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スマートフォンを利用したサンフランシスコのMUNIメトロ・バスの乗車方法(2019年10月)

サンフランシスコはMUNIのメトロ・バスの路線が縦横に走っており、MUNIメトロ・バスを利用しての移動が非常に便利です。
MUNIはサンフランシスコの公共交通の1つで、San Francisco Municipal Railwayの略。メトロ(地下鉄+路面電車:路線番号がJ・K・T・L・M・N・Sのローマ字で表記されている7路線)とバス(路線番号が数字で表記されている)の2種類があります。

MUNIには現金、Clipper Card、スマートフォンのMuniMobileのアプリケーションを利用して乗車できます。
MUNIは、メトロ・バスいずれも距離に関わらず運賃は一定。現金の場合はお釣りが戻ってこない場合があるため、Clipper Card、あるいは、MuniMobileのアプリケーションを使うと便利。1回の運賃も現金が2.75ドルに対して、Clipper CardとMuniMobileは2.5ドルと安くなっています。また、海外では駅員・乗務員とのやり取りも不安なため、Clipper Card、MuniMobileの利用がおすすめです。

Clipper Cardでの乗車方法

Clipper Cardは、日本でいうSUICAのようなカードで、事前に現金をチャージして利用します。MUNIに加えて、サンフランシスコ国際空港とサンフランシスコ市内を結ぶBART(Bay Area Rapid Transit)、サンフランシスコ市内とベイエリア南部を結ぶCalTrainなどでも利用可能。
Clipper Cardの購入、現金のチャージはMUNI、BARTの駅の自動販売機で行うことができます。

Clipper Cardを使ってMUNIメトロ・バスに乗る方法は以下の通りです。

改札口のある駅から乗車する場合は、改札口でClipper Cardをタッチするとゲートが開きます。一方、改札口のない停留所から乗車する場合は、メトロ・バスに乗車し、扉付近にある読み取り機にClipper Cardをタッチします。
降車する時はClipper Cardをタッチする必要はありません。

MUNIメトロ・バスは最初の乗車から2時間以内であれば、何度乗車しても2.5ドル。2時間以内であれば乗り換え(Transfe)の扱いとなり、Clipper Cardをタッチしても代金が請求されることはありません。

MuniMobileでの乗車方法

MuniMobileはMUNIメトロ・バスにしか乗車できませんが、Clipper Cardを購入したり、現金をチャージしたりする必要がないというメリットがあります。

Clipper Cardのチャージは駅の自動販売機でしか行えません。停留所から乗車する際、チャージの残額がなくならないように気をつけておかなければなりませんが、MuniMobileではその心配がありません。

MuniMobileを使ってMUNIメトロ・バスに乗る方法は以下の通りです。なお、アプリケーションの画面は記事作成時のもので、アプリケーションのバージョンアップにより、画面が変わる可能性があります。

MuniMobileのダウンロード・アカウント作成

iOS版、あるいは、Android版のMuniMobileのアプリケーションをダウンロード。最初にアカウントを作成(名前、Emailアドレス、パスワード)。次に「Account」の「Payment Methods」を開き、支払いに利用するクレジットカードを登録します。日本のクレジットカードでも登録することが可能です。

ここまでの準備ができたら、実際にMuniMobileを使ってMUNIメトロ・バスに乗車します。

チケットの購入

乗車前にチケットを購入しておく必要があります。画面下部の「Tickets」のタブ画面で、下部に表示されている「Buy Tickets」をタップします(左)。「Choose a Rider」の画面になるため、乗車する人の属性を選択します(中央)。ここでは「Regular Adults」を選択しました。「Choose Your Fare」の画面で、希望するチケットの種類を選択します(右)。

「Regular Adults」では、次の種類のチケットを購入することができます。

  • Muni Bus & Rail(購入から180日間利用可能):2.50ドル。有効化してから2時間以内なら何度でも乗車可能。ケーブルカーには乗車不可
  • 1-Day pass(No Cable Car)(購入から180日間利用可能):5.00ドル。1日間、何度でも乗車可能。ケーブルカーには乗車不可
  • Single Ride Cable Car(購入から180日間利用可能):7.00ドル。ケーブルカーに1回乗車可能
  • 1-Day Passport(購入から180日間利用可能):12.00ドル。ケーブルカーを含め、1日間、何度でも乗車可能
  • 3-Day Passport(購入から180日間利用可能):29.00ドル。ケーブルカーを含め、3日間、何度でも乗車可能
  • 7-Day Passport(購入から180日間利用可能):39.00ドル。ケーブルカーを含め、7日間、何度でも乗車可能

希望するチケットをタップすると、「Buy Tickets」の画面になるため、購入する枚数を選択し、画面下部の「Checkout」をタップします(左・中央)。
スマートフォンの種類に応じた認証が行われ(iPhone XSの場合はFace IDによる認証が行われました)、「Confirm」をタップするとチケットの購入が完了します(右)。

チケットの有効化

購入したチケットの種類と枚数は「Stored」の部分に赤く表示されます(左)。チケットは、あらかじめ複数枚購入しておき、ストックしておくことが可能。それぞれの有効期限(ストック可能な期限)は「Expires」として表示されています。
MUNIメトロ・バスに乗る前に、チケットの有効化を行います。「Stored」の部分に表示されている中から、有効化したいチケットをタップ。複数人分のチケットを有効化したい場合は、この画面で人数を選択します。そして、下部の「Use Ticket」をタップすると有効化が完了します(中央)。有効化したチケットは、「In Use」の部分に緑で表示されます(右)。これで乗車の準備が整いました。

「Muni Bus & Rail」のチケットは、有効化してから2時間以内という期限があるため、何度か乗車する予定がある場合は、乗車直前に有効化の手続きを行うのがおすすめです。

メトロ・バスへの乗車

「In Use」の部分に緑で表示されている有効化済のチケットをタップすると、チケットが有効期限とともに表示されます。有効期限は「Muni Bus & Rail」の場合は有効化の操作をした時点から2時間後(左)、「1-Day pass」の場合は有効化した翌日の00:00と表示されます(中央)。
改札口のある駅から乗車する場合は駅員に、改札口のない停留所から乗車する場合は(運転手の脇を通る場合は)運転手にこの画面を提示します。
ただし、一番前の扉から乗車しない場合は運転手の脇を通らない場合は、有効化した画面を提示する必要はありません。扉付近にClipper Cardの読み取り機がありますが、スマートフォンを読み取り機にタッチすることはできません。
なお、降車する時は画面を提示する必要はありません。

使用済みのチケットは、「PURCHASED HISTORY」(購入履歴)の部分に表示されています(右)。この部分をタップすることで、同じ種類のチケットを購入することも可能です。


日本でもSUICAのカードやスマートフォンのアプリケーションを使って電車やバスに乗ることができますが、乗降車時の方法が日本とMUNIでは異なっています。

日本では乗降車時にチケットの読み取りにより自動改札を通過するため、特に自動改札が整備された都市部では無賃乗車をすることができません(物理的に自動改札を通過することができない)。
それに対して、特にMUNIメトロ・バスを改札口のない停留所から乗車する場合は、Clipper Cardを読み取り機にタッチしたことや、MuniMobileのチケットを有効化していることは誰にもチェックされません。個々人がClipper Cardをタッチしたり、MuniMobileのチケットを有効化したりしているという信頼の上に成立するシステムだと言えます。従って、原理的には無賃乗車をすることは可能です。
ただし、時々車内で検札が行われ、Clipper Cardをタッチしていなかったり、有効なMuniMobileのチケットを持っていないと罰金を支払わなければなりません。

日本のシステムとMUNIのシステムのどちらが優れているかは一概には言えませんが、次のような違いがあります。
日本の場合、お金をかけ自動改札機という設備を設置して、無賃乗車をなくすことが考えられる。それに対してMUNIの場合は無賃乗車が行われる可能性があるとしても、設備にお金をかけることなく自由に乗車できるようにしておく。そして、時々、車内での抜き打ちの検察を行う。自動改札機を設置するための費用と、無賃乗車によって失われる費用のどちらが大きいのだろうか、と感じます。

何よりも大きな違いは、日本のシステムは無賃乗車を物理的に(環境によって)防止することが考えられているのに対して、MUNIのシステムは個々人がClipper Cardをタッチしたり、MuniMobileのチケットを有効化したりしているという信頼の上に成立している。日本のシステムは性悪説に、MUNIのシステムは性善説に立ったものという違いがあると言えます。どちらが好ましい社会のあり方なのだろうかと考えてしまいます。