『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

千里ニュータウン・新千里東町近隣センターの再開発

再開発が進められている新千里東町近隣センターは、間もなく新たな店舗への入居が始まります。ここでは、新千里東町近隣センターについてご紹介します。

再開発前の新千里東町近隣センター

千里ニュータウンは近隣住区論に基づき、12の住区が開発されました。それぞれの住区の中心として計画されたのが近隣センターです*1)。近隣センターには、歩いて日常生活を送れるように日用品を扱う店舗や公衆浴場、集会所などがもうけられました。それぞれの店舗は分譲され、2回部分が住宅になっている店舗(店舗付住宅)もありました。千里ニュータウンの近隣センターのうち、既に藤白台の近隣センター、高野台のサブ近隣センターは全面的な再開発が行われました。また、佐竹台のサブ近隣センターは廃止され、戸建住宅地として再開発されています。
新千里東町近隣センターの再開発はこれらに次いで行われるものです。ただし、これまでの藤白台近隣センター、高野台サブ近隣センターの再開発は同じ敷地での再開発であったのに対して、新千里東町近隣センターの再開発は、初めての敷地を移転しての再開発となります。

まち開き当初の新千里東町近隣センター

新千里東町は1966年から入居が始まりました。当時の新聞記事には、新千里東町(J住区)の近隣センターが次のように紹介されています。

「このJ1近隣センターには、どんな施設ができるかを見てみると
①管理棟には管理事務所のほか郵便局、派出所、集会室(二階)が設けられる。なお、この管理棟の上二—五階は、ニュータウン商業施設に従事する方々が入居する併存住宅3DK四戸、2DK十六戸計二十戸が設けられる。
②マーケットは今月下旬ごろより開店する予定で内装工事中。
③公衆浴場もこの月の下旬ごろより開店する予定。
④店舗付住宅十一戸(たばこ書籍文房具・衣料品・薬局化粧品・飲食店・美容・理容・電気器具・荒物金物・菓子パン牛乳・酒調味料・米穀)が設けられる。このほか専用店舗一戸は洋菓子・喫茶店である。
J1近隣センターは、全体としてはほぼ正方形の四辺に建物が配置され、店舗などの正面入口はすべて外側に向き、商品搬入や荷捌きは内側で行なわれるように設計されているので、外観上そのようなものは余り目立たないようになっている。」
※「J住区(新千里東町)近隣センター:五月下旬より開店」・『千里』第18号 1966年5月5日

配置図を見ると、近隣センターの北西角(移転前の「ひがしまち街角広場」が運営されていた場所)は店舗でなく、2階の喫茶店にあがる螺旋階段が描かれていることがわかります。また、近隣センターの南西角の1階(集会室の下)には部屋は作られていなかったこともわかります。

新千里東町近隣センターの店舗の変化

近隣センターは住区の中心となる場所として設けられましたが、車社会化の進展や、集合住宅の住戸内への風呂場の増築などの生活環境の変化に伴い、次第に空き店舗が目立つようになっていきました。これは新千里東町近隣センターも例外ではありません。
2001年9月30日にオープンした「ひがしまち街角広場」は空き店舗を活用して開かれたコミュニティ・カフェです。

(ひがしまち街角広場)

新千里東町近隣センターの特徴

(新千里東町近隣センターの全景)

新千里東町近隣センターにはいくつかの特徴があります。1つ目は住区をめぐる歩行者専用道路に面して立地していること。これにより、自動車に接触することなく買い物などをすることが可能になっています。
ただし、再開発によって店舗が歩行者専用道路から切り離された敷地に移転することになります。

(歩行者専用道路。正面が近隣センター)

(歩行者専用道路。左側が近隣センター)

2つ目は、先に紹介した新聞記事にも書かれているように、店舗などが「コ」の字型に配置されていること。店舗などが「コ」の字型に配置されているのは、千里ニュータウンの中で新千里東町の近隣センターだけです。
「コ」の字の外周にそってアーケードが設置され、「コ」の字の内側に駐車場がもうけられることで、近隣センター内でも自動車を接触することなく買い物などをすることが可能になっています。

(近隣センターの店舗)

(スーパーマーケット)

(「コ」の字の内側の駐車場)

3つ目は近隣センターの北西角、南西角が広場になっていること。広場は歩行者専用道路とつながっており、日常的には子どもたちの遊び場となっています。また、「ひがしまち街角広場」が周年記念行事を開いていたのも北西角の広場です。

(南西角の広場)

(北西角の広場)

(北西角の広場での「ひがしまち街角広場」の周年記念行事)

4つ目は要員住宅(併存住宅)があること。これは、近隣センターにおける店舗経営者またはその従業員用で、新千里東町近隣センターには郵便局が入居する建物の2〜5階部分に、20戸の住宅があります。

(要員住宅(併存住宅))

新千里東町近隣センターの再開発

新千里東町近隣センターの再開発は2009年度から地権者などによる建替えの検討が進められ、2012年11月に市街地再開発準備組合が設立。2017年3月には市街地再開発事業の実施に必要な都市計画決定がなされました。2018年6月には市街地再開発組合が設立され、2020年3月に建築工事に着手しています*2)。

新千里東町近隣センターの再開発は「土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図り、周辺地域と調和の取れた良好な市街地環境を形成する」ことを目的に行われるもので、次のような内容になっています*3)。

再開発前再開発後
東地区府営新千里東住宅(の敷地の一部)近隣センターの店舗、スーパーマーケット、分譲マンション
西1地区近隣センターの店舗、地区会館、郵便局、要員住宅分譲マンション
西2地区近隣センターのスーパーマーケット公益施設(地区会館、子育て支援施設、郵便局)
西3地区分譲マンション、病院(※かつての銭湯の建て替え)※変更無し

東地区の再開発

最初に府営新千里東住宅を高層化・集約化し、民間に売却する再生地(東地区)を作り出します。

再生地(東地区)の建築工事は2020年3月から始められ、現在、竣工間近となっています。2021年3月下旬には、各店舗の鍵の引き渡しが行われるとのこと。この後、店舗は順次、現在の近隣センターから東地区に移転していきます。現在、近隣センターにあるスーパーマーケット「青葉」は閉店となり、新たなスーパーマーケットが東地区に開店します。

2021年5月末には、現在の近隣センター(西1地区・西2地区の部分)の全ての店舗が閉鎖となります。
なお、空き店舗を活用して運営されている「ひがしまち街角広場」は例外的に2021年5月末以降も運営が継続されます。当初、西2地区の公益施設に「ひがしまち街角広場」を継承するカフェが開かれる予定であり、地域の人々が日常的に訪れる場所が再開発によって途切れないよう、西2地区の公益施設が完成する2022年夏頃まで運営されることが認められています*4)。

(竣工間際の東地区)

西地区の再開発

店舗の東地区への移転が完了した後、西2地区の工事が始まります。西2地区には地区会館、子育て支援施設、郵便局が入居する公益施設が建設予定。地区会館の一画には地域自治協議会が運営するカフェが開かれることになっています。
西2地区の公益施設が完成する2022年夏頃、現在の近隣センター(西1地区の部分)に残っていた地区会館、郵便局が、新たな公益施設(西2地区)に移転します。

2022年夏頃の時点で、現在の近隣センター(西1地区の部分)が完全に閉鎖され、この後、分譲マンションへの建て替えが進められることになります。


  • 1)各住区に近隣センターは1ヶ所ずつ設置されたが、前半に開発された佐竹台と高野台には2つ目のサブ近隣センターが設置された。ただし、佐竹台のサブ近隣センターは既に廃止されている。また、後半に開発された桃山台と竹見台は両住区の近隣センターが幹線道路を跨いで隣接して設置されているという特徴がある。
  • 2)豊中市「新千里東町近隣センター地区第一種市街地再開発事業について」(2020年4月1日更新)のページより。
  • 3)豊中市「新千里東町近隣センター地区市街地再開発事業に関連する都市計画の決定及び変更のお知らせ」のページより。
  • 4)西2地区の公益施設の地区会館の一画に、新千里東町地域自治協議会が運営するカフェが開かれることが計画されている。ただし、当初の議論が変わったことで、このカフェが「ひがしまち街角広場」を継承する場所になるわけでないことを懸念する声もある。詳細はこちらのページを参照。

(更新:2023年1月29日)