『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

災害公営住宅から一般の集合住宅へ@大船渡市末崎町の平南アパート

少し前、「居場所ハウス」に大学生がやって来ました。卒業論文のため、「居場所ハウス」の近くにある災害公営住宅「平南アパート」の調査をしている方で、調査の一環で「居場所ハウス」にも立ち寄ったとのこと。

大船渡市末崎町には3ヶ所の災害公営住宅が建設されました。集合住宅形式の平団地(11戸)、平南アパート(55戸)と、戸建て住宅形式の泊里団地(6戸)です。平団地、平南アパートは「居場所ハウス」の近くに立地。泊里団地は碁石方面に立地し、防災集団移転促進事業の17戸とあわせて「りあすの丘」として整備されています。

平団地は2014年5月に、平南アパートは2016年6月1日に入居開始。「りあすの丘」は2017年5月5日に街びらき。


被災者の主な高台移転先は自立再建、防災集団移転、災害公営住宅への入居の3つがありますが、末崎町の様子を見ていると、

  • 新たに戸建住宅を建設できる人(金銭的なことも含めて):自立再建、防災集団移転
  • 新たに戸建住宅を必要としない人、建設できない人:災害公営住宅への入居

という傾向が見られます。
これにより、若い世代からなる世帯、高齢者が若い世代と同居している世帯は自立再建、防災集団移転を、高齢の夫婦世帯・単身世帯は災害公営住宅への入居を選ぶというように、結果として属性による違いが生まれたように思います。平南アパートも例外でなく、当初の入居者の多くは高齢者でした。
しかしその後、空き住戸ができたことから、現在は一般の入居者が募集されており、小さな子どものいる家庭も見られるようになりました。この意味で、平南アパートは災害公営住宅から、一般の集合住宅へと徐々に移行している。多様な世代が生活する住宅になることとは、災害公営住宅が一般の集合住宅になっていくことと捉えることができるかもしれません。

調査に来られた方の話では、

  • 4階建ての平南アパートの1階にもうけられた集会所では、毎週火・金にカラオケが開催されるなど活発な活動が行われていること
  • カラオケへは平南アパート以外からの参加もり、災害公営住宅内外の関わりが生まれていること
  • 平南アパートに隣接する休耕地を借りて、農園(平南農園)を作ったり、グランドゴルフの練習場を作ったりと、自分たちで環境を作り変えていること

が興味深いということでした。

他の地域の災害公営住宅には、あらかじめ農園が計画されたところもあるようですが、自分たちで農園を作ってるのは珍しいと思うとのこと。

平南アパートの住民の中で、車を運転しない人はどこで買物をしているのかという質問がありましたので、生協の移動販売車が毎週2回、平南アパートの駐車場に来ているので、生協を利用している人がいたり、BRTを利用して買物に行っている人がいるということをご紹介しました。