのか、それに対して「ひがしまち街角広場」は何を実現するのかという的確な判断がなされたし、それが継続されている。
「ひがしまち街角広場」はささやかな活動のためかあまり注目されませんが、建設省(現・国交省)の「歩いて暮らせる街づくり」事業、豊中市の社会実験という行政が作ったきっかけを、住民が引き継ぎ、その後は補助金を一切受けずに運営されているというのは、1つのモデルだと思います。
そうは言っても、オープンからの16年間の間に、地域の状況は刻々と変わりつつあります。その1つが住民の高齢化。
最近の動きで興味深いのは、「ひがしまち街角広場」自体の機能は変わらないが、近隣センターに生まれた他の場所との連携によって、結果として高齢化への対応が行われつつあること。
新千里東町の近隣センターには、空き店舗を活用して社会福祉法人・大阪府社会福祉事業団の豊寿荘による「あいあい食堂」が生まれています。「あいあい食堂」では体操、囲碁などのプログラムが行われているため、その行き帰りに「ひがしまち街角広場」に立ち寄る人もいます。「あいあい食堂」でのイベント案内や食事のメニューがが「ひがしまち街角広場」に掲示されたり、食事を「ひがしまち街角広場」まで配達してくれたり。「あいあい食堂」との連携は、「ひがしまち街角広場」にない機能を補うものとなっており、興味深い動きだと思いました。
「ひがしまち街角広場」では、目的を持って訪れる場所しかない地域では息苦しい。目的がなくてもふらっと立ち寄れ場所が不可欠である。このように地域の暮らしとはどういうものかという(新たな)モデルの提案がされている。こうしたモデルが持つ価値をすくいあげていける概念を生み出していくことが、今、(専門家や研究者には)求められているような気がします。コミュニティ・カフェ(まちの居場所)の評価とは、そいうことではないかと思います。