『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

アメリカの食料品店における新型コロナウイルス感染症への対応事例

世界各国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が拡大しており、現時点では収束の見通しは立っていません。感染予防のための方法に正解はないかもしれませんが、対応事例についての情報を共有することは何らかの参考になるかもしれないと思い、アメリカで行われている対応事例をご紹介することを考えました。

食料品などを買ったり、身体を動かして心身の健康を保ったりするためにパブリックな場所との関わりなしに日々の暮らしを送ることができないため、ここではパブリックな場所として、スーパーマーケットなどの食料品店における対応事例を紹介します(公園での対応事例はこちらをご覧ください)。

※ここで紹介するのはアメリカ東海岸のメリーランド州で見かけた事例であり、アメリカ中で同じ対応がなされているかどうかはわかりません。また、今後の状況に応じて対応が変わっていく可能性もあります。

新型コロナウイルス感染症への対応事例

2020年3月23日、メリーランド州では「基幹的でないビジネス」(Non-Essential Businesses)の閉鎖措置が発表されていますが、食料品店は「基幹的なビジネス」(Essential Businesses)とされているため、今でも運営が継続されています。

食料品店では、新型コロナウイルス感染症の広がりを防止するためにどのような対応がされているのか。いくつかの食料品店で実際に見かけた方法を整理すると次のようになります。それぞれの食料品店では、これらの方法を組み合わせた対応がなされています(以下は実際に見かけた方法であるため、この他の対応もなされていると思われます)。

  • 開店前の時間(30分〜1時間ほど)を高齢者や基礎疾患を持つ人のための専用の時間とする。セーフ・アワーズ(Safe Hours)、シニア・アワーズ(Senior Hours)などと呼ばれる。
  • 店内が人混みになるのを避けるため入場制限する。
  • 入口に、可能な限り2人以下で買物することを呼びかける掲示をする。
  • 入口にマスク着用を呼びかける掲示をする(マスク着用が義務化されてから)。
  • 表で入店を待つ人は、6フィート(約1.8メートル)の間隔を空けて並ぶ
  • 表で入店を待つ人が立つ位置を示すため、床に6フィート(約1.8メートル)間隔でマーキングする。
  • 店内の買物客同士が近づかないよう、床に6フィート(約1.8メートル)間隔でマーキングする。
  • レジの店員と買物客の間に飛沫防止のアクリル板を設置する。
  • レジ待ちの買物客同士が近づかないよう、レジ前の床に6フィート(約1.8メートル)間隔でマーキングする。
  • レジで店員が精算している間、買物客はレジの前に行かず手前で待つ。
  • 買物カゴ、ショッピングカートを消毒液で拭く。
  • セルフレジの画面、クレジットカードの暗証番号を入力するテンキーなど買い物客が触る部分を消毒液で拭く。
  • 客が持参する買物袋の利用を停止し、紙袋を無料で提供する。
  • 商品を持参した買物袋に入れる場合は、出口の外で入れる。
  • 店内に手拭き用の消毒液を設置する。
  • オンラインで注文した商品を店舗でピックアップすることを勧める。

具体例

Hマート・ウィートン店(H Mart Wheaton)

■8時〜8時半は60歳以上の高齢者だけが入店できることを案内する掲示

■レジに設置された「Sneeze Guard」(*Sneezeは「くしゃみ」の意味)と書かれた飛沫防止のアクリル板。アクリル板には、前後の買物客と6フィートの距離をとることが書かれている

■レジ待ちの人が立つ位置を示す赤いマーキング

■マスク着用を呼びかける入口の掲示

ターゲット・ロックヴィル店(Target Rockville)

■レジ待ちの人が立つ位置を示す赤いマーキング

ジャイアント・フード(Giant Food, 13781 Connecticut Avenue)

■6時〜7時は高齢者と免疫システムが低下した人だけが入店できることを案内する掲示

■オンラインで注文した商品を店舗でピックアップすることを勧める掲示

■レジ待ちの人が立つ位置を示す赤いマーキング

モンゴメリー郡リキュール&ワイン(Montgomery County Liquor & Wine)

■店内の買物客同士が近づかないための6フィート(約1.8メートル)間隔のマーキング。進行方向も示せれている

トレーダー・ジョーズ・ロックヴィル店(Trader Joe’s Rockville)

■入店制限のため表で6フィート(約1.8メートル)間隔の間隔を開けて並ぶ買い物客。掲示には買物客が持参する買物袋の利用を停止することが記載

お客様へ
現在の環境を考慮し、全ての再利用可能なバッグの利用を一時的に停止しています。
購入された商品は、無料で提供する紙袋に入れてお渡しします。


日本の食料品店では入店を待つ人、レジを待つ人の長蛇の列ができている店舗もあるようです。これに比べると、アメリカの食料品店ではソーシャル・ディスタンシングを含め、感染防止の徹底がなされていることがお分かりいただけると思います。

(更新:2020年6月17日)