『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

居場所ハウス、オープンから5年間の来訪者

大船渡市末崎町の「居場所ハウス」は間もなくオープンから5周年を迎え、6月16日(土)には五周年記念感謝祭を開催予定です。

2013年6月13日のオープンから2018年5月末までの来訪者を集計したところ次のようなことがわかりました。

  • オープンから2018年5月末までの運営日数は1,503日、延べ来訪者数は33,849人。1日平均にすると約22.5人。
  • 来訪者数はオープンから日数が経過するにつれて増加する傾向がある。
  • イベントが有る日の方が、無い日よりも来訪者数が多い。
  • オープンから2017年12月末までの重複を除いた「来訪者」の合計は2,727人。
  • 1人の「来訪者」の来訪回数は、オープンから日数が経過するにつれて増加する傾向が見られる(→運営の中核になるメンバーの確立、スタッフ・来訪者の固定化)。
  • 来訪者はオープンからほぼ一定して男性が約3〜4割、女性が約6〜7割(→女性がほとんどのコミュニティ・カフェが多いのに対して、男性が一定するいることは「居場所ハウス」の特徴)。

「居場所ハウス」は2015年5月3日から、屋外に建設したキッチンを利用して食堂の営業をスタートさせました。2018年5月で食堂のオープンから3年になります。食堂の利用者数について次のようなことがわかりました。

  • 食堂オープンから2018年5月末までの運営日数は906日、述べ利用者数は8,138人。1日平均にすると約9.0人。
  • 食堂利用者数はオープンから日数が経過するにつれて増加する傾向が見られる。
    来訪者に対する食堂利用者の割合は約4割。
  • イベントの無い日の方が、有る日よりも、来訪者に対する食堂利用者の割合が大きく、5割を超える月もある(→昼食を食べに来ることが、「居場所ハウス」に来る1つのきっかけになっている)。

以下、これらの結果を詳しくみていきたいと思います。

来訪者数の推移

「居場所ハウス」は週に6日(木曜は定休日。ただし、2013年6月13日〜6月末までは週7日運営)の運営を継続してきました。オープンから2018年5月末までの運営日数は1,503日。ゲストブックによると延べ来訪者数は33,849人、1日平均にすると約22.5人となります。

月ごとの来訪者数の平均をみると、オープン当初は15人を推移していましたが、その後は20〜25人を推移。30人を超える月も見られるようになり、来訪者数はオープンから日数が経過するにつれて増加する傾向が見られます。

*回帰分析によれば、来訪者数とオープンからの経過日数との関係は、係数=0.0057、P値=0.000(<0.05で有意)となり、オープンからの日数が経過するにつれ、来訪者が増加していると言える。日数が1日経過すれば、来訪者が0.0057人増加、つまり、175日経過するにつれ来訪者が1人増加している計算になる。 「居場所ハウス」では各種の教室、会議、音楽のコンサートなど様々なイベントが行われています。イベントの有無による来訪者の違いをみると、イベントの有る日の平均来訪者数は約25.6人(運営日数759日、延べ来訪者数19,433人)、イベントの無い日の平均来訪者数は約15.5人(運営日数695日、延べ来訪者数10,779人)で、イベントの有る日の方が来訪者が多くなっています。また、イベントの有る日、無い日とも、オープンからの日数が経過するにつれて来訪者は増加しています。

*回帰分析によれば、イベントが有る日の来訪者数とオープンからの経過日数との関係は、係数=0.0032、P値=0.000(<0.05で有意)。 *回帰分析によれば、イベントが無い日の来訪者数とオープンからの経過日数との関係は、係数=0.0027、P値=0.000(<0.05で有意)。

重複を除いた「来訪者」

以上は延べ来訪者数の集計結果でしたが、ここでは重複を除いた来訪者についてみていきます。
「居場所ハウス」ではオープン以来、ゲストブックによって来訪者をカウントしています。オープンから2017年12月末までのゲストブックにおいて、来訪者が記入されたとみなせる25,606件のうち、個人が特定できるのが23,401件で約91%。延べ来訪者23,401人のうち、重複を除いた「来訪者」は2,727人。つまり、オープンから2017年12月末までの期間に2,727人が来訪していることが特定できます。

「来訪者」2,727人のうち、来訪回数が1回だけの人が約66%、来訪回数が3回以下の人が80%、来訪回数が7回以下の人が90%、来訪回数が17回まで人が95%となっています。一方、来訪回数が1,000回を超える人は2人。いずれも、コアメンバーの男性です。

延べ来訪者数と、重複を除いた「来訪者」の合計の推移のグラフをみると、「来訪者」の合計は、オープン当初は1月に合計200~250人で、2014年3月には300人近くになっている。その後は延べ来訪者数が徐々に増加していく一方、「来訪者」の合計は大きな変化は見られず150人前後を推移していることがわかります。延べ来訪者数と「来訪者」数の割合、つまり、1人の「来訪者」が1月に平均何回来訪しているかの推移をみると、オープン当初は2回程度であったのが徐々に増加しており、最近では4~5回の間を推移していることがわかります。

比較できる他の場所(まちの居場所、コミュニティ・カフェ)のデータがないため、この結果をどう解釈するかは難しいですが、運営の中核になるメンバーが生まれつつあると捉えることもできますし、同時に、スタッフ・来訪者(常連)が固定化しつつあると捉えることもできます。

次に重複を除いた「来訪者」の性別をみると、オープンから2017年12月までほぼ男性が3〜4割、女性が6〜7割と大きな変化がないことがわかります。スタッフ・来訪者のほとんどが女性であるまちの居場所(コミュニティ・カフェ)が多いのに対して、男性も一定数いることが「居場所ハウス」の特徴だと言えます。

食堂利用者数の推移

当初、「居場所ハウス」は飲物のみを提供していましたが、周囲に食事ができる店がないため昼食も提供したいという話が出されるようになりました。そこで一時期、キッチンカーを借りていた時期もありますが、2015年1月から敷地の北西角(月見台の奥)にキッチンの建設を開始。2015年5月3日から、屋外に建設したキッチンを利用して食堂の営業をスタートさせました。食堂オープンから2018年5月末までの運営日数は906日、述べ利用者数は8,138人。1日平均にすると約9.0人。
月ごとの利用者数の平均は、2017年半ばまでは平均利用者数が8人を下回る月もありましたが、最近では8人を上回っており、食堂利用者数はオープンから日数が経過するにつれて増加する傾向が見られます。

*回帰分析によれば、食堂利用者数とオープンからの経過日数との関係は、係数=0.0014、P値=0.016(<0.05で有意)。 イベントの有無による違いをみると、イベントが有る日の平均利用者数は10.3人(運営日数492日、述べ利用者数5,091人)、イベントが無い日の平均利用者数は7.3人(運営日数377日、述べ利用者数2,786人)で、イベントの有る日の方が食堂利用者数が多くなっています。また、イベントが有る日については、オープンから日数が経過するにつれて食堂利用者数が増加する傾向が見られます。

*回帰分析によれば、イベントが有る日の食堂利用者数とオープンからの経過日数との関係は、係数=0.0029、P値=0.001(<0.05で有意)。 *回帰分析によれば、イベントが無い日の食堂利用者数とオープンからの経過日数との関係は、係数=0.0000138、P値=0.984(>0.05で有意でない)。

来訪者数に対する食堂利用者の割合、つまり、来訪者のうちどのくらいの割合の人が食堂を利用しているかは、約4割となっています。イベントの有無による違いをみると、イベントの無い日の方が、有る日よりも、来訪者に対する食堂利用者の割合が大きく、5割を超える月もある。このことからは、昼食を食べに来ることも、「居場所ハウス」に来る1つの大きなきっかけになっていることが伺えます。


  • 来訪者数、食堂利用者数には「居場所ハウス」のスタッフも含まれる。
  • 来訪者数には「学びの部屋/時間」の参加者は含まれていない。「居場所ハウス」では、2017年4月から一般社団法人・子どものエンパワメントいわてによる「学びの部屋」(2018年4月からは「学び時間」)が毎週月・火・金の夜間開催され、小中高生の子どもが参加。2017年4月から2018年5月末までに168回が開催され、参加した子どもの延べ人数は1,869人。1回あたりの平均参加人数は11.1人。
  • 来訪者数、食堂利用者数について、イベントの有無を比較する場合は、おおよその人数でしか来訪者数が把握できない大きなイベントが行われた日は除外して集計。除外した大きなイベントは以下の通り:2014年10月以降の毎月の「朝市」、毎年3月の「鯉のぼり祭り」、毎年6~7月の「周年記念感謝祭」、毎年8月の「納涼盆踊り」、2014年11月24日の「居場所感謝祭」、2016年4月16日の「交流歓迎会・朝市」。
  • 「居場所ハウス」の歩みは、『岩手県大船渡市「居場所ハウス」の歩み:プロダクティブ・エイジング実現に向けた先駆的取り組みの考察』(長寿社会開発センター・国際長寿センター 2018年3月)もご覧ください。