太平洋沿岸に位置する大船渡市は気候が比較的暖かく、藪椿の太平洋沿岸の北限の地とされています(大船渡市の花は椿)。
椿は花を楽しむだけにとどまらず、生活に密着したもの。末崎町の古くからある家の庭には、大きな椿の木を見かけますが、椿の木は防風林として植えられたと聞いたことがあります。種を絞れば椿油になります。
「居場所ハウス」に来られている80代の方からは、椿油は、昔は頭髪につけたり、けんちん汁に使ったりしていたという話を聞きます。その後、菜種油が普及したため、次第に椿油は使われなくなったとのこと。
今年、大船渡市農林課では「椿狩り」(大船渡市椿利活用推進事業)が行なわれています。椿の種を買い取り、椿油を作るというもので、市内の何ヶ所かに回収BOXが設置。「居場所ハウス」も「椿狩り」に参加して種を集めており、これまでに何度かスタッフ・来訪者で椿の種を拾いに行きました。また、地域の方が椿の種を持って来てくださることもあります。
「椿狩り」で収集した椿の種は、加熱・非加熱の2つの方法で搾油が行われます。
- 加熱:種をそのまま蒸して絞る。黄色い椿油になり、食用油などに適している。
- 非加熱:種の殻を取り除き、剥き実を加熱せずに絞る。透明の椿油になり、化粧品の原料などに適している。
非加熱の搾油をするためには、種の殻を取り除く必要があり、これは1つずつ手作業で行う必要があります。「居場所ハウス」は種の収集だけでなく、殻とりの作業も請け負っています。
種の殻とりは昨年は自発的に行っていたものですが、今年は「椿狩り」の一部として請負うこととなりました。
「居場所ハウス」では、何歳になっても自分にできる役割を担える場所という理念を実現するために(もちろん作業は強制していませんが、出されたお茶を座って飲むだけより、何かするることがあった方がいいと話される方もいます)、「居場所ハウス」の運営資金を得るために、そして、椿にまつわる地域文化の継承・創造への協力のために、椿の種の殻とりを行なっています。