シンガポールにチョンバル(Tiong Bahru)というエリアがあります。再開発が進められる一方、今でもシンガポール・インプルーブメント・トラスト(Singapore Improvement Trust:SIT)が1930〜1950年代に建設した集合住宅が残されており、歴史的保存地区に指定されています。集合住宅の中には、Horse Shoe Block(馬蹄住棟)と呼ばれる馬蹄形(U字型)の平面をもつ特徴的な集合住宅も含まれています。近年では集合住宅をリノベーションしたカフェ、雑貨店が開かれたお洒落なエリアとしても知られています。シンガポール各地に店舗を構えるチョンバル・ベーカリー(Tiong Bahru Bakery)も、名前の通り、2012年にチョンバルで誕生しました。
(チョンバルの集合住宅)
(馬蹄形の平面をもつ集合住宅)
(ホーカー・センターが入居するチョンバル・マーケット)
チョンバル・マーケットの南側の、低層の集合住宅が建ち並ぶエリアに、かつての暮らしのシーンを描いた3枚のミューラル・アート(壁画)が描かれています*1)。
(ミューラル・アートが描かれているエリア)
アーティストのYC氏が、2016年に描いた作品で、子どもの頃の思い出がある場所の1つとして、チョンバルが選ばれたということです。当初、5枚のミューラル・アートが構想されていましたが、行政による許可申請に時間がかかったことや、予算の問題で、3枚のミューラル・アートが描かれました。
完成したミューラル・アートは以下の3枚です。
- Bird Singing Corner(71号棟の壁画):鳥かごと、鳥を眺めながらコーヒーを飲む人々という、かつてのチョンバルに存在した場所を描いた作品
- Pasar and the Fortune Teller(72号棟の壁画):マーケットのシーンと、占い師を1枚のミューラル・アートに融合させた作品。Pasarはマレー語でマーケットの意味
- Home(74号棟の壁画):1970年頃の集合住宅での一般的な暮らしを、アーティスト自らの記憶を再現することで描かれた作品
(Bird Singing Corner)
(Pasar and the Fortune Teller)
(Home)
実際に訪れると、いずれのミューラル・アートも、描かれている人物はほぼ実物大で、迫力がありました。集合住宅の暮らしの記憶を継承するための取り組みとして非常に興味深いと思います。
■注
- 1)チョンバルのミューラル・アートは、Art+Travel of YCの「The Story of YC’s Tiong Bahru Murals」のページを参照した。




















