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デジタル公民館まっさきのパソコン&スマートフォン相談会(2017年12月):地域を越えた関わりを継続すること

先日(2017年12月9日(土))、ふるさとセンター(末崎地区公民館)にて「デジタル公民館まっさき」のパソコン教室が開催されました。
東日本大震災の後、霞ヶ関ナレッジスクエア(KK2)のコーディネートにより、東京からのITボランティアの方がの支援により続けられてきた活動の1つが、パソコンのよろず相談。今年度からは末崎町の人々が中心となり、パソコン教室というかたちで継続されることとなりました。第9回目となる先日のパソコン教室には末崎町、陸前高田市の小友町から、初参加の方も含めて約10人が参加。さらに、先日のパソコン教室には、翌日のミニ門松作りに合わせて、東京などからの自称「よそ者メンバー」9人にもお越しいただき、また、大船渡市地域おこし協力隊の2人にも参加していただきました。

パソコン教室ではFacebookのアカウント作成、スマートフォンでのFacebookのMessengerの使い方、Facebookに登録した電話番号のここと、新しく購入したWindows 10のパソコンのことなど、パソコンやスマートフォンなどの様々な相談事への対応が行われました。

この後、パソコン教室の振り返りと、来年度の「デジタル公民館まっさき」の活動などについて意見交換会が開かれ、次のような話が出されました。

  • デジタル公民館まっさきの活動は来年度も継続したい。
  • 最近、パソコン教室の参加者が少なかったため、知り合いに声をかけて少しずつ輪を広げていきたい。
  • ふるさとセンターのネット環境(無線LAN)はパソコン教室の参加者のためだけではない。ただし、パソコン教室だけではハードルが高く感じる人がいるかもしれないので、例えば、ふるさとセンターで行われているサークル活動の情報を発信することで、パソコン教室に関わりのある人を増やすとともに、それぞれのサークルの参加者も増えるようにするなどの工夫もしていきたい

また、東京の方々が名乗る「よそ者メンバー」という表現については、疎遠な感じがするので、親しい隣人など、新しい表現を作った方がいいのではないかという意見もありました。

上に書いた通り、「デジタル公民館まっさき」は東日本大震災後、霞ヶ関ナレッジスクエアの呼びかけによりスタートした活動です。
東日本大震災後、末崎町にも多くの団体・個人のボランティアが訪れ、様々な支援活動が行われてきました。震災から6年半が経過し、既に活動を終えている活動も多い中で、「デジタル公民館まっさき」は現在でも継続されている活動の1つ。支援者による活動が終わっていくの復興が進んだことの現れであり、また、復興が進む中で支援する/支援されるという一方的な関係が続くことは好ましくないかもしれません。
その一方で、今後も高齢化、人口減少が進む地方部の地域にとっては、自分たちの地域に関心を持ってくれる人、遠くからでも応援をしてくれる人、時々訪問してくれる人などを増やしていくことは大切です。そして、東日本大震災がなければ東北と出会うことがなかった人が多いことを考えると、東日本大震災をきっかけに築かれた関係を(たとえ細く長くであっても)絶やさずに、継続していくことは大切です。

先日のパソコン教室後の意見交換会の話を聞いていて、地域の外部からの継続的な訪問を実現する上で、いくつかのヒントをいただけたような気がします。

○顔の見える相手がいる
意見交換会では「自分の田舎よりも、末崎の人の方が親戚の人みたいな感じがする」、「末崎に行くことを電話でお知らせできるような関係があるのがいいと思った」という話が出されていましたが、支援活動を通して築かれた顔の見える関係は、支援活動が終わった後も、かたちを変えて継続できる可能性がある。

○訪問する用事がある
「Facebookはあくまでも用事を伝え合うための道具なので、伝える用事がなければ使い方を忘れてしまう」という話が意見交換会では出されました。当然のことかもしれませんが、訪れるきっかけになる用事がある、訪れた時にする用事があることは、間違いなく地方を訪れるための大きなきっかけ。「デジタル公民館まっさき」の場合は、パソコンやFacebookが用事を作り出すきっかけの1つになっているのだと思います。

○学び合える機会がある
意見交換会で印象に残っているのは、東京からのメンバーはパソコンを教えに来ているが、一方的に支援をするために来ているとは認識していない。末崎から学ぶことが多いから、今でも継続して来ているのだという意見です。特に人生100年時代において高齢者はどう生きるか? 首都直下型地震の発生が予想される中でどのような備えができるか、地震をどのように乗り越えるか? については学ぶことが多いのだと。地域の外部の者にとっては、地域で当たり前のものとしてある日常それ自体から、多くのことを学ぶことができます。そして、地域の人々がこのことに意識的になり、学びの機会を意識的に提供できるようになれば、それは地方と都市の間でお金の流れを生み出し、地方発のビジネス、さらには地方創生といったことにもつながっていくのだと思います。