『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

椿油を作るための作業@居場所ハウス

今日(2018年3月30日(金))、「居場所ハウス」で3人の高齢の方が椿の種の殻を割り、中身を取り出す作業をしてくださいました。

大船渡は沿岸部にあるため気候は比較的温暖で、椿が自生する北限の地(大船渡はお茶の北限の地でもあります)。末崎町でも、かつては庭に椿を植え、絞った油を食用として利用したり、頭につけるために利用したりしていたとのこと。現在でも昔から続く家の庭には、大きな椿の木が見られます。
近年、椿油は美容・健康の点から注目されるようになっており、震災後、末崎町の碁石にも搾油所ができ、椿の種の買取が行われています。
「居場所ハウス」でも椿の種の回収所となっており、回収した椿の種を搾油所に販売しています。今日、3人の高齢の方が手伝ってくださったのは、搾油所に販売するための下準備の作業です。

3人は80代の方で、「家の庭にあった1本の椿から、家庭で1年間使う椿油を絞ることができた」、「昔の料理は、今のように油をたくさん使うものではなかった」、「昔は椿油しかなく、菜種油ができたのは後から」など思い出話をしながら、作業を手伝ってくださいました。
「ただ座ってお茶を飲んで、人の顔を見て時間を過ごすより、こうやってやることがあった方がいい」と、ありがたい言葉もかけてくださいました。

「居場所ハウス」は何歳になっても、一方的にサービスを受けるお客さんとしてではなく、自分にできることを通して地域に関わるきっかけを作ることを大切にしています。このことは例えば、今日見られたような光景に現れていると思いました。
加えて、椿の種から中身を取り出すという作業に付随して、椿油にまつわる貴重な思い出話を聞かせていただけたのは、この作業が(暮らしとは関係のないゲームではなく)暮らしに深く関わる作業だったからだと思います。もちろん、ゲームにはゲームの良さがありますが、暮らしに深く関わる作業もたいせつだということです。

もちろん、来てくださった方には、無理にお手伝いをしてもらうのではなく、楽しい時間が、充実した時間が過ごせるということが基本であることは言うまでもありません。