シンガポールの最新のニュータウン、プンゴル(Punggol)にツリーロッジ@プンゴル(Treelodge@Punggol)という団地があります。HDB初の環境に優しい団地のデモプロジェクトです。
ツリーロッジ@プンゴルの住棟は16階建てで、712戸からなる団地。竣工は2010年12月。シンガポールで初めてグリーン・マーク・プラチナ賞(Green Mark Platinum Award)を受賞しています*1)。
ツリーロッジ@プンゴルは、MRTのプンゴル(Punggol)駅の北東、LRTのダマイ(Damai)駅の北西に位置。いずれの駅からも徒歩でアクセスすることが可能です。
住棟間の空間「エコ・デッキ」(Eco-Deck)にはツリーロッジ@プンゴルで採用されている環境への取り組みが展示されています。展示をみると、次のように多くが採用されていることがわかります*2)。
- 最適化されたメンテナンスのソリューション:住棟へのセルフクレンジング塗料の塗装により、塗装の寿命を延ばし、メンテナンスを削減することで節約を図る。住棟は主に白色で塗られており、室内に入る熱を減らす。
- リサイクル
:全ての住棟に集中型のリサイクル可能なゴミ・シュート(Centralised Recyclable Refuce Chute)が導入。各階にリサイクル・ポイントがあるため、リサイクル品を出すのが容易である。- 資源効率
:建設、遊具、フィットネス・ステーションの素材としてリサイクル素材を利用。資源の無駄を省くため、プレキャスト技術が採用。性能と施工速度の工場が証明されており、品質の向上、無駄の削減が実現される。- 節水
:Integrated WC Pedestal(統合されたトイレの台座)の設置により、手洗い水を水洗トイレにリサイクルすることが可能になる。二重のフラッシュシステムにより水量の選択が可能になる。全ての水道設備はPUBのWatter Efficient Labeling Scheme(WELS)で「非常に良い」と認定されており、水の使用量を削減する。- 節水のソリューション
:Rainwater Harvesting Systemは、共用エリアの洗浄のために、重力を用いて雨水を収集、貯蔵、分配する。- 省エネのソリューション
:共用エリアの照明には太陽光発電で発電した電気を用いている。共用の廊下や駐車場には、エネルギー効率の高い照明、オンデマンドの照明のためのモーションセンサーの、エネルギー効率の高い機器を利用している。- 環境に優しい通勤(Green Commute)
:MRTのプンゴル(Punggol)駅、LRTのダマイ(Damai)駅のすぐ近くに立地している。カー・シェアリングの導入を計画している。サイクリングを促進するために、多数の駐輪場をもうけている。電気自転車のシェアリングも導入を計画している。- スカイライズ・グリーン(Skyrise Greenery)
:緑のバルコニー、プランター・ボックスは、自身の植物を育てるための追加のスペースになる。- 改良された緑
:天井からの熱伝導を防ぐために、屋上緑化(HDB PEG – Prefabricated Extensive Green Trays)をしている。壁面の垂直の緑(Vertical Green)は周囲の温度を下げ、入る熱を減らすと共に、住民が緑を体験する機会を生み出す。1階の中庭は周囲の温度を下げると共に、エレベーターの隣にあるため住民はリゾート感を抱くことができる。- コミュニティ・ガーデン
:ガーデニングを通してつながりを育むようにデザインされている。コミュニティ・ガーデンの一画にはコンポスト容器があり、有機性廃棄物を肥料に変える。- グリーン・スペース
:木材の格子からなり、緑のある通りは住民が集まる場所になる。住戸から見えるため、通りは安全な場所である。周囲にある650mの長さの道は、ランニングのための場所になる。道沿いの緑はランニング、散歩中の日陰を作り出す。- エコ・デザイン
:エコ・デッキは駐車場の屋根になると同時に、交流のための車の通らないスペースになるという2つの役割がある。1階の駐車場は、地区(街区)全体に広がっており、住棟間のスペースにより多くの緑を確保することを可能にする。これはエレベーターの近くで降車できるようにしている。- パッシブデザインのストラテジー
:建物の方向はコンピューターによる風の流れのシミュレーション結果に基づいて決められている。エコ・デッキは風の流れを促進し、より涼しい屋外環境を実現する。自然光と自然換気を最大化するために、各住戸は北東の卓越風に向けられており、エアコンの利用を減らす。
ツリーロッジ@プンゴルは細長い敷地の両側に住棟が配置。その間にあるのが「エコ・デッキ」。住棟の足元、及び、「エコ・デッキ」の下は駐車場とされています。この配置により、団地内では歩行者の動線と車の動線の分離(歩車分離)が実現されており、人は車と出会うことなく移動できるように配慮されてます。
「エコ・デッキ」を通る通路の周りにはコミュニティ・ガーデン、遊び場、フィットネス・ステーションなどがもうけられています。上で紹介した通り、設置されている遊具、健康器具にはリサイクル素材が利用されています。「エコ・デッキ」の一画には、屋根のあるプラザがもうけられています。
住棟の周囲にはランニング、散歩のための遊歩道。緑化されており、緑の中の遊歩道となっています。
注
- 1)Wikipedia「Treelodge@Punggol」のページより。
- 2)エコ・デッキの展示パネルより。